表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カレンデュラ(旧版)  作者: 芳多 響
序章
1/23

1-1 平穏な日常

 平穏な日常。

 眠気と格闘しながら自転車を進め、学校へ通う。


 平穏な日常。

 仲の良い友達と共に近頃流行りのソーシャルゲームを教師に見つからないようこっそり起動させる。


 平穏な日常。

 授業中、窓から見える学校の中庭の花壇をなんとなく見つめ続ける。


 平穏な日常。

 終礼が鳴り、友達と学校帰りに市内の割と大きなゲームセンターに寄って時間を過ごす。


 平穏な日常。

 帰宅し、最低限の課題と勉強をして、読みかけの文庫本を2、3ページ読み進めたところで寝床につく。


 至って平凡な生活を送る男子高校生、泉 綾斗(あやと)は特に目立つような事もせず、大人しく高校時代を過ごしていた。過ごすはずだった。





 燃え盛る炎を体現したかのような深紅の長髪を後ろで軽く結わえ付けた少女に目をつけられるまでは。


 彼の平穏な日常はそこで"平穏"を捨て去る。




 ***




 泉 綾斗は市内の凪岡高校に在籍する、学業とスポーツは共に中の上、友人の数はそこそこ、女子との交友は無い訳では無いが自分からは用でもない限り話しかけない、高校二年生である。


 高校二年生だからといって、特別になにかする訳でもなく(ただ単に本人が面倒くさがりなだけである)、友人とそれとなく会話し、授業は話半分に聞き流す生活を日々繰り返していた。


「よーう、あやとー!俺昨日単発ガチャで星5当てたぜー!!」

「マジかよ、何当てたの?」

「聞いて驚け、聖騎士モルレだ!」

「なんだ雑魚じゃねーか」


 昼休みに自分の席に座り、のんびりと紙パックのカフェオレを飲んでいると、中学時代からの付き合いである、柿田 純也がドヤ顔でキャラと自分の幸運を自慢しに来た。


「いやお前、この可愛らしくもあどけないモルたんを前に雑魚とか平気で言えるのか?」


 携帯に聖騎士モルレの幼い画像を見せつけながら、柿田は俺に迫ってきた。


「外見じゃない、中身の話だ」


 眉を寄せながらそう答えると柿田は、


「中身もそうバカにはできんぞ?見てみぃ、身体能力は星5にしちゃ低いがその分、魔力は高いんだぜ?」


「騎士なのに身体能力低くて魔力高いとか、キャラブレてんじゃん」


「それにこのルックスがなんと言ってもたまらん!星5モルたんのイラストは三枚あるんだがな、この1枚だけは別格なんだ!見てくれよこのつぶらな瞳、真っ白な御御足おみあし、未発達の胸!これこそまさに人類が求めるべき姿(ロリ)なんだよ!!」


 はないきあらいぞろりこんやろうどっかいけ。


「鼻息荒いぞロリコン野郎、どっか行け」


 気づけば柿田の後ろに長身で黒髪短髪、眼鏡をかけた知的雰囲気を醸し出す青年-大蔵 賢吾が立っていた。ご丁寧に俺の心の声の代弁付きである。


「そもそも学校で携帯を使うな。校則違反だろう」


「まぁまぁ堅いこと言わずに、いんちょーサン。後でモルたんのマル秘画像送っとくから」


「いらん。とにかく携帯をしまえ。次は流石に見逃せんぞ」


「へいへーい。ちー、もっとこのモルたんの魅力について語りたかったのによー」


 そう言って渋々、柿田は携帯を自分の鞄の中にしまった。


 大蔵 賢吾も数少ない中学時代からの友人で、学級委員長でもある。大体この三人で居るのが基本だ。あと、強いて付け加えるとするのなら…


「あーいたいた、綾斗ー、こないだの数学の課題出してないの綾斗だけだよー。今もってる?」


 廊下から明るい声を教室に響かせながらこちらにやって来たのは幼馴染である、高崎 鈴奈だ。


「あー悪い、忘れてた。」


 と、感情を込めずに口だけで謝罪を述べつつ机の引き出しからプリントを引っこ抜いて鈴奈に渡す。


「もう、しっかり朝までに提出しておいてよねー。山岡先生が厳しいのは知ってるでしょ.......て、何これ、全然終わってないじゃん」


 鈴奈が呆れた顔で俺のプリントを見つめる。


 んなバカな。プリントは昨夜しっかりと終わらせたはずだ、と思い目を向けると、そこには確かに、汚くはないが綺麗でもない俺の字で、問題を最後まで解き終えてあるプリントが鈴奈の小さな手の中にある。


 終わってるじゃん、と言おうと口を開きかけた時、鈴奈がくるりとプリントをひっくり返した。


 そこにあるのは問題だけが印刷された綺麗な白紙だった。


「げ、裏面もあったのかよ」


「そりゃそうだよー、表面の問題は簡単だからね!山岡先生がこの程度の問題を課題にすることなんてないない!」


「裏の問題はかなり難しいぞ。少なくとも、放課後までには終わらないだろう。正直に先生に伝えて、明日の朝出すしかあるまい」


 鈴奈が明るい声で答え、大蔵が悲しい現実を突き付ける。


 成績優秀でもある賢吾が難しいと言うのなら、俺にはかなり時間のかかる問題なのだろう。諦めて先生に伝えるしかない。裏面もあるならあるで事前に言って欲しかったな。ちくしょう。


「しゃーない、ちょっと職員室行ってくるよ」


 そう言って立ち上がろうとすると、俺の隣に柿田が突っ立っていた。真っ青な顔で。


 この世の終わりを見てきたかの様な顔をする柿田を見て、俺たち三人は察する。


「お前もやってなかったのか」


「あ〜あ、やっちゃったね」


「ご愁傷様、としか言えんな」


 悲壮感を漂わせながら柿田は自分の鞄から綺麗なプリントを取り出す。


「...やべぇ、完璧に忘れてた。しかも両面まっさら.......」


「とりあえず、一緒に職員室行こう。今日中じゃ絶対終わらないよ、これ。」


 すっかり色を失った柿田にそう声を掛けて、職員室へ向かおうとすると、


「嫌だぁ!怒られたくない!山岡先生いっつも俺にばっかり厳しいから嫌だぁ!」


「俺だって嫌だよ。でもな、後でバレるとわかっている罪を黙ったままでいる奴と、正直に言う奴、どっちが罪が軽くてカッコイイと思う?」


「そりゃあ、まぁ.......言う奴...」


「よし、決まりだな。それに一人より二人の方がいくらか気が楽だしな」


 そう言って俺は柿田の襟元を引っ掴んで教室をあとにした。






「最後の一言が無ければ、偶には良いことを言うな、と褒めてやったのだがな...」


「宿題忘れてる時点でかっこよくないよ~」


 後ろから何やら失礼な声が聞こえてきたが聞こえないフリをした。

前々から考えていた妄想をそのまんま文章にして見ようかと思い、小説書いてみました。

拙い所だらけでご迷惑も沢山かけてしまうかもしれませんが、なんとか頑張る所存です。宜しくお願いいたします。

(リアルが忙しいので不定期更新なのは御容赦頂きたく.......!!)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ