ユエと姫様
今は夕方。さて、賢者の石の材料以外で忘れているものがあった気がします。
どういったものかはよくわかりませんが思い出せないってことは思い出さなくっていいってことです。久しぶりに報酬ガッポリもらったので少し贅沢ができます。
本の贅沢とはファーストフードやファミレスなどに行くことですね。
もし違うと言うなら逆にそれ以外になんの贅沢があるのですかと問いたいです。
「いらっしゃいませ。ご注文をどうぞ。」
マルクナルドに入るのは久しぶりです。メニューも一新したようで見たことないメニューが何十個もあります。よくわからなかったのでハンバーガーを一つ、お持ち帰りで購入。
スーパーでペットボトルジュースを買いちょっとした贅沢を味わいました。
「平和です。平和なのはいいのですけど刺激にかけますね。」
空を眺めてそう思いました。この空のように何も考えずに空をゆらゆら漂えるとしたらどのような感覚なのでしょう。未知の感覚には違いないですが気になっています。
シルフの力で雲の上で紫外線シャットアウトしながら昼寝でもしてみたいですね。
「やっと見つけたぞ。ユエ!今度こそお前に『GMC』に来てもらう。」
・・・・・・・・・そういえばこんな方に会っていましたね。
「忘れていたみたいな顔するなよ。傷つくじゃないか!」
むしろもっと傷つけと思っているわけですが口には出しません。
それにしてもしつこいですね。せっかく捕まえてもらったのにもう抜け出して私に会いに来るなんて執念深いにも程があります。ですがこの方にはお帰り願いましょう。
今後の私のためにも。
「もう一度言います。何度言い寄ってきたって私は移動するつもりはありません。」
「ユエ。これは姫様からの勅命だぞ。それを断るって事はこの国に反逆するってことだぞ。」
「それくらいはわかっていますよ。でも私は自分の意志であの場所を動く気はありません。もし動かしたいならサンタさんに進言してください。」
「サンタさん?もしかしてあの赤い服を着た錬金術師のことか?」
「そうです。サンタさんが移動しろというのなら移動しましょう。」
この時この言葉がまさか裏目に出るとはこの時は思いませんでした。
私と自称名前も知らない誰かさんと一緒にサンタさんのもとに行くと不機嫌そうな顔で迎えられました。この人の性格なら当然でしょう。
「おいおい。名前も知らない奴を連れてきてどういうつもりだ?」
サンタさんは想像通りの言葉を言ってくれました。
「ですよね。ではお帰りください。」
「待て、待てよ、待てる、待って、待ってください。どうして帰る流れになっているの?」
「ならまず名を名乗れ。もし話をするのならばそれからだ。」
「あなたには一度名乗ったでしょうに・・・・・・わかりました。自己紹介させていただきます。」
ガシッと昔懐かしき敬礼を行いました。今時流行りませんよ。その敬礼。
「私の名前はフレア・シン・アーシア。クレア様直属の騎士団団長です。」
そんな偉い人を私は牢屋にぶち込んだのですか。別に後悔はしていません。
むしろあの時は邪魔にしかなりそうにありませんでしたから。
サンタさんはフムと頷くと私に指を向けてきました。
またもや嫌な予感がします。サンタさんの指は悪意に満ちている気がします。
何も言わないように口を塞ごうとしましたが五秒ほど遅かった。
「この不出来者でよかったらどんな場所に連れてってもいいぞ。」
「ちょっ!」
件名を聞くまでもなく了承しやがりましたこのカス。恩をアダで返しているのはあなたじゃないですか。私もそれなりに恩は感じていましたがこれはあんまりじゃないですか!
サンタさんに直談判しますがそれは無理な行動でした。
サンタさん曰く「やることやらない奴にいらないだろう。」と正論ぶちかましてきました。
横暴です。私の給与はどうなるんですか!給料日前ですよ。
「ついでに給与は払わないからそこのところよろしく。」
「どこまでクズなんですかあなたは!ちゃんと働いたじゃないですか!」
「一回の失敗が信用をなくすんだ。それを覚えておけ。」
いくらいい名言を言ったとしてもあなたがクズなのは変わりませんけどね。
売られた私はクレア姫様のいるお城に連れて行かれました。
クレデリカ以外の場所を都市内で歩くのは本当に久しぶりです。
お城はまさに都市の中心に存在し国民の象徴として建っている建物。
歴史はかなり古く約200年前にはこのお城は建っていたと言われています。
突然ですが純白の白で屋根の部分が赤く塗られたお城というのはお姫様が住んでいると思えてしまうのは私だけでしょうか?
現実逃避してそんなことを考えているといつの間にか王座の間についていました。
人生で二回目の王座の間。人生いろいろあるものです。
「王女様の前だぞ。しっかりとしろ、ユエ。」
「私が呼ばれたんですよ。あっちがホスト。こっちがゲスト。いわゆる客ですよ、私は。」
「減らず口を・・・・・・すいません。言葉遣いのなっていないもので。」
「良い。久しぶりに知人に会えて私も嬉しいのよ。」
髪は長く金髪。ドレスを身に包み。高貴なるニオイを放つ。
私と生まれも育ちも違うオーラがバリバリとでています。
「ですが!」
フレアはどうしても私の言葉を矯正したいようで異議申し立てるような声で言いました。
ですがなんと言われようと私は自分自身を貫きたいのです。
そうした方が主人公っぽいでしょう。
「黙りこくりなさい、フレア。私が呼んだのです。彼女に非があるわけではありません。」
クレア姫乃言葉でフレアが震え始めた。多方クビにされるとでも思っているのでしょう?クレア姫は優秀な人物を簡単に解雇する性格ではなかったはず。国民に愛され兵士たちを労うことを忘れない立派な君主になったはずです。
「では今後のことを私の部屋で話し合いましょう。」
「ちょっと待って姫様。話が見えないのですが?」
「?そっちこそ意味がわかりませんよ。あなたは『GMC』に入るのでしょ。」
・・・・・・・・・あれ?どこかおかしくないですか?私は『GMC』に入るなんて言っていないしむしろ強制的に連れ去られました。それなのになぜこのような事態に?
「サンタマリアからも今朝に許可はもらっています。」
知らぬ間に売り買いされていたようです。となるならばこれは私が拒否しても意味なかったということですよね。現実とは非情なりや。
「わかりました。でも『GMC』に入るならば姫様の部屋に出向く必要はないのでは?」
「あら、それも聞いていなかったのかしら。ユエの仕事は私の直属メイドもあるのです。」
・・・・・・・・・メイド?あのご奉仕しますご主人様って感じのあのメイドですか?
炊事洗濯おはようからおやすみなさいまでやらなきゃいけないあのメイドですかぁ!
マ、マジですかぁ!確かに自炊とか掃除とか得意ですが姫様に使えるほどのスキルは持っていないと思いますよ。それと四大にもこのことまだ連絡していませんし。
『大丈夫だ。ここにきているぞ、我が主よ。』
頭の中にイフリートさんの声が響いてきました。どうやら姿を消しているようですね。
それとイフリートさんがいるということは他のお三方もいるのでしょう。
『僕もいるよ。ふぅ・・・・・いつも君は突然何かに巻き込まれるよね。』
シルフ。私がこの状況を作り出したかのように言わないでください。
『ノームは・・・・まだ寝ていますね。連れてきましたけど。』
『ZZZ・・・・・・お腹いっぱい。』
この二人はいつもどおりですね。
「ユエ。どうしたのですか?もしかしてメイドの件は迷惑でしたか?」
「いえ、そのようなことは。」
この状況で心の底で思っていますとは口が裂けても言えません。
姫様に逆らったら極刑という法律があるのですから。
「ならばいいのです。私の部屋に向かいましょう。」
姫様が自ら自分の部屋にお通しするという暴挙は普通に受け入れられ姫様の部屋に私は通された。なぜかベッドがトリプルベット仕様であることに身の危険を感じました。
ベッド以外は特に変なところはなくお姫様の部屋という印象の部屋です。
姫様はベッドに優雅に座りました。やはり育ちがいいと座り方も違います。
(部屋広すぎ!もう逃れられないところまで来てしまったようです。)
『本当に我が主は人生波乱万丈の生活を送っているな。』
『ユエはトラブルメーカーの名にふさわしい少女だよ。永遠の18歳だけどね。』
おいこら。姫様の部屋の中だというのに怒マークが頭に浮かびました。
後で手酷いお仕置きをしましょう。
『シルフ。我が主を虐めると恐ろしい報復が来るぞ。そろそろ学べ。』
『シルフは本当にこりませんね。ユエ様に与えた力は私達と同格の力。期限の悪くなることを言えばお仕置きを受けるのは自明の理でしょう。』
『本当のことを言っているのになんで怒られなきゃいけないのさ!』
シルフの言いたいこともわかりますが人の気にしていることを口に出すのは人の怒りを買います。それはもう偶然ではなく必然的に。
私は姫様においでおいでされベッドの上に座らされました。一瞬悪寒がしましたが気のせいでしょう。そう思って後ろを向くと半裸になったお姫様がいました。
どうしたことでしょう。どんどん自ら身ぐるみを剥がしていくではありませんか。
「どうして服をお脱ぎになっているのですかクレア姫様?」
姫様はさも当然のように全裸になり私の方に向きました。そしてにやりと笑います。
これは私も貞操の危険を感じます。逃げようとベッドから立ち上がりこの部屋の出口のノブに手をかけます。しかしノブ回すことができませんでした。
扉を蹴破ろうにも高そうなのが災いして蹴れません。
そのようなことしている間にも姫様がこっちに向かってきます。
「助けてください。姫様に襲われそうになっています。」
ああ。返事がない。見捨てられたんですかね。それとも皆さん周知の事実とかですか?
再び強く叩いてみるも無残。返事がありません。
姫様が私の体にまとわりつくように拘束。逃げられなくなってしまいました。
ふっ・・・・・・と姫様は耳元に息を当ててくる。
くすぐったい。我慢、我慢しなくては!
「しぶとい。さっさと私のものになりなさい。」
「嫌です。少なくとも今は姫さまのその性癖を受け止められません。」
必死の言葉で「仕方ないわね。」と姫様は離してくれました。貞操は守られ平和な。
「ユエ。こっちは着るわよね?」
裸のお姫様の持っている黒と白のコントラスト絶妙である使用人服。
いわゆるメイド服が目の前に出されてしまいました
姫さまの方を見ますと目が笑っておりません。これだけは着せてみせると目に炎を纏っている気がします。退路は絶たれているのでメイド服を着るしかないのでしょうか。
「ちなみにこれを拒否する場合城のメイド全員にあなたのメイド服着用させるように手配しますので逃げても無駄ですよ。」
権力には逆らうことができませんでした。
次回「メイドって怖いし話を聞かない」