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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第五章 黒い森のクロエ
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クロエ、降り立つ①

 エレンスージは復活すると空を仰ぐような仕草を見せる。


 そのまま空を見上げ続け、ぽつりと呟いた。


「僕のビアンカ・フォルゴーレが死にました。きっと僕も死ぬのでしょう……」


 エレンスージはそう言うと俯いてから俺たちのほうを見た。



 エレンスージはロッタが卵を持っていることに気付いた。


 その卵を見ると悲鳴を上げて蜷局(とぐろ)を巻いた。そして蜷局を解くと慌てて逃げるように橋を渡っていった。


「僕は……まだ死にたくはありません。ビアンカ・フォルゴーレのいない世界はとても寂しいですが」


 そう言うと顎で背中をこすり、自らの鱗を剥ぎ落とした。落ちた鱗は次々に白い兵士へと姿を変えていく。


 胸当てに腰だれ、白い兵士達は軽装の戦士の姿だった。多くは剣を帯びているが何人かはその手に槍を、石弩を持つものもいる。


 白い兵士達は橋の上にぞろぞろとやってくる。その数は二十か三十か……タケゾウ達の接近を拒むように立ちはだかった。


 俺は振り返りロッタに左手を差し出した。


「その卵を奴にぶつければいいのだな?」


 俺がそう言うとロッタは抱えた卵をじっと見た。そして俺の目を見つめてこう言った。


「否……それは儂がやらねばならん」


「……そうか、分かった。ではロッタを奴の前まで連れていかねばならんな」


 俺は白い兵士達の待つ橋を見た。その奥には怯えるように竦んでいるエレンスージが見える。


 抜刀して切っ先をエレンスージへと向け俺は叫ぶ。


「行くぞ蛇神! 邪魔立てするなら推し通る!」


 俺は振り返りロッタを見る。ロッタは卵を握りしめ胸に抱いている。紅い瞳が不安気に俺を見つめていた。


「大丈夫だ、俺の後ろを着いて来るがいい、必ずやつの元まで連れていく」


 ロッタは頷いた。


「……では、推して参る」

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