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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第五章 黒い森のクロエ
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エレンスージ討伐作戦⑤

 魔法使いビアンカはロッタの手首と足首にある腕輪、足輪に気付いて興味深そうに眺めている。


「……その腕輪……以前(まえ)はしていなかったような……?」


 ロッタは何も答えず次の矢を用意して大きく深呼吸をした。


 魔法使いビアンカは何かを察したように微笑んだ。


「貴女ほどの魔法使いが魔力封印の輪を課すだなんて……余程のことがあったのね。それでいてこんなに永い間生き続けているだなんて、何かやることがあるのかしら……? うふふ……あるのでしょうね、そうでなければこんなことはしない……」


 ロッタは早く次を出せと無言のまま目で訴える。


「それにしても貴女……熊を魔法も使わないで、その弓と矢で倒してしまうだなんて……魔法を使わない理由は何かしら……? 使えない……というわけでもないのよね……?」


 ロッタはやはり無言のまま、矢を弓に(つが)えた。


 魔法使いビアンカは目を閉じて(かぶり)を振った。


「分かりました、詮索は止めましょう。……では、次にいきますよ」


 部屋が白い(もや)に覆われ、次の瞬間あたりには広い野原が広がった。部屋の中からは出ていないはずだが幻術か……あるいは結界の一種なのか……判断のつかないロッタは警戒を強める。


「大きく……大きく育ったエレンスージのもとに、ある日三人の賢者が訪ねてきました」


 ロッタの前にローブを肩にかけ、ローブの頭巾を目深に被った賢者が現われた。三人とも同じ格好をしていて口許だけが見えている。


「賢者たちは言いました……エレンスージよ、何故家畜を襲う、何故山の魔物を食ってはくれないのか? 魔物を食ってくれるのならば礼をしよう」


 ロッタは先頭の賢者の心臓を狙った。


「エレンスージは答えました。魔物を襲うと僕は負けてしまうかもしれない」


「賢者達は言いました……お前の力ならば大丈夫、どんな魔物であろうとその毒牙に敵うものは無くその口に飲み込めぬものは無い」


「エレンスージは……笑いました。そして言いました……それならお前達を飲み込むことも出来そうだ」


 ロッタの前にいた賢者はひるがえり背中を向けて駆けだした。ロッタはすぐさま矢を射る、矢は心臓を貫き一人目の賢者は倒れた。続けて二人目、三人目もロッタは心臓を射貫き倒した。


「エレンスージは言いました……人間は、なんと美味しいのだろう」


 魔法使いビアンカは目を細めてロッタを見つめる。


「こうしてエレンスージは人間の味を知ってしまったのです……」

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