打ち上がる花火、打ち明ける気持ち。
不定期で掌編小説を投稿しています。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。
テーマパークの街灯から光が消え、遠くからはお馴染みの音楽が聞こえて来る。
寄り添いパレードを眺めるカップルが羨ましい。
私達もいつかあんな風になれるのだろうか。
光と音が織りなす幻想的な時間の中で、私はそんな事を考えていた。
大学のゼミで知り合った私たち。
切っ掛けなんて、些細なものだった。
プレゼンで大失敗を犯し、1人落ち込む私を彼は笑って励ましてくれた。
「大丈夫だよ。たかがゼミだ。死ぬわけじゃないし。」
その、不器用な一言でどれだけ救われたことか。
すっかり彼に惹かれた私はやっとの思いで食事に誘い、それ以来何度かデートも重ねた。
いたずらに積み上がるデートの回数とは裏腹に、彼にとって私は”気の合ういい友達“だった。
このままで良い理由が無い。けれど、それ以上にこの関係が壊れてしまうのが怖かった。
園内に響くアナウンスと、輝きを取り戻した電飾が、パレードの終わりをそっと告げる。
「すごかったな!見れて良かった!……さぁ、姫様?次は何に乗りたいんだい?」
最初は乗り気でなかった彼も、なんだかんだで楽しんでくれている様だった。
「うん、メリーゴーランドに行きたい……かな。」
「よし!決まりだ!」
出口に向かう人波を縫って歩く彼の手が、私の手に触れる。
決して握られる事の無い手。それでも、高鳴る胸。
なんとか辿り着いたお城の前の広場、先を歩く彼が背中越しにポツリと私に話しかけた。
「あのさ、俺、あんまり遊園地とか来た事無いけど、楽しかったよ。……なんていうか、お前と一緒だからかな……なんてな。」
思ってもいなかった言葉。その瞬間、時が止まったようだった。
多分、驚いて立ち止まる私に気付いていないのだろう。
彼は振り返る事も無く続けた。それは、彼なりの照れ隠しだったのかも知れない。
「だからさ、これからも……。」
それ以上の言葉は、喧騒に飲まれ届かなかった。
でも、それだけで私は十分だった。
ドーン。
突然上がる、打ち上げ花火。
一目見ようと立ち止まる人ごみの先に、夜空を見上げる彼を見つけた。
慌てて駆け寄った私の肩を、彼がそっと抱き寄せる。
「綺麗だな。」
「うん。花火、綺麗だね。」
そんな私の言葉を聞き、彼はケラケラと笑い出した。
「バーカ。」
夜空を彩る花火はとても綺麗で、大きな音は私の胸を叩き続ける。
そっと繋がれた彼の手は、とても暖かかった。
お読み頂きありがとうございました。
連載中の『sweet-sorrow』は明日、投稿予定です。
そちらもよろしくお願い致します。