ゲイルの性癖
正座したゲイルをカプリコーン小隊隊長の綺羅とピスケス小隊隊長のノアが尋問する。
「ゲイルさ~ん。なぜあのタイミングで残り30秒だったのですカ?」
「……忘れてました」
クラスの女子で一番大人びているノアが、ゲイルの頬をペチペチと叩きながら綺羅に続く。
「あなたがた殿方は身一つでどこにでも行けるのでしょう。し・か・し、わたくしたち女子はいろいろ準備が必要なことお分かりでしょうか?」
「はいノア嬢。重々承知しております……」
いつも飄々としているゲイルも、高校生とは思えない妙な色気があるノアの前だけではタジタジになる。
「どうやらお仕置きが必要のようですね。綺羅」
「ガッテン、ノアお姉様」
綺羅がゲイルの体をくすぐりまわる。
だが、先程まで豊かだったゲイルの表情は無の境地になった。
「分かってないな綺羅よ。俺はロリっ子のお前のくすぐりより、ノア嬢の罵りのほうがこうふ……反省するのだ」
「ロリっ子言うなぁ!」
ふっと鼻で笑ったゲイルだが、その発言は全員が聞いていた。
「あいつ、今興奮って言いかけたぞ」
「ゲイル君……変態」
「マジかぁ、隊長マゾなのか」
「しかもクラス全員のいる前で……哀れね」
「……自業自得」
隊長の性癖が暴露されても、キャット小隊はあくまでマイペースなのだった。
「さて、そろそろここがどこか確認したいから解放してくれませんかノア嬢」
(((無かったことにした⁉)))
「え、ええいいでしょう。これ以上あなたに構うとわたくしの身が危険な気がしますわ」
ノアはゲイルが怖くなり、解放する。
英断であった。
「さて諸君。ここかどこか見覚えないかい?」
「……ターミナルの司令室に似ているな」
ターミナルとは、地球防衛軍の宇宙要塞戦艦で地球防衛の要となる超巨大戦艦だ。
収容可能艦数は3000隻以上、サイズは四国と中国地方を合わせたくらいある。
「その通り、ちなみにあれはターミナル2号機。1号機は各隊長機とともに行方不明。ここまでの情報で推理すると」
ゲイルがそこまで言った所で、アラートが鳴り赤いライトが司令室中で点滅する。
『コンディションレッド、コンディションレッド。パイロットは至急乗機に搭乗して防衛行動に移行して下さい』
「コンディションレッド⁉どういうことだ」
「こーゆーことさ」
オペレーターデスクでコンピュータをいじっていたゲイルが司令室のスクリーンに拡大光学映像を出す。
そこにはスクリーンを埋め尽くす、おびただしい数の100年前の敵ホムンクルスがターミナルへと向かっていた。
「ヤバイな、百機はいるぞ」
「早く出撃しないと!」
「格納庫どこだよ!このままだと蜂の巣だぞ」
「待て。どこかのカタパルトが開いた」
慌てるクラスメイトたちはゲイルの一言でしん、となる。
「あっちだ!」
ゲイルが指さした窓へドドドッと移動したクラスメイトが見たのは、開いたリニアカタパルトから発進する緋色の人馬のホムンクルスだった。
「サジタリウスリーダー!」
「速い!レプリカの5倍は速いぞ。あれは本物だ!」
敵へと突撃するサジタリウスは緋色の光を帯びた流星のようだった。