魔獣師…事情を聞く
マリア、ラミーの食事を終えて再びクラウス、ルゥ、ラミーが庭でワチャワチャと戯れ始めた頃
バッタン!!
勢い良く庭に通じる扉が開く
『シリウス!! お主二日連続で人を拾ったそうじゃなぁ!!』
愉快と言った表情のファビウスが国王の秘書官であるアランを連れてやってきた
『何で……親父まで……』
ファビウスの登場で途端に面倒臭いっと言った顔をするシリウス
(・・・・・・)
新しい人物の豪快な登場に固まるマリア
ラミー達は遊びに夢中で気付かない(ルゥは気付いているが気にしてない)
『お前が、こんな報告を寄越すからじゃろ!』
ファビウスが一枚の紙を広げ差し出す。そこには
[国境付近で暴れている竜についての報告]と題名が書かれている紙
・問題は無事解決する
・竜と竜の母親の人間の女を保護する
・腹が空いてる様なので屋敷に連れ帰る
『陛下に詳しく聞いて来いと言われての〜』
ドヤ顔で紙を指で挟みピラピラと揺らしながら答えるファビウス
『陛下が聞いて来いとおしゃったのは私にです。
ファビウス殿は無理矢理、付いて来られたのでしょ……。』
面白がって付いて来たファビウスをジト目で見るアラン……
正直、グレイ家成分を薄める為、ファビウスは城に置いて来たかった
メイド達によりいつの間にか用意されたマリアの正面の席に腰掛けるアラン
『では、お嬢さん……
お話を伺いたいのですが、どうせこの家の人達だ……
名前を名乗る位で碌に状況説明もしていないでしょう…
私の方から簡単にご説明しますね……』
口調、声色こそ柔らかいがアランからこの家の人たちとは違う何かを感じ、身体が強張るのを感じるマリア
『まず、私はスルジア王国、国王秘書官のアランと申します』
『は……は……い……』
アランの身分を聞き更に緊張を深めるマリア
『こちらのシリウス殿はこう見えて、国王軍魔獣部隊副隊長であり国内一の魔獣師なので今回、国境警備部隊の報告で幼い竜が暴れてるとの報告受け、陛下の命であなた方の所に向ったのですが……
ちなみに……あちらで戯れてるお方はファビウス・グレイ侯爵、シリウス殿のお父上であり国王の相談役で、この家はグレイ家の本邸になります』
何の為に付いて来たのか、話しに参加しないでラミー達の戯れ合いに加わっているファビウス
(……ぁぁ)
自分が世話になってる家が自分ですら知ってる様な家である事に驚愕するマリア
どうして良いは分からず兎に角ピシッと姿勢を正す
『あぁ!! こちらのご家族でしたら畏まる必要無いですよ……侯爵家ではありますが……魔獣バ……
魔獣師としての気質が強い方々なので……
前置きが長くなりましたが……あなた方は何故、あの様な場所であの様事になっていたのですか?』
アランの言葉に、何やら空気になって書類を読んでいたシリウスも顔を上げる
マリアは覚悟を決めた様に話し始める
『私はマリアと申します。コーリアス共和国で騎獣部隊のドラゴンライダーの訓練生でした。
ラミーは子供の頃に森で遊んでいた時、恐らく密猟者が落としたと思われる卵を偶然拾い、私が羽化させました……なのでラミーは私の事を母だと思っています。
子供の私は卵を拾った時、竜の卵と知らなくて……羽化して初めて竜の卵だと知り、慌てて国に報告しました。
報告した時にはラミーは既に私を母だと認識しており、私もラミーに愛情を抱いていました。
けれど……私が自力で育てるには金銭的にも住居的にも難しく、国の提案も有り
ラミーと共に軍に訓練生して入隊しました……
ところが先日……本隊員になる試験を数ヶ月後に控えていたと言うのに……
総帥からラミーを軍に献上しろとの命が下り……
私は処罰されるのを覚悟で私のような下級隊員は入る事も許されない総帥のいらしゃる建物に直談判する為、侵入しました……
すると、総帥が地下に向かう所を見かけ私は他の人間に見つからない様に隠蔽魔術を展開し、総帥が一人になるのを待つ為、追いかけました
すると、総帥が地下の部屋に一人で入っていったので、私はこっそりとその部屋を覗きました……
そこで見た光景は想像を絶するものでした……
魔獣が実験台にされていたのです……
そこにはルゥと同じ白狼の魔獣も色々な器具着けられ実験体にされていました……
そして……総帥は実験をしているであろう魔術師と話し始めたんです
『やっと、例の竜が実験に耐えられる大きさに育った、あの竜が母親と慕ってる女の訓練生の命を我々が握っていると分からせれば、素直に実験台になるだろう』と、それは愉快そうに話していました。
それを聞いて私はその建物から急いで出るとラミーの元へ行き取るものも取らずに逃げ出しました
軍の無断離脱は重罪なので、見つかって攻撃も受ける事になりましたが、ラミーが頑張ってくれて……
なんとか、逃げ出せたのですが……
不眠不休、飲まず食わずで逃げていたので……あそこで、私が意識を失ってしまったんです
だから……ラミーはパニックになってしまったんだと思います……
お願いします!! 私はどんな処罰も受けます!! なので……ラミーだけでも保護して頂けませんか?
お願いします!!!!!』
事情を話したマリアは泣きながら必死にラミーの保護を懇願する
『ところで……何処にお前を処罰する要素があるんだ?』
話し聞いて、怒りを覚えるシリウス
『儂の裁量でマリア、ラミーの保護を認める』
いつの間にか話しを聞いていたファビウスがマリアの頭に優しく手を乗せマリアに優しく話しかけた
『え……』
マリアが困惑しながら頭を上げ、ファビウスを見る
『大丈夫じゃ!! 後の事は任せなさい!! 息子がどうにかするじゃろ!! 』
『俺がかよ!! するけどな!!』




