エレンスージ討伐作戦⑦
ロッタは魔法使いビアンカに狙いを定めるが矢を射るのはためらった。
ロッタは考えた、魔法使いビアンカは知恵比べをしましょうと言った。すでに何度か欺瞞の獲物が現われている。このまま魔法使いビアンカを射貫いてもよいのだろうか。
「あら? なにを迷っているのですか……?」
魔法使いビアンカは笑みを浮かべてロッタに問いかけた。
ロッタは黙ったまま魔法使いビアンカの胸に狙いを定めていた。
なかなか矢を射らないロッタに痺れをきらしたか魔法使いビアンカは腕を広げて見せる。
「小細工なんてありませんわ……正真正銘、私が最後の獲物です。さあ私を射るのです」
ロッタは意を決し番えた矢を放つ。
ロッタ渾身の力で引ききった弓から放たれた矢は真っ直ぐに魔法使いビアンカの胸を目掛けて飛んでいく。
次の瞬間けたたましい炸裂音と閃光が奔り矢は弾き飛ばされてしまう。
「私には飛び道具は効かないのよ、ローテアウゼンさん」
ロッタはその理由に心当たりがある。自動で行使される防御魔法、親鶏の温もりだ。
常時消費されていく魔力を補える者だけが行使できる強力な防御魔法。
ロッタは続けて矢を射る。しかし悉く弾かれてしまう。
「ここからが知恵比べですよ……ローテアウゼンさん」
ロッタは考える……魔法を使って倒すことも出来ないわけではない。ただ、この魔法使いビアンカは強力な魔法使いであることが伺える。そのビアンカを一撃で倒せるほどの魔法は何度も行使出来るほどの魔力は今の自分には無い。
やるなら絶好の好機に狙い澄ました一撃を見舞うしかない。
しかし対峙したこの状態からでは裏をかくこともままならず欺瞞を仕掛けることも難しい。
「残念ですね……あと一撃放てば貴女の勝ち……あの子を屠ることも可能だというのに貴女には決め手がない……そういうことなのですね」
図星をつかれたロッタは思わず唇を噛み締める。
魔法を放つか放つまいかロッタは迷い続ける。その時ロッタの背後から声が聞こえた。
「なんだこりゃ、中は随分と広いのだな……」
タケゾウの声だった、聞き間違えたりはしない。たしかにタケゾウの声だ。
矢を番えたままのロッタは振り返ってタケゾウの姿を確認したかった。しかし対峙した相手から目を離すことは出来ずにいた。
次の瞬間、涼やかな風が吹くとタケゾウはロッタの前に姿を現わした。
「無事か……?」
タケゾウは抜刀して振り返りロッタを見た。




