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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第一章 城塞都市ブルーノ
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プロローグ

 父親が有名な剣士であった俺は幼いころから剣術の修行に明け暮れていた。


 修行は辛いことも多く決して楽しくはなかったが自分が強くなっていくことだけは楽しかった。


 やがて道場の大人達との仕合でも負けることはなくなり道場破りの相手も俺がすることになった。


 それでも父親にはなかなか勝てなかった。あと少し、もう一手、というところでいつも負ける。だから自分が父親よりも弱いとは思っていなかった。


 12歳になったある日、父親は俺にあることを打ち明けた。いわゆる出生の秘密というやつだ。


 俺は自分を受け入れることが出来ず、怒り、錯乱した。そしてその日、父親を半殺しにした。


 そのまま家を飛び出して剣術で食いつなぎながらヒノモトの国中を旅してまわった。そして俺はいつしか天下無双と呼ばれるようになっていた。


 天下無双、良い響きだがすでに泰平の世を迎えたヒノモトでは剣術は金にならず仕官の口もない。


 それでも俺を倒せば仕官出来ると信じた荒くれ者たちが俺の命を狙う。


 堂々と名乗りを挙げる者、徒党を組んで襲う者、毒や吹き矢で暗殺を謀る者、あらゆる手段で俺は命を狙われるようになった。


 殺し合いの毎日にうんざりした俺は天下無双とよばれる強さを手に入れた二刀流を封じ、改めて剣術を磨くことを志し、ヒノモトを出て西へ向かうことにした。


 父親を半殺しにした頃から俺はある夢を見るようになった。


 その夢では俺はどこか分からない場所で横になって夜空を見上げている。体に感覚は無く動くことは出来ない。


 空にはいくつもの星が流れているが美しいとか綺麗とか形容できるような光景ではなく、この世の終わりを告げているような光景だった。


 ふと横を見れば少女が立っている。金色の髪、白い肌は薄く光を帯びている。顔ははっきりとは見えないが泣いているのだろうか、激しい風が髪と、纏った洋物の黒いローブをたなびかせている。


 少女は振り向くと何かを訴えるように話しかけてくるが、その声は風にかき消され聞こえない。


 そして少女は俺にすがりつき、何かを必死に叫んでいる。


 何度も繰り返し見る夢だがこの声を聞くことは出来ず、ここで夢は終わる。


 どうしてこの夢を繰り返し見るのか、まったくもって見当も付かないが少女のまとった黒いローブは遙か西の国々で魔法遣いの装束としてよく着られていることが分かった。


 ヒノモトにも黒いローブをまとった西の魔法遣いが訪れていたという記録が残っている。


 そこで俺は西の国を目指すことにした。海を渡り大陸に上陸してからは行商人たちの用心棒をしながら西を目指す。


 強盗や魔物に狙われる商人たちを守りながらの道中は楽しかった。


 誰かを守るために剣術を使う、これこそが自分の目指した剣術なのだと喜びを噛み締める毎日だった。


 そんな旅の日々が続いていたある日、あの魔法遣いに出会った。

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