運命の三女神①
クロエは剣先を俺の胸を刺すように向けた。そして吹き出すようにまたくすくすと笑う。
「タケゾーさん、あなたは本当に不思議な方ですね……その魂は本当に……へぴいっ!!」
クロエの話し声が唐突に頓狂な悲鳴に変わる、その瞬間動かなかった身体が動くようになった。
クロエの頭には槍のように柄の長い棒斧の刃先が乗っていた。刃が頭に刺さらぬよう横倒しにはされているが……これで叩かれたのだろうか……?
クロエは剣を放り投げ頭を抱えてうずくまる。
「やめないかスクルディア……こんな品のない方法で死せる戦士を集めたりするんじゃない」
そう言ったのはクロエの頭を殴った棒斧の持ち主である。
クロエの仲間だろうか、同じような鎧と兜を纏っている。よくよく見ればクロエの後ろにはさらにもう一人が立っている。
クロエがよろよろと頭を押さえながら立ち上がる。そして二人の姿を認めると喚き散らすように叫んだ。
「ちょっと! 姉様達! いきなり後ろからそんなもので頭を叩くなんて、人間でしたら大怪我ですのよ!」
クロエに凄まれてもさして気にする風でも無く答える。
「お前は少々じゃ死にはせんだろう」
そう言われてクロエはますます激昂した。
「舌でも噛んだらどうしますのっ!」
「そりゃあ……プッ、ぎゃはははははははははははは……そりゃあ、痛いだろうなあ、ぎゃははははは」
まるでクロエを子供扱いで爆笑を始めてしまう。
「なあ? 姉さん聞いたか? 舌を噛むとか? ぎゃはははははは」
姉さんと言われたもう一人も思わず吹き出してしまう。
「……プッ……ククッ……止めないか、お前もスクルディアをからかうんじゃない、クククッ……プッ」
クロエは顔を真っ赤にして睨んでいる。こんな顔もするやつだったのだな。
姉さんと呼ばれた女は何とか笑いを飲み込むと俺の前に立った。
「すまないな……タケゾーさん。妹が失礼をした」
俺は事態が飲み込めず、見知らぬ人外の女に謝罪をされても呆気に取られるばかりだ。だがそんな俺に構わず姉さんと呼ばれた女は謝罪を続ける。
「……それからそちらの連れの方……魔法使いのようだが…………ん?」
姉さんと呼ばれた女はロッタを見て首を傾げる。顎に手を当てて何かを考え込んでいるようだ。
「失礼……もしや貴女は大魔法使いローテアウゼン殿か?」
ロッタと俺は顔を見合わせる。
「いかにも……儂はローテアウゼンじゃが……?」




