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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第四章 決戦! スツーカ砦
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ケルナ最期の戦い①

 救護所には木人形を排除するために戦う中で剣や槍によって受傷した自警団の兵たちが運び込まれていた。

 中でも重傷の者はスケベによる傷を塞ぐなどの治癒魔法による治療が行われていた。傷を塞ぐことで大量の出血をひとまずは止めることが出来るため最悪の事態は多くの場合防ぐことが出来た。

 救護所では重傷者の応急処置の順番付けやそして致命傷を負った者の受け入れの確保のために伝令がひっきりなしに出入りを続け、戦況が伝えられていた。

 一応の魔法治療による応急処置が一段落したスケベはケルナの様子を見にきていた。

 ケルナは深く眠っていた。

 スケベはケルナの額に手を当てる。


「……ほう、すごいな。そうか……君は一刻も早くこの傷を癒やしたいのだね、ローテアウゼン様に杖を貸しているのであまり余剰はないのだが、少しだけ君に魔力を分けてあげよう」


 スケベはそっとやわらかな白い光をケルナの額へと贈る。その光はケルナの体内へと吸い込まれていく。


「スケベ様、西館も受け入れ体制が整いました」


 救護班を手伝う女性自警団の兵が伝えに来た。兵はケルナを心配そうにのぞき込む。


「ケルナさん、よく眠っていますね」


 スケベは額から手を離すと胸の毛布をかけ直して答える。


「眠っているように見えるかい? 彼女は今、必死でこの傷を癒やしているんだよ。すごいよケルナは、もしかするとこの先もの凄い魔法使いになるかもしれない」


 そこへ伝令が飛び込んできた。


「西門の攻撃激化! ユハ負傷ですが現場に留まるとのことです」


 スケベは踵を返し足早に歩き出す。


「分かった、今西館を開けた。負傷者はどんどん連れてくるといい」


 伝令は水を一杯飲み干すとまた次の現場へと走っていった。


 部屋に一人残されたケルナの周囲に微かな風が巻き起こる。その風は少しずつ強さを増してケルナにかけられた毛布を吹き飛ばした。

 ケルナは目を開いた。焦点の定まらぬまま見開かれた目で辺りを見渡すと体を起こす。


「……ユハ……さん……」


 突如激しい風が巻き起こり、その風と共にケルナは姿を消した。

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