世界図書館のラプラス
行間3 世界図書館のラプラス
確かに明日と言っていましたがこれはちょっとと思う時間。
皆が明日に備えようと爆睡している時間帯。そんな時間に訪問すればほら。
「この深夜になにか御用ですか?」
ムスッとしながら顔のドワーフの管理人が姫様を見るのは当然でしょう。
そう、ムスッとした顔になるのは至極当然で当たり前である。
私もこの時間帯。激しく眠い。姫様の警護でなければ放り投げています。
耐え切らずあくびをしてしまう。それを見ていた姫様は呆れていた。
「眠いとしても欠伸をする際には口を塞ぎなさい。レディーがはしたない。」
「すいません。ですが要件を彼らに伝えるのが先では?」
「そうですね。では依頼をさせていただきます。」
ラクリマにある精霊界以外の転移装置のことを調べてもらうこと。
世界の支配者なるモノをついでに探してほしいことの二つ。
「なるほど。なかなかに面白い案件です。精霊界へ繋ぐ門ではなく別世界に向かうための外門を探したいわけですか。英知の悪魔『ラプラス』ならばわかるかもしれません。」
ラプラス。英知の悪魔と呼ばれる彼女の姿を見た人はいない。これは答えることになんでも答えてしまうがために作られた神名という説もある。
そう思えばユエ・エリトーゼも同様な神名を付けられている。『マクスウェル』。彼女の名にもつ言葉の意味は絶大なる力を持っていることに由来すされる。
だが神名を持っているのに自由奔放だ。もしくは彼女は与えられた名をそのまま受け入れたとでもいうのか。そもそも神名だと気づいていないのか。
「ラプラス様との面会が許可されました。今後はこんな時間に起こさないで欲しいとも。」
「わかりました。気をつけます。行くわよ。」
考えている間に英知の悪魔の面会が許可されていた。
先ほど話していた管理士の資格を持つ『管理者』のあと追う。
歩いていると周りはある意味絶景。本がひしめきまるで全ての著書が集まっているのではと思うほどの本の量。これほどまでにここに足を踏み入れるとここまで世界が違う。
「着きました。ここから先はあなた方で進めてください。」
そびえ立つのは人二人で開ける必要がある巨大な扉。
この先に英知を司る悪魔ラプラスがいる。
「ありがとう。ここまでの道案内ご苦労さま。」
「ご武運を・・・・・・。」とお辞儀をして走り去っていった。
クレア姫様と私は巨大な扉を開く。さほど重くはなかったのかすんなり開いたので先へと進む。中は暗い。何か罠でもあるのではないかと思うほどに。
十歩ほど進んだところで先ほど開けた扉が閉まった。
「クレア姫様!」
「慌てるものではありません。ラプラスさんのお出ましのようですし。」
ボッと近くの燭台が青い炎により灯される。
燭台は複数あったのか順番に灯っていく。まるで何かを誘うように。
カツンカツンと歩く音がする。ラクリマでは今はあまり見かけない下駄の音。
この威圧感。ただものではないこの気配の持ち主は間違いない。
「あなたがラプラスさんですね。英知の悪魔と称される。」
遠くからみるだけで威厳のある角。ボサボサの髪。高級そうな振袖。そして小さい体のシルエット? アレ? 振袖まではわかる。けどなぜに小さいシルエットなのか。
「今馬鹿にしたやつ出てこい。我が成敗してやろう。」
シルエットは突然消え代わりに目の前に小学生くらいの和服を着た少女が立っていた。
その姿は凛々しくなぜだか尊敬の念を表したくなる存在感。ボサボサの緑髪。龍のような角。分不相応のような振袖を着ている少女。先ほどのシルエットの人物と似ている。
一瞬でこんな場所まで移動したのだ。
「英知の塊たる我にはこれぐらい出来て当然。我は幾年の時を生けるれっきとした神仏であるぞ。頭が高い小娘!」
「心が読まれた! 心を読むほどの力を持っているのか!」
「伊達に神名を持っているわけではおらぬ。ユエ・マクスウェルも同様であろう。」
「友人として一時期共に生活していましたが彼女は超常的力を使っていませんでした。」
「当たり前だな。神名を持つ人物が己の持つ最強の力を見せるはずもない。しかもその記憶を彼女はあまり覚えていないと推測するが。」
その通り。彼女とは初めて会ったわけではない。小さい頃の姫様と楽しそうに遊んでいたところを見かけて仲間にしてもらった程度。
あの時から12年。姿も変わり覚えていないのも無理はない。
しかも私はしつこくいつも勧誘していたのですから。
「なるほど。事情があるのか。では貴様らの聞きたいことを教えてもらおうか。」
「全てを見透かされているようで気持ち悪いけど頼もしい。」
「くっくっく。最高の褒め言葉だぞ、現代の姫君。してもう一度聞くが要件は?」
笑いながら姫様相手に臆することもなくそういう。さすが神名の持ち主だ。
姫様のさらっとでる毒舌を笑い飛ばしている。
「精霊門ではない門の場所。そしてその発動方法。世界の支配者になるという男について。」
「一気に出してきよったの。いいだろう。全て答えてやる。精霊門以外の門なら心当たりがある。この国の地下だ。より正確に言えば始まりの洞窟の奥。」
今は立ち入り禁止になっているあの遺跡の奥に精霊門ではない別の門が存在しているのか。確かに可能性はあった。誰も立ち入ってはいけない場所。
マクスウェル様が住んでいるとかなんとかで入ったら怒られると噂されている。
「精霊門でない外門。次元門がそこにある。マクスウェルから聞いた話だが。」
「ユエに聞いたってことですか?」
「おっと。そういえばマクスウェルは二人おったな。今はいなくなったはずの過去のマクスウェルとでも言えばいいのか?」
「それは精霊マクスウェルのことですか? ラクリマが生みだしたとされる祖の精霊の。」
「そう、その精霊マクスウェルが次元門を作った。だが使えないと嘆いていたはずだ。」
「使えないならどうにも・・・・・・」
英知のラプラスはどこからともなく扇子を取り出しバッと広げ口元に近づける。
その動作は私たちの注目を集めるのには最適でラプラスの方を向いてしまっていた。
「それは昔の話。約2899年前程度の時間前の話だ。」
その頃は人間が誕生しておらず精霊と太古の生物だけが生きていたはず。
ラプラスの話が本当ならばラプラスは2800年以上前から生きている計算になる。
このような姿を保っていられるはずがない。
「ほう、我はラプラス長本人のはずがないということか。残念だが我はこれでも精霊だぞ。どれだけの歳月が経とうとこの姿が変わることはない。」
「精霊だって。ならなぜ体が透けていない。」
普通精霊なら透けているはずなのにラプラスは透けていない。
はっきり言って普通の人間と同じ肉付きをしているように見える。
「それは一般的な精霊だけであろう。大精霊クラスなら実体を見せるなどどうということはない。それとこの体は老化せぬしいつでも透けることができる。そもそも透けているのが見えるのもやつらが姿を見せようとしない限り見えないはずだ。それとも我が特別なだけなのか? かっかっか!」
大笑いしているが確かに特別と言わざるをおえない。
これまで実体化できる精霊を人生の中で4人しかいなかった。
ユエの使役する四大の精霊たち。4属性を司る精霊たちだ。
学会で一度だけ見させてもらったことがあるだけだがまるで力の結晶。
人間の姿ではあるが人間でないもの。
彼らもラクリマで顕現するときは人間の姿をとっていた。
ラプラスもそうだ。この姿は架空のもの本当の姿では・・・・・・。
「残念ながら本来の姿も和装ロリじゃ期待はずれだろ。それよりも話に戻す。次元門の使い方だが見当もつかん。精霊マクスウェルが人知れず秘密裏に作ったのだからな。」
「ではそれは自分たちで調べろと?」
「いんや。マクスウェルは意外と几帳面で物を作る際マニュアルを作る。門の近くに起動法があるはずだ。それを探せば万事解決だ。最後にあの方の手がかりだが。」
何か知っているかのような口ぶりこれは期待できそうな気が・・・・・・。
「それだけは知らん。それこそ貴様らで探せ。」
ついに丸投げされてしまった。だがさすがは英知の悪魔。
私たちの知らないことを散々と平然に語っていたのだから。
「サービスしすぎたな。無償で我がここまでやったのだ。成果を出せ。」
「ありがとうございます。大変勉強になりました。失礼します。」と私たちが帰ろうとすると「待て」と呼び止められる。もうこの場からさり眠りたいのに。
「もう少しサービスしよう。出血大サービスの手見上げだ、受け取れ。」
ラプラスの手からビデオのテープのようなものが現れ私の腕に巻きつく。
「それはマクスウェルの住処である始まりの洞窟の地図だ。指先が触れると発動する。」
試しに触れてみる。私たちの目の前に強大な地図が現れ右上に一階と書いてある。
右に指を当ててみると地図が変動。地下一階にマップが出る。なるほど立体地図。
しまう時も同じらしく腕に軽く触ると地図は再び腕に巻き付いた。
「私の記憶にある地図だ。あまり変わっていないだろうからな。」
「重ね重ねありがとうございます。お礼は・・・・・・求めていませんね。」
「お礼などされても困る。我は礼を糧とする精霊ではないからな。」
仮にも知識だけは貪欲に採取するラプラスですから仕方のないことでしょう。
私たちはラプラスのいる図書館から外に出ました。
もう朝の時間帯。これは徹夜ですかね。今回ばかりは寝たかったです。
その思い虚しく一週間業務に追われることになった。
次回「何度目かの急展開」




