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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第二章 漆黒の姉妹(レイヴェンシュワルツシュバイセン)
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漆黒の姉妹④

 そういえばロッタはこいつらを知っているようだったな。

「ロッタよ、あいつらはなんだ?」

「魔獣じゃ」

「人間の姿をしているが?」

「見たであろう、あのデカいカラスが本当の姿じゃ。妹のほうが名をラーク、姉のほうがクラヴィアという」

「するとあれか? こいつらも人を……」

「ああそうじゃ、それも何人も……たくさん食っておる」

 詳しい理屈は分からんが大体察しがつく。たくさん食ってればそれだけ大量の魔力を吸収してやばいヤツになってるってことだ。


「おい! お前ら痴話喧嘩もいいが何か用か?」

 二人は言い合いを止めてタケゾウを睨んだ。

「あなたこそ何? 今大事な話なんですのよ」

「そうよあなた、わたしが空腹のままでも構わないと言うの? いっそあなたを食ってやろうかしら」

「……ほう? じゃあやっぱり俺たちに用があるってことだな?」

「なにを言っているのかしら、あなた。人間になんて興味が無いのよ」

「そうですわ、わたし達が用があるのはローテアウゼンだけよ、魔法使いは……美味しいからね」

「そうかよ、そりゃあ聞き捨てならねえ…………なっ!」

 俺は正面にいる妹ラークのほうを目掛け一気に間合いを詰める。抜刀し、その首を狙って切っ先で薙ぎ払う。

「……!」

 切っ先はたしかに首をとらえたというのに手応えがない。

 見れば地面に転がっているはずの首は確かに肩の上に乗っかったままでこちらを睨んでいる。その体は解けるように黒い羽毛へと変わり渦を巻いた。そして少し離れた場所で再び巨大なカラスの姿へと変わった。

「あなた、妹を、よくも妹を躊躇もなく斬ろうとしたわね? わたし、もうあなたを許さないわ。あなたたち二人とも、絶対にわたしが食ってやるわ」

 姉のクラヴィアも巨大なカラスに姿を変え、二羽のカラスは会話を交わすように何度か鳴くと同時に飛び立った。

 タケゾウとロッタの上空を旋回しながら何度か鳴くと飛び去っていった。

「……行ったか」

 俺は剣を収めた。

 見るとロッタは少し嬉しそうな顔をして俺を見ている。何故かは分からんがそれはとりあえず置いておいてロッタには今言っておかないといけないことがある。

「ロッタよ」

「お? なんじゃ?」

「ロッタには謝らねばいかん、俺はロッタの護衛を舐めていた」

 ロッタは首を傾げた。

「そうか? よくやってくれていると思うたが……」

「否、野盗や魔獣も小物ならば楽勝だと高をくくっていた。すまぬ……まさかあのような知性まで持つような大物の魔獣がロッタの命を狙ってこようとは夢にも思わんかった」

 ロッタは少し考えてから答える。

「……そうじゃな、儂も少し驚いておるのじゃ。あやつらはどうも儂が街から出るのを見張っておったような気がするのじゃ、とするとあやつらがたまたま見つけた魔法使いを取って食おうというのではなくその後ろに何かが居るような……」

「心当たりはあるのか?」

 ロッタは黙っているが何かを呟くように口を動かして記憶をたどっているようだった。

「はっきりとは言えぬ……しかしあるといえばあるし無いといえば無い」

「……そうか」

 街でのロッタは、少なくとも俺の目からは皆から好意的に見られているようだった。それは街のために色々と骨を折ってきたのだろうことが分かる。であるならば、あるいは他の街の民から見るとどうだろうか?

 あの魔法使いさえいなければ、あの魔法使いのせいで……などと思う奴がいてもおかしくはないだろう。

 いずれにせよあの二匹の巨大カラスを使って、ロッタの命を狙う奴がいるかもしれないということだ。

「まあ、あのカラスとはどこかで戦うことになるだろう。いろいろと対策を考えんといかんな」

「うむ、じゃがひとまずはここを移動したほうが良かろう。あのオオカミどもが戻ってこんとも限らんからな」

「……賛成だ」

 俺達は馬車の支度をして早々に移動を始めた。

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