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異世界転生でハーレム生活2

作者: とにあ

 異世界転生したらしい俺は海底でクラゲ王子になった。

 父上(正体不明)に命じられ、海の被災地開拓事業。と思ったら食糧扱い!?

 俺の二度目の人生、いったいどうなるんだ?



 十日も経てば新しい環境にも慣れるもので俺はひとつ息を吐いた。

 新しい住まいは何もなく、(マジで、何にもなかった。建物も海藻も。ただ、ただっ広い海中だった)一緒に来た補佐官たる女性達を自らの身体に潜ませての生活だった。

 呼吸すら魔力が不足していて苦痛だろうと爺が教えてくれた。それでも彼女達は笑顔で優しく振舞ってくれる。

 時々、身体の末端を切り取られることはあっても気にならなくなった。

 管理区画内に魔力が行き渡るように使うと説明されればそんなものかと思う。

 魔力は言うなれば空気のようになくてはならないものらしい。

「魔力がなくても生きてはいけますけど、発育不足抵抗力不全は否定できませんし、今は魔力補充して成長促進しなくては私達が生きていくだけの糧が得られませんわ。何時までもゼリア様を。とはいけませんもの」

 そっと視線を下げるような風情で語るのは大ウツボの補佐官。人の姿に化していた時はスレンダー美女インテリ風。

 ウツボであることは些細な問題だ。自分だってクラゲだしな。

 自分の魔力チートが役立つなら!

 なにしろ首がいっぱいの化け物、ヒドラだって俺一人で撃退したからな。

 補佐官にして俺の嫁達と爺がほのほのと微笑む。

 ほんわか空気が居心地が良かった。

 ヒドラを撃退した時、つい、叫んでしまったんだ。

「俺の嫁に手を出すな」って。

 言うなれば、部下であって嫁ではないと言い返されるところだったのに、彼女達は頬を染め潤んだ眼差しで「嬉しい」って言ってくれたんだ。

 それを皮切りに結婚式や住居の話が具体的に詰められていく。

「ゼリア様にご迷惑はお掛けしませんわ」

「ゼリアさまはぁ、取り合いされたい?」

「だぁいすき」

 そんなことを言いながら、軽くキスをしてくれる。

 なんか「あん。美味しいん」とか聞こえるのは気のせいだ。

 そんなスイートライフをおくっていたある日、爺曰く、『生け贄の娘』が流れついた。

 地上の住人らしい。

 人間が、ヒトが、いたよ!

 海洋生物の化身じゃない人の子だよ!

 お嫁さん達からしても食べるには物足りなさげとのことで俺預かりだ。と言うか、お嫁さん達食べる気満々だったよ。食材としか見てなかったよ。気のせいか渋々だった気がするよ。

 そんなお嫁さん達から隔離して金魚鉢のような泡玉の中にいる少女は愛らしい。

 泡玉の中は地上と変わらない空気が満たされているらしい。人は水中呼吸できないもんな。

 父上の王宮は人もいた気がするけど、何が違うんだろう?

 後で聞いておこう。

 少女を怯えさせないように人の姿をとる。

 自然とできてホッとする。

 話を聞くと彼女はいきなり荒れた海を鎮めるために捧げられたのだと。

 えーと、ヒドラとのバトルのせいだろうか?

 だよな。それしかないよな。

「帰れるように送ろうか?」

 そう提案すれば、少女は必死に拒否してきた。

 残念だけど、水中呼吸できない人の子なのが敗因だ。ずっと泡玉に閉じ込めておくのも気がひけるし、食事も気にかかる。

「拒否されれば忌者(イミモノ)として地に埋められてしまいます。どうか、どうか、海のヌシ様にお仕えさせてくださいませ」

「ヌシさま?」

 誰のことだろう。父上かな?

「ここの区画の管理官はゼリア様ですので、この海域のヌシはゼリア様ですよ」

 爺がそっと解説を入れてくれる。

 彼女に対してかも知れないがナイスアシスト!

「……ゼリアさま。あなた様がヌシさま?」

 俺はゆっくりと頷く。そうらしいよ。という思いで。

 少女の長い睫毛が視線を隠す。

 憂いある表情にドキドキする。

「ゼリアさまのお役に立てませんか?」

 上目遣いの潤んだ眼差し。

「人の生活出来る環境じゃないんだ。閉じ込めておくのはちょっと」

 いや、待って、その絶望した眼差しが痛いよ。

 うん。わかったよ!

「出来るだけ尽力を尽くそう」

 ぱぁっと少女の表情が明るくなる。超可愛い。

 躊躇いがちに口もとで揺らぐ拳。

 少し厚めのキスしやすそうな唇。信頼をたたえた瞳。非常に胸が高鳴る。

「ありがとうございます」

 俺は対策を相談するためにお嫁さん達を探しに出た。

「気泡樹で部屋を造れば、生活空間は固定できますし、気泡樹が成長すれば範囲も広がりますよ」

 尋ねれば、あっさり答えが返ってくる。

 気泡樹か。

「どこにあるのかな?」

「魔闇の海珠森林の魔法使い様が管理なされてますわ」

 スッと意識がその情報を広げて閉じる。

 得体の知れない青年魔法使い。イメージカラーは黒。物知りで楽しいことを好む陰湿な性質。

 それでも対価さえ払えば、ほしいモノはくれる。そんな人物だ。

 場所もわかる。

「よし。行ってくる!」

「お待ちください。ゼリア様がこの地を離れることは承認できません」

 え?

 なんで?

 困ったように彼女は笑う。

「ゼリア様がこの場の要なのです。ゼリア様がいらっしゃるから帰還した民が生きていけるのです。環境の整わぬ今、ゼリア様がこの海域中心部であるここより離れられることは弱き者に死を与えることとなります。もちろん、次にくるものの礎たれと御意志であれば、彼らは喜んで受け入れるでしょう」

 待って!

 そこまで?

 そこまでのことなの!?

 慌ててる俺に気がついたのか大ウツボなお嫁さんはにこりと表情を緩める。

「ゼリア様、ゼリア様が気に病まれることはありませんよ」

 病む。気にする。

 それでも、彼女に尽力すると、努力すると約束したんだ。

「旦那様。ワタシがいってきますー」

 大ウツボなお嫁さんの背後から、砂色人魚なお嫁さんが顔を出す。

 どこか幼い印象の少女はくるりと回って体を低くする。

「旦那様の希望をかなえることはワタシたちの喜び。旦那様がなした言葉を現実に移すはワタシたちの義務であり、権利。できたら褒めてね」

 ぎゅうっと俺に軽く抱きついてから砂色人魚のお嫁さんは準備して出かけるわーっと去っていった。

 困ったような微笑の大ウツボのお嫁さんがそっと俺の袖を引く。

「地上に興味を持たれるのは構いませんけれど、この南の海はゼリア様あっての再生のさなかなのです。どうか、ご配慮を」

 こう、言われて俺になにが言えるんだろうか。

 俺の異世界転生生活は魔力チートと甘やかハーレムのスイートライフ。

「それに、」

 ふと大ウツボのお嫁さんが言いにくそうに言葉を詰まらせる。

 じっと見つめれば、そろりと言葉をこぼす。

「共に来た娘たちならともかく、早々に新しい女性に目移りされるのは私も切ないですわ」

 胸を直撃するこの想いは恋だろう!?




「ゼリア様、ちょろい」

「ヌシさま。ちょろすぎる」

「旦那様。褒めてー」

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