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100年前の戦い

「ドルフィン小隊ロスト!戦線はオリオン小隊が引き継いでください!」


「エリア854でエマージェンシー!Lパック装着のホムンクルスば急行して救助活動をして下さい。ドッグ小隊はその護衛を!」


「ターミナルのM区画で火災発生!整備用ホムンクルスは消火活動を!」


 地球防衛軍の宇宙機動要塞ターミナルの司令室の現状を言い表すならば、戦場だった。

 敵の異星人との最終決戦が始まって3日、最前線で戦うホムンクルスパイロットたちもだが、オペレーターたちも命懸けだった。


 人員が足りずに、疲労で倒れたものはそのまま床に寝かされて、起きている者たちも目の下に濃いくまを浮かべて怒号のような声で指示を出している。


 しかし彼女らは交代人員(気絶しているが)がいるだけマシだった。

 地球防衛軍司令、ケンジ・スナハラはこの三日間一睡もせず的確な指示をしていた。


 彼が居なければ、戦線は一日も持たなかっただろう。

 彼はマイクを取りオープン回線で戦場のすべてのものに語りかけた。


「諸君、ここが踏ん張りどころだ!5年前行方不明になった彼が帰ってきた!彼と光導十二部隊が敵主力を叩きに行くまで持ちこたえるんだ!彼らは我々の窮地を何度も救ってきた。信じるんだ!彼らを、人類の希望を!」


『オォーーー!』


 司令室のモニターからパイロットたちの雄叫びが鳴り響く。

 ケンジは椅子に深く腰掛けて目頭を押さえた。さすがに疲れが出てきたようだ。


「個人的には、彼らだけに数十億の命を背負わせることは胸が苦しいが……我々にはこれしか打てる手がない。頼んだぞ」


 ケンジはボソリとつぶやいて、まさに今敵に向かってまっすぐ突撃していくホムンクルスたちを見つめた。



 ◇◆◇



「オラオラオラァ!道開けねえと落としちまうぞ!」


 人馬のホムンクルスが宇宙を駆けて敵を落としていく。

 しかし落とされた敵はすべてコックピットを外されていた。


「隊長、行方不明になってる間にまた腕上げましたね」


「当たり前だ。俺はサジタリウスだぜ?」


 コックピットの後ろに座っている女性の称賛を謙遜もせず、むしろ鼻高々と青年は自慢した。


「サジタリウスリーダーへ、俺が道を開く。斬り込め」


 右上のモニターに写った男が、青年にそう言うと後ろにいた肩が天秤のような形のホムンクルスが、肩の天秤を正面に向けてそこから巨大なビームを発射した。


「うひょー。リブラリーダーはいつ見ても爽快だな。よし、タウラスリーダーは俺に続け!」


 サジタリウスリーダーに続いて後ろから牡牛のホムンクルスが続いて螺旋状に回転しながら、渦に飲まれた敵を粉砕していく。


 3機が切り開いた道を、他の光導十二部隊に護衛された、ターミナルと瓜二つの巨大戦艦が進んでいく。


「よーし、この辺りでいいだろ。各隊長機はターミナルにドッキング、隊員は援護しろ」


 各リーダーがターミナルの中心部へ行き、エネルギー炉にそれぞれの機体をコードを繋いでいく。


「これでよし、と」


「我々の逃げる足が無くなったがな」


「まあまあ、地球の為にいのちをちらす。こんな事滅多にある事じゃ無いでしょ。太く短く、そんな人生も良いものじゃないですか」


 起爆のタイマーを設定しながら、他人事のように話す隊長たちは、さすが百戦錬磨の猛者たちと感心できるほどだった。


 作業を終えた隊長たちの所へ護衛をしていたはずの隊員を引き連れ、サジタリウス小隊隊長がやって来た。


「よーし、設定できたな?」


「成瀬さん、彼らがいないのに護衛は大丈夫なんですか?ターミナルが落とされたら自爆もクソもないでしょ。僕たちの死が無駄になりますよ」


「何言ってんだ?俺たちは帰るぞ」


「は?」


 ポカンと立ち尽くす者たちを置いて成瀬は携帯端末を開いた。


「どうだ?」


『はいはーい、スピード極振りの高速艇と護衛用のゴーストホムンクルス30機、ただ今お届けー』


 端末の向こう側の声の主は軽い感じでそう言った。


「なっ!」 


「特務隊隊長?」


「さすが一緒に五年前も特攻して戻ってきただけある」


「俺は自殺願望は無いからな。死んでちやほやされるより、生きたままちやほやされたい」


「そりゃそうですけど……」


「サプラーイズってな」



 ◇◆◇



 有能な特務隊隊長が持ってきてくれた小型艇に乗り込むと、中は思いのほか広々としていた。


「皆さん乗ったかーい?忘れ物はないようにな。木っ端微塵になっちまうんだから」


 クククと笑いながらコックピットから振り返って少年は言った。


「次元、早く出してくれ。後三分だ」


「マジでギリギリじゃん。それじゃ飛ばしてくよー」


 パワーを上昇させ、発進させた途端とてつもないGがかかり、仰け反る一同。


「おい、こ、これは」


「いつもの出撃の何倍だ?」


「仕方ないじゃん。急ピッチで作ったから対G処理が追い付かなかったんだよ。むしろこのスピードで生きていられるくらいの性能で作ったことを褒めてほしいね」


「これ作るのにどれくらいかかったんだ?」


「3ヶ月前に作り始めて、昨日完成」


 次元の言うとおりだったので何も言い返せなかった。

 彼の顔をじっくり見るとオペレーターよりも濃いくまができていた。


 飄々としたなトークもそれを隠す為だったのだろう。


(((次元さん、マジで有難う御座います!)))


 みんな心の中で命の恩人を拝み倒していた。


「ほらほら、そろそろ三分ですよ」


 ターミナルの方を見ると、少しして目の前が光で包まれ、そこにはチリ一つ残ってなかった。


「ククッ、木っ端微塵じゃ無くて消滅しちゃった。被害範囲が計算通りで良かった」


 次元の冗談に苦笑いするしかない一同だった。

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