子供奪還作戦
今、コウガさんの生まれ故郷『千歳の里』で昔懐かしき木造建築の家にいます。
さて、あの後私はコウガさんに事情をお聞きしました。お聞きしましたよ、ええ。
ぶっちゃけて言えば簡単に説明してしまうと私の実力を知りたがっていたという一点に繋がります。少々やりすぎでしたが・・・・・・。
それとあのもぐらさんはコウガさんが操っていたらしく本当は小さく可愛い生物ですよ。
「済まない。あの程度くらい何とかしてもらわないとあの森で命を落としかねないからな。」
コウガさんの話は脅しではありません。純然たる事実です。
私としては四大さんに手伝って欲しいのですが今日は皆に休暇日を設けていたのです。
せっかく彼らに休みを上げているのに取り下げるのはかわいそうですから。
ですから単身で化物の巣窟へと向かっていくわけです。
「村長がもうすぐ顔を出す。詳しい話は村長に聞いてくれ。」
ドロンと彼は消え去りました。彼は忍者として理想的な去り方知っている忍者でした。
しばらくして白いヒゲを蓄えた忍者服を着たおじいさんが現れました。
思ったのですが私の周りには白いヒゲのおじさん率が高い気がしています。
気のせいでしょうか?
「よく来てくれた。私たちは歓迎するぞ。」
もうすでに巨大もぐらとの戦闘という歓迎を受けました。
あんな過激な歓迎は二度とゴメンを被りたいところですね。
「今日は歓迎の話はさておいて事件の話をしてください。時間が惜しいでしょう。」
「そうだったな。それでどこから話そうか・・・・・・・。」
村長からの話は以下の通りです。
1.子供が昨夜突如キングコングが現れ去っていったこと。
2.そのキングコングはオスで尚且つそのキングコングは森の中に帰っていったこと。
ここから導き出される答えは女の子がキングコングに誘拐されたということです。
結論から言えばほとんど進展はなかったのです。さてどうしましょうか。
「その他の情報はないのですか?例えば家がどんな状況だったとか。」
「子供は家に一人だったそうです。深夜に帰ってきた両親に話を伺いましたから情報としては確実です。」
なるほど。コウガさんの言っていた証言者とは攫われた子供の親だったというわけですか。それならば信頼性はありそうですね。
また森の中の洞窟を探すというのは森に逃げたという証言から推測したものでしょう。
この界隈では凶悪な魔獣はそうはいません。ですがもうちょっと外側に向かえば強い魔獣は大量にいますけど。そう腐る程にね。
「では準備が出来次第出発したいと思います。そうですねぇ・・・・・・工房・・・・・・いえ、個室を貸してくださいませんか?準備がしたいのです。」
「はぁ・・・・・・別に構いませんが。どのように使われる・・・・・・はっ!もしかして性衝動を抑えるために使用されるのですね。そうなのですね。」
「セクハラダメ絶対。」
さらに降りかかるセクハラに抵抗しつつ部屋を借りることに成功しました。
正直村長が性の営みの話をし始めようとした時にはぶん殴ろうと思いましたがコウガさんがやってきて連れ去っていきました。その時鍵が落ちていたので拾ったのです。
別に盗んだり恐喝したりしていない。勝手に落としたのですから問題はありません。
その鍵がこの家のある一室の鍵で罪悪を感じることのないまま開けることにしました。
中に入ってみるともうすごく何もない部屋でした。好都合ですけど。
「これならおおっぴらに広げられますね・・・・・・超駆動兵器開放。」
私は銃型オーバルアークを取り出しそう唱えました。銃は光を放ち内方された物を全て吐き出します。内方されていたものは主に銃の弾。特殊弾です。
もぐらを倒した時に一発使ってしまったので雷撃弾は一つ無くなっています。
実は充填は内方されている物なら所有者が念じれば自然に充填されるのですよ。
この仕組みを開発したときは私ってなんて天才だろうと意気揚々としていましたがもう過去の話です。また自分で弾を交換することもできますが非効率。
一応予備は非常事態に陥る可能性もあるため持ち歩いていますがここ五十年非常事態は起きていません。ですが用意しておいて損もありませんので持っていきます。
「これで整備終了・・・・・・・・・(・)超駆動兵器収納。」
超駆動開封の言葉とともに住が光り始めました。厄介なのはこの光に特殊弾とその他のものを投げ入れなければならないこと。そうしなければ収納ができない仕様です。
どうして投げ入れて入れるようにしたかの想像はたやすいと思います。
もし周りのものを強制的に収納するとなると半径30m内の無機物、人間や生物すらも全て飲み込み更地とかしたでしょう。製作段階でそれに気づいた私は安全に直接投げ入れる事のできる仕様にしたというわけなんです。
お部屋を出ると無駄に見知った顔がいました。銀髪で、ロングで、スレンダーを貫くあのボディ黒人はハイランダーの名前を忘れたあの方しかいません。とりあえず頬を抓ってみましたが反応がありません。まさか幻術?いえ、実体化を可能にする幻術はまだ製作段階のはず。だとしたらこれは・・・・・・。
「夢ですね。私も等々白昼夢を体験してしまいましたか。」
「いいや夢じゃない。この私はここにいる。勝負だ、ユエ!」
「お断りします。こちとら用事があるので暇ではないのですよ。」
丁重にお断りを入れました。私はいま任務を受けているのです。
子供の遊びなんかにかまっている暇はありません。
そもそもこの子は完全なる不法侵入。叫べばどちらが捕まるかはお分かりでしょう。
「生憎だがそうは問屋が許さないぜ。あんたと戦うために私は来たんだから。」
それはあなたの都合でしょうに。あなたの我が儘で私の時間を奪わないでください。
「こら逃げるな。私と戦え・・・・・・・・・って言っているだろうが!」
危険を感じた私は素早く木造建築の家から出ます。するとどうでしょう。家は数秒経たずに炭となり崩れ落ちました。ああ、なんて言い訳しましょうかこれ。
私の友人がやりました。私は無害ですと言って責任をあの子に押し付けるのが一番の方法でしょうか。ですが結局あの子は私をしないのが悪いと言いはるでしょう。
本当に最悪です。どうあがいても私に罪がお負い被らされそうです。
「こうなったら逃げるが勝ちですかね。でも逃げたらもっと罰がひどくなりそう。」
それにあの子が村長の家だけでなく周りにも迷惑かけそうですし。
私が犠牲になるしかないのでしょうか。・・・・・・もう来ましたか。
「どうして私を付け狙うんですか。言っておきますけど私お金持っていませんよ。不景気でほとんどただ働みたいなものですから。」
「お金が欲しいのではない。私が勝ったらあのろくでなしの爺さんのところから私たち国連魔術研究会『GMC』へと来てもらおうか。」
国連魔術研究会グローバル・マジック・コンサルト。通称『GMC』と呼ばれる組織。
その組織は規模がとても大きくありとあらゆる魔術的存在を解析、開発しています。
もちのロンで私の超駆動兵器オーバルアークも研究対象になっているはず。
もしもこの私をそうゆう理由で勧誘しているとしたらついて行くわけにはいきません。
「私は国連じゃなくてもいいです。あの辺境な部署で働くと決めたのです。」
「地方自治体クレデリカ支部を辞めるつもりはありません。ですからお引取りを。」
「そうはいかない。こちらはクレア姫様からの勅命なのだから。」
「クレア・フルテ・ミシェル姫の勅命ですか。ご苦労様です。すっかり政府の犬ですね。」
クレア姫とは何度か遊んだことがあります。確か10年前だったはずです。
その時はまさかクレア姫があんな場所で遊んでいたとは思いませんでしたのでまさかお姫様本人だと知らずに遊んでいたのです。時間が経って彼女は王女の座に就いたのです。
「クレア姫のお願いなら聞きたいですけどやっぱり無理です。それにまだ依頼が終わっていませんし途中で放り投げたくありません。」
「・・・・・・拡大解釈するのなら任務が終われば戦ってもいいと?」
「そうなりますけど・・・・・・もちろんサンタさんの許可があってのものですけど。」
「署名ならちゃんともらっている。ほらこれだ。」
え~なになに『この私『サンタリア・グレンセン』の名において部署移動の決闘を申し込むことを許可する。PS楽しそうだからどんどん戦え。』・・・・・・いつの間にか外堀が埋まっていました。サンタさん何を考えているんですか。ただでさえ人は少ないのに・・・・・・。
アレ?ちょっと待ってください。この文章には部署移動の決闘を申し込むこととしか書いていない。ということは負けた方の部署への移動ということでしょうか。
「クレア様の署名ももらっている。そちらも見るか?」
「・・・・・・・・・拝見させていただきます。」
まさかクレア姫まで署名しているとは思いませんでした。
普通このような署名は特務人事管理局が署名しているはずなのですが。
「背景 ユエ様。この度は急な申し出をごめんなさい。私のもとに来てもらいたいのです。その為あなたは私の懐の一つである『GMS』に来てもらいたいのです。今はどうして移動して欲しいかは言いませんがとにかく入ってもらわなければ話すことはできません。ですからそこで決闘です。決闘で勝った方の部署に移動させるという案を考えつきました。よってこの決闘は王族の認可したものとして行ってください。かしこ。」
・・・・・・・・・はぁ。昔はこんな好戦的な王女様ではなかったはずなのですが時が経てば変わるものですね。時間の流れはすごいです。
「それはともかくとして私は任務を達成します。手伝ってくれます?」
「依頼を既に受けているのか。そうしないと決闘ができないというなら手伝ってやる。それで依頼主と依頼主の家は?」
無言で燃えているお家をさします。彼女の後ろのお家です。今まで私が武器を整備していた村長の家です。今も盛大に燃え盛っています。もうどうしようもありません。合掌。
「んっ・・・・・・。誰です、かぁっ!」
トントンと後ろから叩かれたので後ろに振り向くと鬼のような形相をした村長がいました。数十分で家が焼き落ちていればそれは怒るでしょう。
何かいいわけはできないかと考えたところ先程まで話していた彼女が目にとまる。
その彼女に向けて指をさして言いました。
「コイツが犯人です。」
「なにぃ!」
彼女は驚いていました。当然です。いきなり犯人にされたのですから。
とは言っても犯人は彼です。家を燃やしたのは彼です。だから彼が犯人。
私の責任はコンマ一ミリも存在しません。彼が全て悪いのです。
彼女は弁解の余地なく連れ去られました。これで彼女から解放されました。
任務のあと出会う気はしますが今は解放されたことを喜びましょう。
「それでは準備できたとみていいですか。そもそも我が家も燃えてしまいましたし準備のしようもないですが。住民たちの視線のある中準備できますか?」
本当にその通りでした。この住民たちが見ている状態でなにか用意することはできません。今の状態はすごく恥ずかしいです。私は以外にも人に囲まれるのは嫌いなのです。
なので「用意できました。」と答えるしかありませんでした。
さて森に向かった私たちはというと・・・・・・。
「はぐれました。どこに行ったのでしょうか皆さん。」
普通に考えても絶賛迷子中になった私がいました。
どうして迷子になったかって?私も知らぬ間に迷子になっていたのです。
森に入って美味しそうな果物に目を奪われているうちにいなくなってしまったのです。
えっ?自業自得だって?冗談を言うのもよしてください神の声さん。
まぁいいでしょう。過去より今です。前を向いて進みましょう。
しかし本当にすごいところですね。足の踏み場がほとんどありません。気持悪い生物もいます。そして毒沼、腐った木。私の言葉で表すならこの森は呪いの森というのにふさわしいでしょう。あてもなく西の方向だと思う方向へと向かいました。さらに迷いました。
さらに気持ち悪い生物たちも多くなってきました。もう帰りたいですけど帰り道がわかりません。常に常備しているコンパスもやくたたずだということは言わずもがな。
帰り道がわからないというのは少々不安になります。まぁそれは最初から迷子になった時点で言えることですけどね。さらに奥地に進んでいくとあら不思議洞窟を発見しました。
もしかしたらキングコングの住処かもしれません。
「お邪魔します・・・・・・ごめんなさい出直してきます。」
本気でキングコングなる魔獣がこの洞窟にいました。殺されるかと思いました。
体は大きく巨大ですべてを粉々に粉砕しそうなあの筋肉。組み伏せていたのは男・・・・・・。あれ?どうしてキングコングが男を襲っているのですか。というより男の子がキングコングにさらわれていたのですね。びっくりです。
キングコングは特性上女という性別はなく男という性別しか存在しな・・・・・・。
嗚呼・・・・・・そういうことですか。どうして一匹で行動しているかなんとなくわかってしまいました。つまりこのキングコングは同性愛者だったのです。気持が悪いったらありやしない低脳なおさるというわけです。別に同性愛は構いませんよ?むしろ腐女子から推奨されます。ですが誘拐して男を襲うキングコングは絵的にちょっとくるものがあります。
実際に見るとかなり気持ち悪いですよ、これは。さてあの子をどう助けましょうか。
やはり真正面から突入?でも今の私では真正面から戦うことは負け確定。
四大さんたちがいれば普通の方法でなんとかなったのですが仕方ないですね。
「特性の麻酔弾はあと何発残っていたかな・・・・・・これだけは自動的にセットができないのが玉に瑕です。」
しかしこの麻酔弾の効果はディアボロス級です。小さな魔獣なら一発あれば一日寝てしまうほど強力です。主に捕獲用として使っています。オリジナルなので流通はしていませんので私自身が作るしかありません。もう一度興味本位で洞窟の中を見てみました。
地獄絵図でした。もう男の子の服を脱がしに行ってやがりますあのクソゴリラ。
このままでは男の子の貞操が大ピンチです。急いで助けねば。
私は麻酔弾を銃の姿をしたオーバルアークに込めて狙いを定めました。
その行為に気づいたキングコングは怒りこちらに向かってきました。
好都合です。当たる範囲に来たら一気にぶち込みます。キングコングは走ってきます。射程距離まであと少し。1、2、3・・・・・・そこだ。バンと銃型オーバルアークは麻酔弾を打ち出します。ですが敵もさるもの。こちらの動きを予見して避けやがりました。
時間にしてあと数秒であのゴリラは私のもとに到達します。
本当に仕方がない。奥の手を使いますか。
「私に宿る4の属性よ。古の誓約のもとに今ここに開放せり。」
キングコングは私に拳を殴りつけてきました。しかし拳は届くことなく途中で静止している。私がやった。やってしまった。人の見られる場所で。かつて私が一度これを使ったがために多くの人に狙われ逃げ回った。それは私にとって確かにあった出来事でした。私を所有したものは世界を取れるとまで言われていたのも懐かしいです。私はその力を今解き放ちあの子を助けましょう。一つの命を消し飛ばそうとも。
「ごるるるるる・・・・・!」
「どうやら私に届かないのが不思議のようですね。私も久しぶりですから力の手加減はこれっぽっちもできませんから覚悟してください。」
手を振るうと大嵐が吹き荒れたように風がキングコングを吹き飛ばす。その際に男の子をこちらの腕の中に引き寄せました。この圧倒的力。これが私の狙われていた理由なのはさっき説明したとおり。これがその力である四大の力。
昔々に四大の契約者になった私は強大な力を得てしまった。力を行使した私は致命傷を受けなければ死ぬ可能性もない無限の肉体を持った。今回はどんなことになるかわからないけど。けれども約束は、仕事はきっちりする。それが私という存在する理由だから。
「と、大丈夫ですか?怪我はないですか?」
もう面倒くさいのでキングコングでなくゴリラで。ゴリラを吹っ飛ばした際引き寄せた男の子に声をかけました。男の子は震えていました。当たり前です。今の今まで怖い思いをしていたのですから。しかし今この状況で優先する事項は名前も知らないこの子を守ることでその他のことは問題ではありません。
「がぁぁぁ。お前。その力は大精霊の力? お前何者だ。」
「おや、そういえば風の精霊の力で動物の声が聞こえるのでしたね。」
魔獣にも効果があるとはとてもびっくりです。彼らもまた生物ということでしょう。
四大の一角。シルフの特殊な力の一つ。風の旋律『動物達の囁き』という能力。
これは動物の言葉を風に伝えて耳に届かせる能力。あくまで風が運んでいるので本当かどうかはわかりません。ですが大抵は当たっているようです。
この情報は百年前にシルフから得たものでもあります。
「ええそうです、ご想像通り風の力ですよ。四大精霊の一人シルフの。」
「やはりそうか。人間の身でありながらその力を行使する意味がわかるだろう。」
「わかりますよ。また人間から離れていくのを感じます。違いますね。私はすでに人間から逸脱した存在になっているのです。」
私は一度力を使って百年間姿形が変わっていない。それは体の時間停止を意味していました。衰えることのない肉体。近しい人はどんどん死にました。
ありえないほどの絶望。それが力を使った代償でした。でもあの時のことは別に後悔していません。むしろ英雄になりました。戦争から世界を救った英雄。
望んだ結果ではなかったですが私の行いが世界は救ったのは間違いがないのです。
「それをわかっていながらどうしてその力を使う。その子を助けるためだけに使うには代償が高すぎるだろう。人間の体に戻れなくなるぞ。」
「それでもいいですよ・・・・・・この子を助けるためならね。」
「だが俺もその子が好きなんだ。お前に負けるわけにはいかない。」
本当に変態ゴリラにしてはカッコイイセリフを吐きますね。
ホモでなければ話し合っていたと思います。
獣とは話し合っても無駄だとは思いますがね。
「無駄な命を摘むつもりはありません。もうこの子に手を出さないと誓うのなら私は干渉しません。他にも以来があれば別ですが。」
「断る。言っただろう。その子を好きになったと。」
やはり話し合っても無駄なようですね。穏便には済ませられそうにありません。
「ねぇお姉ちゃん。その人のことどうするの?」
人?この毛むくじゃらのどこが人として見られるのか不思議です。
「殺しますよ。人に害なす存在は滅殺します。」
「ダメ!」と男の子は私の手元から離れてゴリラの目の前で仁王立ちしました。
怖い思いしたのに何故このゴリラを庇うのか不思議でありません。
「どうしてそのゴリラを庇うのですか?」
「僕は難しいことはわからない。けどこの人を殺すことは許せない!」
・・・・・・面倒くさいことになってきました。この子の言いたいことは理解しています。このホモゴリラを殺すなと言いたいのです。ですがここで殺さなければ何度でもこの子を誘拐するでしょう。負の連鎖が続くだけです。
「それにお父さんもお母さんも遊んでくれない。でもこの人は遊んでくれた。だからいい人。殺さないでお姉さん。」
やっと理解できました。この子は親に甘えたかったのです。
たとえこのゴリラがホモで、ショタで、強姦魔であったとしてもこの子の寂しさを払拭したのは紛れもない真実ということですか。
「あなたの言い分はわかりました。それであなたはどうしたいのですか?」
「この子を満足させたいだけだ。さっきはちょっと理性が・・・・・・。」
申し訳なさそうに頭をポリポリとゴリラは掻きました。罪悪感はあったようなので少しは安心しました。あの無駄に敵意を向いていたのが嘘のようです
さてゴリラどうしましょうか。根本的解決方法はどんなものでしょうか。
少し考えてある考えが浮かびました。
「ちょっと聞きたいんですけどあなたはその子を満足させたいだけですよね?」
「その通りだが・・・・・・何か妙案でもあるのか?」
「随分小難しい言葉を知っていますね。君はこの人と遊びたいだけですよね。」
コクンと男の子が頷きます。やっぱり解決方法は一つしかありません。
このゴリラをこれ以上傷つけず。この子の欲求を満たすには。
「ではこうしましょう。あなたたちは友達になればいいのです。」
ゴリラのもうお友達ですが何かという表情にムカつきました。襲うとしたくせに。
とはいえ言葉が足りなかったようで男の子の方もそのような表情でした。
「・・・・・・ご両親にあなたと友達になったことを報告すればいいということです。」
なるほどというポーズをゴリラがとりました。どうやら理解ができたようです。
説得した私はゴリラの背に乗っかって村の方へ。村への帰り道がわからなかったので渡りに船です。それと何か忘れている気がしますが気のせいでしょう。
村へ付いた私たちとゴリラ一匹はこの二人が友達になったことを報告しました。
最初は驚いていましたが徐々に受け入れられ最後には男の子の家でゴリラを飼うことになり村長にもお礼を言われて大満足。成果も体が少し変化しただけの大戦果です。
男の子の家族に報酬を貰い陽気な感じで帰るとサンタさんが待っていました。出迎えは頼んでいないのですがどうしたのでしょうか。わからないので聞いてみることにしました。
「例のブツは手に入れてきたのか?」
するとどうでしょう。今まで私が忘れていたものを思い出しました。
この胸ポケットに入れていたメモ。サンタさんが賢者の石を作るために必要な材料が記されたメモ。すっかり忘れていました。
今から行くにも五百円も払って外に出ることは叶いません。
そうなるならばどうするか私には選択肢が一つしかありません。
「すいませんでした!」
全力で土下座してなんとか許しを貰ったのでした。
次回「ユエと姫様」