魔獣師…誘う
竜の腹の下に横たわる女性は傷だらけで生命反応も弱っていた
『まさか……お前がやったんじゃ無いよな?』
少し厳し表情で竜に尋ねるシリウス
『違うよ!! 僕じゃ無いよ!! マリアは僕のお母さんだもん!!』
竜が顔を膨らませて怒る
『悪い! 悪い! 母ちゃんを守ろうとして怒ってたのか! 偉いじゃないか! 心配するな、お前の母ちゃんはちゃんと治してやるよ!!』
『本当にー!!』
竜が嬉しそうに首と尾を振る
シリウスが女性の様子を見ながら光の回復魔術を展開する
回復魔術は強すぎると逆にダメージを与えてしまう場合がある。繊細な魔術だ
シリウスはゆっくりと丁寧に一番ダメージを受けている所から徐々に回復魔術を女性に広げる
すると、女性の傷は色みが消えた顔に血色が戻る
『マリア!! マリア!!』
竜が首を下げ女性の顔を覗き込み、必死に呼び掛ける
『ラミー……』
マリアと呼ばれる女性はゆっくりと目を開け竜の顔撫でる
『助けてくれたんだ!! おじちゃんが!!』
竜が嬉しそうにマリアに頬擦りする
『おじちゃん?』
竜の言葉に上半身を起こすと不思議そうに周りを見渡すとマリア
『お……おじちゃん……』
流石に竜におじちゃん呼ばわりされるのは初めてで何とも形容し難い微妙な表情のシリウスと目が合う
『あ……あなたが……』
おじちゃんと言うには若く美しシリウスの姿に頬を染めるマリア
『りゅーたんのあーたん、だいじょーぶぅ?』
クラウスがヒョイっと顔出す
『りゅーたん?あーたん?』
シリウスに続いて、愛らし幼子の登場に許容オーバーで頭が真っ白になるマリア
『お前はこいつの母ちゃんだろ』
シリウスが竜をトントンと叩きながら笑う
『僕はこいつって名前じゃ無いぞ!! ラミーだぞ!!』
ラミーが顔を膨らませシリウスに抗議する
『悪い、悪い。 ラミーか!! 俺はシリウスだ
で!!コイツが息子のクラウスでコッチが、相棒のルゥだ!!』
クラウスを抱き上げ、ルゥの頭に手を置いてラミーに自己紹介するシリウス
『あ……ああ、はい……。』
今まで散々、周りの人間からラミーが自分のことを母親扱いする事をアレコレ言われてきたマリアは何の疑問も突っ込みも無く受け入れているシリウス親子か心底、不思議だった
ワイワイ、キャーキャーと盛り上がる二頭と二人
その様子を見ていたマリアは何だかんだホッとした気持ちになり何だかんだ力が抜ける
『ぐーぎゅるるる〜』
『きゅ〜』
ラミーからは爆音
マリアからは控えめの腹の音が鳴る
『すげー音だな!!ラミー!!とりあえず!! 腹減ったなら!!付いて来い!!」
シリウスがラミーをバシバシと叩きながら笑う
『お肉〜?』
瞳をキラッキラッに輝かすラミー
『おう!! デッカい肉を食わせてやる!!』
『マリアー!! デッカい肉だって!!ねぇねぇ!! 行こう!!』
瞳はキラッキラッ、口からは涎、尾はブンブンのラミー
『わかったから......』
困り顔のマリアだか、初対面だが子連れで魔獣連れなシリウスになにか、悪意ある事をされるとは思えない
心身共に疲れ切っているマリアにはシリウス達が神の使いに思えた




