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銃剣魔弾の精霊王  作者: 白羽彼方
三章「精霊王」
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クレアの父

 深夜に突入しないまでも良い子の眠る時間。

 普通はそう認識されているハズの時間。

(死ねる。マジで死ねる。)

 地獄のような書類整理から解放された私は机に突っ伏していた。

 少々姫の身分としてはしたなく感じるかもしれないが本当に疲れきっていた。

 体が思うように動かない。頭が全く働かない。

 食料さえあればずっと仕事していても平気?

 はっ! そんなの過労死で死なない人馬鹿ないいわけですよ。

「姫様、紅茶を持ってきました。・・・・・・大分お疲れ気味のようですね。」

「そう見えるのなら目が尋常なくいいわよ。つうか変われ。」

「・・・・・・姫様。お姫様の口調ではないですよ。」

「少しくらいいいじゃない。お姫様業務代わりにやって。」

「話聞いていない上にものすごくだらけているところ申し訳がないのですがきちんとしなさい。お父上がもうすぐ来ますよ。」

「そう。」と私以上にぐうたらの父に説教をされたくないその一心でシャキッとする。

 この私の特技をお城の中では『やれば出来る子病』と囁かれている。

 大変不名誉な称号ですけどなぜだか心に響く。

そもそも王家の血筋とはいえどもお父様は一庶民であることには違いない。

私がいるからといって気軽に来てはいけない存在のはずである。

「どうして私との謁見を断らせないのかしら?」

「一応姫様の生みの親でございますからね。大臣いわく顔パスだそうです。」

「疲れきっている時に見たい顔でないのは確かなのに。」

 罰当たりなのは分かっている。親不孝もんだという発言なのも理解している。

 それでも言わずにはいられない。精神的決着。どうしても一度そう呟きたかった。

 実際問題父はものすごい人。本当の意味ですごい人であることは間違いない。

 川に魚が泳いでいれば素手で捕まえに行ったりとか自分にとって面倒くさいことは人に全力で頼んだりとか年中サンタの服着ていたりとか。

「ユエも災難よね。私の父に最低賃金をはるかに下回る値段で働かされるなんて。」

「はい。それにしても姫様があのサンタリア様から生まれたとは思えない容姿ですね。」

「あんな父と一緒にしないでくれる。」

 実は父はユエを雇っていることを私に連絡しなかった。

 したのかもしれないが曖昧に「新人が入ったぞ。」としか言っていない。

 このように今までユエを隠してきたのだから私的には最高ランクの許せない人物。

「姫様。そろそろ口調を元に戻してください。お父上がお見えになりますよ。」

 別に父親の前で猫かぶっても仕方ないと思わなくもないけどフレアが焦っているのでしょうがない。そこまで言われたらしょうがない。

 身だしなみを即座に整える。うん。これでどこから見てもお嬢様だ。

 真っ白なドレス。姫冠。そして何より営業スマイルが完璧。

「これで平気でしょう?」とフレアに問いかけると呆れていた。

 どうして初めからしないのかとため息をついている。

 でもそれが私スタイル! プライベートでグダグダできなくて何の意味がある。

「まぁいいです。さっさとお父様に会いましょう。応接室へ向かいます。」

 父『サンタリア・グレンセン』はクレデリカの治安自治団体の責任者。

 最果てとは言えかなりの権限を持ち合わせている。

 よく『だれだ? この腐れやろうに権限を与えたのは!』とは思っています。(今も思っている。)ちなみに権限を与えたのは前王である。『アーサー・ブレイド』という男。

 信頼はされていたみたいだけど今の本人を見るとそれが嘘のように感じてしまう。

 応接室に入るとそこが俺の席だと言わんばかりに奥の席でくつろいでいた。

「やっと来たか。待ちくたびれたぞ。綺麗な格好をしてきたな。」

「そう思うなら仕事を積極的に手伝ってください。あと秋の収穫祭の件であなたの地区だけ出店舖届けが提出されてないのですけど早く出してください。あとお世辞は結構です。」

 父は少し考え込んだ。考え込む時は大抵相手を不快に指せる言葉が出てくる。

「そんな面倒くさいものもあったなぁ。すまん、全く手につけていない。」

「お・と・う・さ・ま。」

 あまりに自信満々に手をつけてないと言われてカチンと来てしまいました。

 しかし私はすぐに冷静さを取り戻す。先ほど説明していた通りのことだから。

 だけどこの人のことだから影でやっている可能性は否めない。それと人に嘘をつくことが専売特許なのですからこの人に口で勝てる人物はそうはいない。

「だが今日はそんなことを話に来たんじゃない。」

「それも大事なことですけど。━━━━何かあったのですか?」

「ユエがいなくなったんだって?」

「なぜそれを!」

 驚いてしまった。ユエがいなくなったことなど口外されていない。

 それなのにこの人は知っていた。どこから聞いたかは知らない。

 でもこの人はユエが消えたことを知っている。

「ビンゴか・・・・・・。あいつまた巻き込まれていそうだな。」

 まさかカマをかけられていた? さすが口先だけの男だと再び認識した。

 心を読まれているようで気持ちが悪い。

「しかも精霊絡み。いやもっとやばいものに巻き込まれている可能性が大いにあるな。」

「もっとやばいもの? この世界にやばいものと言ったら円安現象でしょうか?」

「それもやばいが規模が違う。以前やつは世界の危機を救っている。」

「世界の危機? そのような規模の危機はありましたか?」

「あったんだ。紅炎龍の暴走という天災規模の世界危機が。」

 紅炎龍。ありとあらゆる龍を滑る創聖龍の第三柱。

 圧倒的力を持ち人間程度ならば一日にしてこの地ごと燃やし尽くすと伝承されている。

 また紅炎龍は生贄を10年ごとに求めていたらしい。

 それが16年前ほどにその風習が止まったとの報告があり世界中が歓喜した。

「紅炎龍がいる村の名は炎土岐村。暴走の原因は生娘を生贄に出さなかったせいだが理由あってあいつがその村に滞在していて無傷で収めたらしい。」

第三柱を無傷で止めるとかなんて無茶なことできたのが素晴らしい・・・・・・・・。

でもそれが危うい。いつもそう一歩間違えば自分の命の危険があるというのにユエは首を突っ込む。人を助けるために首を突っ込む。

だからこそ住民の支持も得ている。しかしとても危ういのだ。

「お前の言いたいことはわかる。」

「危うい。とても危ういと思います。」

「だがあいつは自分の大切な人のためになら何にでも投げ出す。それがたとえ命でも、な。」

 言いたいことはわかる。彼女は自分以外のために何もかも失いかねない。

 絶対私の命の危機が迫れば命に変えても守り通すだろう。

「クレア・・・・・・あいつの年齢をお前は知っているか?」

「いえ、年齢は聞いていないので身体的特徴から20代前後かと・・・・・・。」

「20代? はっ、あいつはとうの昔に50を超えている。」

 そんな馬鹿なと私は思った。でも記憶にあるユエと全く変わっていなかったところを見ると年齢はかなり年をいっているのかもしれない。

 全く同い年とまでいかずとも年齢はそこまで高くないと思っていた。

 少なくとも16年前はユエが紅炎龍ということは私より年上であるでしょう。

「それならば何歳だと?」

「昔あいつに履歴書を書いてもらったんだが初めに読んだときは嘘かと思っていたぜ。なんせ年齢のところには何も記入されず備考欄に『100年以上の歳月を生き抜いてきた。』と書かれていたんだからな。」

「それだけなら嘘である可能性があるでしょう?」

「そうだ。最初は嘘だと俺も疑っていなかった。だがあいつの存在自体異常だった。」

「異常? あの人のどこが異常なのですか?」

「話を聞いていなかったのか? 紅炎龍を、無傷でプロミネンスを沈黙させた人物だ。」

 それを聞いた瞬間。私の言っていることが間違いだと気づいた。

 紅炎龍を無傷で黙らせることができる人物が只者であるはずがない。

 いくらなんでも常軌を逸している。まさに神名を持つにふさわしい人物。

 それがユエ・エリトーゼ。通称『マクスウェル』。

「納得したところで本題だ。お前はこの化物を救えると思うか?」

「そ、それは━━━━。」

 どもってしまった。どもるということは自信がないということ。

 私にはまだユエを救う覚悟が足りていないのか。

「中途半端な気持ちならやつを救おうと思うな。もし覚悟あるのなら今すぐ助けに行ってやれ。お前の命の恩人はそれほどの人物だ。」

 言いたかったことを伝え終えたのか父は立ち上がった。

帰る意思をフレアに伝える颯爽と帰っていく。何を伝えたかったかはよくわかっている。

 ここから先ユエを助けようと思うのならありとあらゆるものを失う覚悟が必要だと。

「ふ・・・・・ふ、ははははっ!」

「どっかのサイエンティストの笑い方してどうしたのですか?」

「笑いたくもなるわよ。覚悟なんてとっくの昔にできているのだから。」

 あの助けられた時から私にとって大きな存在。

 そう絶体絶命の命を救ってもらったあの時からそんなものはできている。

 命の代価って本当に高い。

「フレア! 洞窟に行く準備は出来ているでしょうね。」

「はい、準備は既に整っています。いつでも洞窟に向かうことが可能です。」

「では明朝7時。洞窟へと向かいましょう。」

 絶対なる決意とともに私は始まりの洞窟に向かうことを決意していた



次回『決勝戦前夜』

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