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銃剣魔弾の精霊王  作者: 白羽彼方
三章「精霊王」
19/28

ジャッジ 一日目

大して変わらないけど風邪気味でした

今日は学校行事『ジャッジ』が行われる日です。

 参加していない人たちは頑張ってというだけの素晴らしい日。

 その素晴らしい日に『ジャッジ』出場選手の私は教室で絶賛待機中です。

 緊張に頭が麻痺しているのか剣鬼は教室をのたうちまわっていました。

「あうぅううう。今更だけど準備は大丈夫か?」

 不安そうにそのような言葉を発する剣鬼。

 先生の話によるといつもジャッジ参加選手はよくこのような状態によく陥るそうです。

 どのような状況なのか見て分からない人のために説明すると緊張が極限まで達し何もかも忘れてしまった状態に近い。

 もっと簡単に言うと「ちょ、おま、落ち着けって」という感じ。

「この子、いつまでもその状態じゃ私たちの足を引っ張りかねないわね。」

「何を言っている・・・・・・私は猛烈に落ち着いている。」

「落ち着いてない子はいつもそう言いますよ。ではもう一度作戦を見直しましょう。」

「一日目のルールは一日前に報告された通りのままよ。ルールの確認から行いましょう。」

 まず基本的なルール。三人一組で戦い二人戦闘不能になったら負けというルール。

一日目のルール。各個人頭に風船をくくりつけ破壊されたらそこで戦闘不能。

もちろん破壊されていなくても戦闘続行不可能とみなされれば失格になる。

二日目のルールは問答無用のデスマッチ。動けなくなったら負けというルール。

あの学園長が好みそうなルールです。

またバトルロワイヤルだと通告がされている。

バトルロワイヤルは公平性を保つためにクラスごとに最初に戦うらしい。

「以上ですか。私たちの相手はCクラスの上級生。勝ち目はあるのですか?」

「私たちはCクラス一年。二年生はCクラスでもBクラスに近い実力を持ち三年生はBクラス並みの力を持つの。でもあくまでCクラス。まだ一年でも勝ち目はあります。」

「それと何が起きるのかわからないのが戦場だ。む、武者震いが止まらない。」

 本当に大丈夫なんでしょうね。

 恐怖を力に変える人もいるという噂も聞いたことはありますが・・・・・・ありえそうです。

『ピンポンパンポン。30分後BエリアでCクラスの試合を始め・・・・・・おいそこのねずみ俺のカツサンド食うな。俺の昼飯ぃぃぃぃ!』

 ブツンという音ともに放送が切れる。

 この学校はある意味凄い人がいっぱいのようです(私のことは除外している)。

「いつも通りの放送委員長です。気にしないでBエリアに向かいましょう。」

 ━━━━あれがいつも通り?

あのようなことが日常茶飯事なのなら本人は大変でしょうに。

向かったBエリアは森よりもジャングルと言ったほうがいいと思うほど自然が豊か。

ここで戦うのは私的には嫌すぎます。

「精神的に嫌だと思うけど大丈夫。これは立体ホログラム映像。さわれるけど。」

 どう見ても本物にしか見えないこの木々たちがホログラム。

 ジ・アースは一体どこまで科学という技能を極めているのでしょうか?

 もしかしたら超時空移動装置も作られている可能性があるかもしれません。

 出場選手にはチームごとに指定の場所が決まっている。

私たちはちょうど立体ホログラムエリアの中心のようです。

頭に風船をくくりつけながら中心に到着。開始二分前です。

「それにしても中心とは随分と高評価の配置ですね。」

「どうして中心は高評価の配置なのですか?」

 答えはわかりきっていましたがとりあえず聞いてみました。

「エリアの中心はまさに合流地点。配置は四つあるけど三つは内側でなく外側。唯一内側にいる私たちは袋の鼠というわけ。」

 予想通り。他の奴らからすると中心は要注意グループとなり得たわけです。

 これは相当狙われると考えていいでしょう。

「でも倒しがいはある。この配置で勝ったら格好良いだろう。」

 その通りではあるのですが集中的に狙われる立場にいるのは困ります。

 私は一回戦ぐらいはまったりしたいのです。

 バラバラバラ。いきなりそのような音が頭上から聞こえてくる。

 何かと頭上を見上げてみればプロ目らをつけた機械的何かが浮かんでいた。

 これもまた小説だけでなら名前を見たことがありました。

 ヘリコプター。そのように呼ばれる乗り物の形をしている気がします。

 そのヘリには小型の黒い物体が取り付けてありました。

 その黒い物体から先ほどの放送委員長の声が聞こえてきました。

『そろそろCクラスの『ジャッジ』を開始するぜ。位置についたかぁ?』

「ついに始まるみたいですね。」

『心の準備? そんなもんはとっくに決めているだろうな。これより本日第4試合。Cクラスの『ジャッジ』を開始する。レディー・・・・・・ゴー!』

「━━━━ユエ、開始早々敵のお出ましのようです。」

 ガサッという音と共に大きな人ほどあるくまのぬいぐるみが現れました。

 リストにぬいぐるみを操る人が出てくると書いてありましたが本当に来るとは。

 ぬいぐるみを操る距離に制限はなし。ぬいぐるみの目玉の部分から目をリンクすることもできるみたいです。ですがぬいぐるみ視点でしか相手が見られないのと使うとき直前に一度触れたぬいぐるみでなければならないことと術者は動けないとのことです。

 弱点は明確ですがアドがとてつもない。

 遠隔操作なので最初は誰にも姿を見せる必要がない。

 このぬいぐるみがいる限り術者も動けないという点だけ除けば偵察にはもってこいです。

「━━━━。」

 ぬいぐるみはいきなり自らの右拳を使い凄い速さで殴りかかってきました。

 随分好戦的な人形です。操っている人が好戦的とも言えますが。

 拳は私に向かってきている。拳は普通の人形のようになっているかと思いきや。

(トゲメリケンサック仕様ですか。当たったら血まみれじゃすみません。)

 そう鉄の刺がついた拳となっている。ありえない。

 ぬいぐるみ自体の強度を上げるくらいでないとありえはしない。

 ぬいぐるみにそんなもの付けたとしたら普通はもがれてしまいます。

「逃げ━━━━。」

 考えている間にもうすぐ接触してしまいそうになっていました。

 ですが思考の早い私にとって時間は膨大にあると言っていい。

 思考速度とそれに追いつく体。これはホモゴリラの時使った力の反動でもある。

 生まれつき体質ではなく精霊と契約しあの力を使った時にその身体能力に目覚めた。

 しかも最近その力。『古の盟約』は生まれた時には持っていたという。

 つまりそれ以前に契約が行われていた。私の生まれる前には行われていたということ。

 この超常的力は体を蝕み徐々に人間より離れていってしまう。

 とりあえず今はこの拳を避ける方が先ですね。

「━━━━なきゃ・・・・・・えっ?」

 私の動きは人間が出来うる動きをはるかに凌駕していた。

 力が強くなっているのでしょうか?

 この世界に来たばかりの頃はあまり強くなかったのに。

 最小限の動きでぬいぐるみの拳を避けその腕を掴み大空に放り投げた。

 筋肉強化。私は体にマナを巡らせ強化する魔法を使い遠くへ飛ばしたのです。

「人形にしては重かったですよ。大気圏外まで飛ばすことができませんでした。」

「大気圏外とかスケールデカすぎて何も言えないし笑えないわ。」

「それよりもあの攻撃を寸前で避けたことに驚くのが普通だ。」

「はいはい、規格外は私の力だけではないようですよ。」

 私は一歩後ろに下がる。私のいた位置に降り注ぐように力の雨が降り注いた。

敵さんは私の力を肉体強化だと思ったらしく遠距離主体できそうですね。

 厄介なことになりました。攻撃の方向は上方から。量からして左右同時に二人ずつ仕掛けられていると考えて間違いはないでしょう。

しかしこれだけでは敵の居場所を推測する材料が限りなくない。

「今の攻撃はどこから来たのかわかりますか?」

 わからないだろうとは思いましたが一応聞くと「あぶり出すのならいい方法があるよ」と剣鬼がとんでもない行動を起こしました。

 自分の手をピタッと地面につける。瞬間火が衝撃波のように四方八方に広がっていく。

 普通なら自らの危険や仲間の危険を考慮しなければいけない危険な思考。

 それでもこの状況においてこの方法は画期的アイデアと言える。

 でも・・・・・・立体ホログラムの木々とはいえ躊躇なく燃やすとは。

「火力がないから一気に燃やすことはできないがこれくらいなら余裕。」

 剣鬼はドヤッとした顔で氷零さんの方を見ながら言う。

「そうでしょうね。無差別の攻撃ならばあなたはBクラスの力を持っているのですから。」

氷零さんの方は頭の上に怒りマークが浮かべているような顔をしながら私たちの周りに火が来ないように氷のシールドを貼っている。

さすが炎と氷。険悪感と相性がハンパじゃありません。

「さて・・・・・・そろそろ出てくる頃でしょうか。」

 木々はもうほとんど燃え盛りホログラム化していた。

 つまりプログラムとして木々がなかったことになっている。

 この状態では少なからず時間で姿が発見されると考えられる上に。それならば先手必勝とかかってくることが想像できるのはたやすいことだ。

 落ち着いている人がいたのなら別の方法をとってくるでしょうけど。

 今やれることは作戦をカンパしこちら側がどうすれば有利になるか考えること。

 ピンとその方法が思い浮かぶ。

「すいません。一つ提案があるのですけど。」


「━━━━どこへ行った?」

「遠くへ入っていないと思う。エリアの中心が一年の始まり地点。動けばすぐにわかるよ。」

「そうだな。出火地点は中心だ、やつらがいたという確かな証拠はある。」

 しめしめ・・・・・・集まってきたようですね。

「アレ? あんたらも中心見に来たの?」

「考えることは皆同じか・・・・・・しかも目標にはカスリ傷さえついていないっぽい。」

「それはマジですか。私のぬいぐるみは避けられても君の術なら完璧だと思ったのに。」

「それだけ敵の感覚は鋭い。もしくは常軌を逸しています。」

「それはわかっていたことだろう。あの学園長が認めた人物なのだから。」

「化物・・・・・・ってこと?」

 化物とは失敬な。私はこんなに可愛いというのに。

「私は寮の前に風を纏って降りてきたのを見ていた。どれくらい桁違いかはわかる。」

「正直学園長も異常だけど編入生も異常とは・・・・・・Cクラスに入っているのが驚きだ。」

「一説によると編入試験時精霊術を使わなかったせいだそうです。」

「それはすごいな。編入試験は難しいだけではなく強さで魔獣が選ばれる。」

「素手で倒すとか・・・・・・どこの戦士や武闘家って感じね。」

 私は戦士でも武闘家でもバトルマスターでもありません。

 おっとここまでは作戦通りにことが進んでいるからといって油断はいけない。

 ツッコミを入れている暇はないのです。

(現在私の真上です。ユエ。お願いします。)とアイコンタクトされました。

 あらかじめ決めておいたアイコンタクトを受けた私は作戦を実行する。

「なにこれ。」という声がそこら中に地上で響き渡る。

 私のいる場所とアクションを考えれば当然であるといえます。

「ふぅ・・・・・・人数から察するに全員捕まったみたいですね。」

「お前たち・・・・・・今地面から出てこなかったか?」

「わかりきったことを聞くのですか?」

 そう私たちが潜んでいた場所は地中。彼女たちは土の檻によって拘束されている。

 これも力の応用の一つである。ノームの地の力を私風にアレンジ。

 物理攻撃。防御主体の土属性に特殊効果『束縛』を加えただけですが効果は絶大の一言。

 ご覧のとおり相手は全員捕まってしまっているわけですね。

「さて、風船を割らせてもらいますね。こちらも久城院さんが怖いので。」

「学園長の名前を出されても負けるものか?」

 彼は光の矢のようなものを手で作り出す。

 なるほど。あれが私を攻撃しようとしたものの正体ですか。

 結構な技術力が必要の形をまぁこうも易易と。

「ホーミング・ブライト。」

 彼の光の矢が射出され私の風船めがけ飛んでくる。

 最後の悪あがきといったところでしょう。

「二人共地面に伏せておいてください。撃墜します。」

「光の魔法の特性は調和。相対する力を無効化にする。」

特性まで織り込み済みですか。彼の言った通りの光の特性は『調和』。

ありとあらゆる魔法を無効化する光の力。

しかし無効化できるのは・・・・・・その力より同一かそれ以下の力のみです。

即座に風の防御壁を展開し光の魔法を無効化・・・・・・いえ、精霊術の無効化ですね。

光の術は壁にぶち当たり消失。何事もなかったように私たちは立っている。

「本当にふざけるなよ。噂通りじゃないか!」

「勝てるわけないよ・・・・・・。」

 皆私の行動と力に戦う気力を忘れている。

 こんなの私が望んでいることではない。相手を戦意喪失に追い込むことが目的ではない。

 せっかくの学園行事やる気を出してもらわねばなるまいて。

「では一つ昔話をしましょうか。」

「昔話だと? こんな時に何を話すっていうんだよ。」

 光の精霊術を使った男の言葉を無視して私は過去を話す。

「約百年前。とある女子大生がいました。その女性は体が衰えることができなかった。女子大生は周囲の人たちは死んでいく様を見続けていたのです。何度も死のうかと彼女は思っていたの。でも彼女は死ぬという選択を選ばなかった。なぜだかわかる?」

「わからない。わかるわけがないだろう。」

 頭を抱えてうなっている。彼らは本当にわかっていないのかもしれません。

 私だって自分のことでなければそのように返答したでしょう。

 それくらい現実味のないことだと私自身も思っています。

「友達との約束があったから。どんなに絶望したって諦めないという約束。」

「ようは・・・・・・お前は俺たちに『諦めるな』と言いたいわけだな。」

「諦めたらそこで試合終了と言う言葉もあるでしょう。それくらい諦めるとは愚かなことなのです。たとえ力の差があったとしても立ち向かうべき。とはいえ時には逃げる勇気も必要ですけどね。それでも!」

 ビシッと指先を相手に向けてこうはっきりと答える。

 人生の師匠。私の初めて親友が残した最初で最後のあの言葉を。

「人生に退路はない。でも立ち向かわなきゃ何も変わらない。大事なものを守りたいのなら強くなれ。この三つの約束事を覚えている限り私は大切なものを絶対に守り続ける。私の周りにいる人たちに起きる理不尽な運命を変え続ける。」

「さっきから聞いていれば・・・・・・お前のはただの自己満足によっている。偽善だ。」

 そう、ようは私の自己満足。私が怪我したところで誰も悲しまないなんて言わない。

 でも私は知っている。自分が死ぬよりも辛いこと。

 昔の友との約束を守れないという恐怖に比べれば些細なこと。

「私は偽善で構わない。この信念を貫けるならば。」

 この私が今まで生きてきた一番の理由なのですから。

「戯言もそこまでいけば強さになるか。いいぜ、今度はお前に負けねぇ。完膚無く叩き潰してやる。」

「先輩方は『ジャッジ』にもう参加できませんがね。」

「そこは空気読めよな。お前ら準備はいいか?」

 パァンと風船が複数割れる音がホログラムの中で響き渡る。

 彼の命令を無言で全員が執行したのだ。自らの風船を割るという行為を。

 こうしてCクラス同士の試合は終わったのでした。



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