過去の約束を守るために。
過去、私は全てを失った。住む場所も友達も生きる気力さえも。
何度死にたくなったかはわからない。
それこそ正確に数え切れなくなるくらいに死にたくなったはずだ。
それでもここに私は生きていた。
昔、彼女とした約束があったから。
今がその贖罪の時なのでしょうかねぇ。
手当はもうすでに終わっている。
この門を使うのは今しかできないでしょうね。
私は門に近づいていく。
もう得体の知れない精霊門などではない。
マクスウェルに記憶を分けてもらった時に次元門だと認識した。
その利用方法も通るための条件も。
「その次元門には何かあるの?」
「これは元の世界に戻ることができる門です。」
「元の世界に戻れる・・・・・・ラクリマに戻れるってこと。」
「その通り。ですが条件が厳しいのです。」
記憶にある条件を話す。一人でもいいが必ず条件を満たさなければならないこと。
そして二つの血も涙もない条件のことを。
次元を超えるということはそれほどの対価が必要だと安易に言っているのかもしれない。
「その条件は残念ながら私には満たされない。というかやる気すらないわね。」
「ですよね。」
その言葉は本心なのでしょう。
それが私には眩しくてたまりません。
「まさかユエ。本気でこの門を開こうというのか?」
「本気も本気。大真面目に言っていますよ。」
「考え直したほうがいい。お前の大切なものを失うことになる。」
「それでも構いません。私を悲しむことのできる人間はもうこの世に存在しないのです。」
「それは違う。全然違うだろう。なぜそんなに簡単に悲しむことができないなんて。」
「私は私を信じてこの生き方を貫いてきた。誰よりも頼りにされる存在でなく親友に傍にいて欲しいと思われる存在に。」
「だったら・・・・・・私たちは親友じゃないの。」
「親友ですよ。でも・・・・・・あちらの世界にいる親友たちを見過ごせない。わかっていますか? 私は人を、仲間を、親友を守るために命までかける人間ですよ。」
「その生き方は間違っている。あなたの悲しんだ人はそれを望んだと思うの。」
「思っていないでしょうね。」
この私に死ぬまで笑顔を絶やさず一生懸命生きてと言ってくれた親友ならば。
「なら!」
「止めることはできませんよ。」
「クソッ・・・・・・体が重い。」
マクスウェルの記憶にあったのは何も次元門の記憶だけではない。
記憶はうん千年前の記憶から今日までの記憶が渡されていた。
その知識は膨大でまさに何でも知っているというのが過言ではない状態。
そう・・・・・・身体石化魔法の仕様方法だって受け渡された。
「喋ることができる程度には力を弱めていますのでお好きに喋っていてください。」
つかつかと次元門の前に行くと次元門から声が発せられた。
一度起動してしまえば契約を終えるまで逃げられない。
これは父さんの母さんを犠牲にしてしまった副産物。
いわゆる過去最大の汚点とも言える類のもの。
それはマニュアルに書いておらず間違って使われないことを祈っていた。
『貴様は一体何を捧げる?』
答えは既に決まっている。私の一番大切な思い出たち。
最後に振り向いた。
皆絶望しきった顔をしている。
私はこんな顔をさせたくてこの門に向かっていないのもわかって欲しい。
だからこそ今私にとって最後の言葉を言おう。
「私は今から全てを失うかもしれない。でも私とまた友達になって欲しい。」
「そんな最後の挨拶みたいなこと言わないで。」
「シルフもそこにいるのでしょう。よろしくお願いします。」
『・・・・・・・さよならは言わないよ。』
「ありがとう。」
『早くするといい。』
次元門の催促が始まった。
運悪くせっかちな方に当たってしまったらしい。
「また会える時を楽しみにします・・・・・・次元門よ。私の捧げるものは!」
次回『新たな約束』




