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good vibration  作者: リープ
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第5話 「twist」

「僕達……じゃなかった。澄川正宗は多重人格者なんだよねぇ〜」

「っ!?」

 あまりの口調の変化と言葉に私の思考は完全に停止。

「ちなみにここからは光彦がお送りしまーす!! ねぇ、驚いた? 驚いた?」

「えっと……」

 私が答えられずにいると、澄川は私の顔を覗き込んできた。

「チューしていい?」

「!!」

 その言葉に私は我に返る。

 気が付くと澄川の顔が近づいてきてるじゃない!!


「嫌あああぁぁっ!!」

 私は思いっきり澄川の頬をひっぱたいた。澄川はきれいに真横に吹っ飛んでいく。

 あれ? そんなに力入れたっけ?

「何すんだよぉ〜」

「そ、それはこっちのセリフでしょうが!!」

 すると特に悪びれる様子もなく頬をさすりながら言う。

「だって隙があったんだもん」

「そういう問題じゃない!! ふざけるのもいい加減にして!!」

「ふざける?」

「多重人格なんてそんな簡単にあるわけないでしょ!! 聞きたいのは、なんで私を殺さなかったかって事!!」

 と、ココまで言って私はふと思う。

 私、なんでこんな事聞きたいんだろう? 心の奥を探ってみる。

 すると、何かドロドロとしたモノに突き当たった様な気持ちになる。

『死んじゃった方が何も考えなくて良いじゃない』

 ――殺されたほうが案外、楽だったかもしれない。

「そこのお姉ちゃん、だからさっき言ったじゃないか!!」

「ん!?」

「『正宗君』がその人のことを好きにならないと『刹那せつな君』は出てこないんだよぉ〜」


 その言葉で私は我に返る。

「んなの理由にならない!!」

 混乱ぎみな自分に言い聞かせるように言った。

 光彦と名乗っている澄川正宗は口を尖らせながら、いかにも不満げな口調で答える。

「理由になるよぉ〜」

「それに「刹那」って誰?」

「ん〜、殺し担当の人格」

「殺し!?」

「ねぇ、驚いた!?」

「楽しそうに言うな」


 私は少し冷静になって考えた。

 そういえば昨日……

 『それはオレの領域じゃない』とか言ってた。口調だって昨日とさっきと今では大違いだ。

 ということは本当に……

「じゃあ、今のアンタは誰なの?」

「だから光彦だって言ってるじゃないかぁ〜」

 じゃあ、やっぱり! 

 コイツは多重人か……

「……もういい」

 アホか。そんなドラマみたいな事あるわけない。

 私は教室へもどることにした。


 頭の中はゴチャゴチャしてよく分からない。

 澄川は本当に多重人格者なのだろうか?

「そんな事どうでもいいじゃない」

 何度も呟くように独り言を言った。

 もう関わりあうのは止めよう。何だかんだ言ってアイツは人殺しだ。

 昨日、アイツから目が離せなかったのは、人殺しという現場を見てしまったからに違いない。

 うんうん、そうだ、そうだ。


 瞬間的に頭をよぎる想い。

 ――私は歓迎されない存在。

 だから殺されてもよかった……

 あぁ、また今日も家には帰れそうにはない。


 そんな事を考えながら教室に帰ると、さらに厄介な出来事が待っていた。

「私、今日、澄川に告るから」

 もちろん言ったのは有希だ。

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