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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第五章 黒い森のクロエ
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エレンスージ討伐作戦③

 朝陽が半分ほど昇った、エレンスージはまだ現われない。


 祭壇ではルイーザが(うずくま)り、必死に何かに祈っている。


 俺は身体を整え、鞘に添えた手の親指を鍔にのせた。


「ロッタよ、俺はどう戦えばいい?」


 横にいたロッタは祭壇を見据えたまま答える。


「儂はあの奥にある部屋に行く、やつに気取られぬようにな」


「そこにやつを殺す秘訣があるのか」


 ロッタは頷いた。


 なるほど……つまりやつが現われたら俺に釘付けにしておかねばならんということか。


「で……やつはどこから現われる?」


「おそらく……奥の部屋じゃろうな」


「心得た、ならばロッタは少し退がり隠れててくれ」


 ロッタは俺を見て頷くとブルナークのさらに後ろ、騎士たちの控えるところまで退がった。


 陽は昇り、鋭い朝陽があたりを照らし始めた。


 祭壇の紅玉石の輝きが増し、脈動する光は連続した光へと変わりやがて消えた。紅玉石はただの赤黒い石になってしまった。


 辺りは静まり返り風にそよぐ枝葉の音だけがはっきりと聞こえるのみだ。


 祭壇の奥、石橋の向こうからただ事では無い気配の近付いてくるのを感じる。


 ひたひたと裸足の人が歩くような音が聞こえてくると石橋の上に人影が現われた。


 それは白く薄い衣を纏った男の姿であったが黄色く輝く冷たい瞳が人外のものであることをはっきりと物語った。


「うん、今回の生贄も美しい女性ですね。気に入りましたよ」


 そう言いながら男は手を叩いた。


 やつはゆっくりと橋を渡って祭壇へと近付いてくる。


 俺は鞘に手を添えたまま祭壇へと向かいロレンゾに叫んだ。


「ロレンゾ! 急げ!」


 ロレンゾはルイーザを祭壇から下ろしこちらへと駆けだした。


「おや……? その女性は僕のものではないのですか?」


 やつは怪訝な表情を浮かべながら祭壇の側で立ち止まった。そして俺やブルナーク、騎士団の様子を眺めると溜息を吐いて見せる。


「やれやれ……随分と()()されているようですねえ」


「お前がエレンスージか」


 俺が問うと奴はまた溜息を吐いた。


「……ええ、僕はエレンスージですが、逆に聞きますが僕以外がここに現われるとでも?」


「確認しただけだ」


 奴は目を閉じて頭を振った。


「言っておきますけど僕は強いですよ? それに不死身なんです」


「それは知っているが……本当にそうか確かめさせて貰おうと思ってな」


「……本気ですか?」


「本気だ」


「では皆さんを皆殺しにしなくてはなりませんね……本意ではありませんが」


 やつの周囲に白い渦が発生する。


 俺はその機を狙って電光石火の一閃、エレンスージの頭、鼻から上を横一文字に斬った。


 エレンスージは一瞬の後に自分が斬られたことに気付く。


「驚きましたね……なんという疾さですか、不死身とはいっても斬られると痛いんですよ」


 白い渦に身体が包まれると人の姿から大蛇へと形を変えた。


 蜷局(とぐろ)を巻いて鎌首をもたげるとタケゾウへと襲いかかる。


 タケゾウはエレンスージの牙をかわし、振り上げた刃がエレンスージの顎を引き裂く。


 エレンスージは怯み、その痛みでのたうち回る。


 背後でその戦いを見ていたブルナークはタケゾウの動きに驚愕した。


「冗談だろ、あの時は本気じゃなかったってのかよ……」


 ブルナークの見るタケゾウの背中はとてつもなく大きく見えていた。

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