隊長…振り返る
私は魔獣部隊隊長、魔獣師のデービスである。
魔獣を愛しうん十年、魔獣部隊の命を受けうん十年、隊長の命を受けようと真摯に職務と向き合い勤しんでいると自負している。
自分で言うのも何だが真面目さだけが取り柄みたいなこの私がシリウスと出会った事で
なんかもう色々……大変
シリウスとの出会いは魔の森だった
その頃、世話していた鹿属の幼獣リリスが病を患い、私は魔の森の大樹の葉を求め魔の森を一人進んでいた。
大樹は魔の森の中心に有り、極めて純粋で濃い魔素を宿している木である
そして、魔素濃い大樹は魔獣の薬になる
魔の森のなかあの植物等は他の場所と比べられない程に多く魔素を宿しており、ここに上位魔獣の宝庫と言われる由縁だ
魔素の多い植物を食べて育った草食の魔獣達が強力なの草食の魔獣になり、それを獲物にしている肉食の魔獣がという具合だろう
中心へと進む程に魔素は濃くなり、比例して魔獣は草食、肉食共に脅威レベルが上がる
中心などトップクラスの人間以外、魔獣の餌
自分に中心部に行ける程実力が無いのも分かっているが、リリスの出産は難産でその際、母親が天に召されてしまった。
母親が召されてしまったのは自分の魔獣師としての実力不足他ならない
リリスの病は本来、母親から母乳と一緒に魔力と免疫を貰う事で防げる病だった。
母親を助けられていたら、母親から大事な免疫をもらい苦しい思いをさせずに済んだのだ
隠蔽魔術駆使し、姿を隠して進む。
この深さ魔獣には私では到底かなわない。
中心部に近付き魔素が濃くなり私レベルの魔力だと魔素酔いが激しく吐気も酷く頭が朦朧とする
意識を一瞬でも手離せば隠蔽魔法が解除されてしまう。そうなれば私はあっという間に魔獣の餌だろう
余りの吐き気に膝をつく意識が飛びそうだ
ガサガサガサ……
茂みから物音がして視線を上げるとそこには大きな白狼と目が合った
背筋に寒いものを感じる
(見つかった……)
自分より上位の魔術レベルを有するモノに隠蔽魔術は効きにくい
終わった……そう思った……すると
『おっさん、どうしたい?』
緊張感の無い声が聞こえてきた
(白狼が喋った……いや……白狼は喋らない……幻聴か……)
朦朧する意識の中で
『頼む、白狼……俺の育ててる幼獣が病気なんだ……大樹の葉が必要なんだ……食わないでくれ……』
『幼獣か、それは大変だ!! 待ってろ!!』
ザザッ
魔獣の走り去る音を聞き、限界が来た私は意識を手離した
ピシッピシッ……
顔にもふもふした何かが顔に当たり目が覚めたら
(モフモフの尻尾?)
『おっさん……目が覚めたか?』
声の方に目をやるとそこには……
金髪青眼の天使の様な少年が白狼を背もたれにして座っていた
『天使様……』私は思わずそう呟いていた
けれど、その呟きに
『おっさん……天使って頭大丈夫か?』
と天使な容姿に似つかわ無い言葉が返って来た。そして、少年は
『ほれコレ!! 大樹の葉!! 幼獣が病気なんだろう!! 送ってやるから行こうぜ!! 乗れよ!!』
呆けている私に大樹の葉を投げ渡すと、白狼に跨り私に乗るように急かす
(イヤイヤイヤ……乗れよって白狼ですよね……上位魔獣も上位魔獣の超希少種の白狼ですよね……白狼を従獣してるって)
『貴方……何者ですか……』混乱の中で絞り出した私の質問に対して
『う? 俺はシリウス……コイツはルゥ』と自己紹介された
(自己紹介…間違って無いが……そう言う意味じゃ…… )
『おい!! おっさん!! 早くしろ幼獣が待ってんだろ!!』
色々、聞きたい事はあるがリリスが心配な私は疑問を棚上げして急かされるまま白狼の背に乗った
王城に着くと心配して門前で待っていた当時の隊長に、これまで経緯話し隊長権限で入城許可を取りシリウスと共にリリスの所に向かう。
私は王城に帰る道中、シリウスにリリスの所へ一緒に来てくれる様に頼んだ
するとシリウスは『当然、幼獣に会いに行く』と一つ返事で了承してくれたのだ
リリスの元に駆け付けると他の隊員達が生命維持の為に回復魔術をかけていた
『おい!! おっさん!! 俺に幼獣を見させろ!!』
そう言うとシリウスがリリスに向かって走り出した
『おい!! お前達退け!!』
先程迄の、飄々とした雰囲気が一変させたシリウスに驚きはしたが
『彼の言う通りに!!』
私は周りの隊員に声を掛ける
隊員達は困惑の声をあげつつ私の支持に従ってくれた
『ルゥ!! 結界』
何やらルゥに指示を出したシリウス、するとリリス、シリウス、ルゥが結界に包まれた
シリウスがリリスに手をかざすと強い光包まれた
『『『光の最上位回復魔術だと』』』
様子を伺っていた私達は声を揃えて驚いた
光の属性の魔術はかなり適正に左右される為、光の上位魔術を扱える者が少ない
それをシリウスは、平然と使って見せた
光が収まりリリスを見るとそこには正気の戻り安らかに眠る姿があった
それからもうワチャワチャだった
私がお礼を申し出るとシリウスは魔獣達に会いたがり、片っ端からたらし込み
魔獣部隊、総出であの手この手で勧誘しシリウスの魔獣部隊入りを成功させた