喧嘩と魔獣と編入試験
朝6時半。今日は登校に試験を受けるので学校には7時半ついていなければなりません。
またしても昨日と違う部屋で寝てしまいました。もう旅行気分です。
髪の毛をセット。実桜学園の制服に身を包んでいました。
まだ学院生ではないのですが制服着て試験を受けろとのことです。
「それにしても床の匂いが好きな匂いではありません。」
暖かい布団で寝られたのはいいのですがこの『畳』の匂いが好きではありません。
よく寝られたのが不思議なくらいです。
「朝です。ユエ様起きてください・・・・・・ってもう起きていましたか。」
ふと「誰?」と声を出してしまう。少女はメイド服を見に包んでいる。
可愛らしくお人形みたいな姿をしている。着せ替え人形みたいです。
「マジックドールのミステルと申します。実桜学園1年生のユエ様ですよね。」
私は首を縦に振り肯定をしました。私だとわかると一度部屋を退出しました。
退出して数分後。ティーポットを持って彼女は戻ってきました。
ミステルはカップに紅茶を華麗に入れて私に差し出します。
いい香りです。部屋にお茶の香りに支配されてしまえばいいのにと思うほどに。
彼女を見ると飲んでくださいと目を光らせているので口に含んでみました。
ちょうどいい温度です。体が温まりますし目が覚めていきます。
飲んだことのない味ですが普通に美味しかったのも高評価。
気になったのでこのお茶は何で作っているのかを聞いてみることにしました。
「アップルティーですよ。知らないのですか?」
アップルティー? アップルティーとはなんというものなのでしょうか?
こうやって飲めるのですから何かしらの葉か食べ物。もしくは特別な何かであるのは間違いありません。といらの葉とかなら想像はつくのですが。
「アップルティーはりんごから抽出したエキスのような風味を出した紅茶のことです。」
そうですか聞きなれない名前ですが紅茶ならわかります。
私たちの世界の一般出売られているグルミルと同じ種類です。
グルミルとはレリーフの葉っぱを使った安価の紅茶です。
「そうですか・・・・・・ずずぅ。ミステルは紅茶を入れるのがうまいのですね。」
それにしてもこんなに澄んだ色をしていて綺麗なお茶を私は見たことがありません。
「そんなに褒められて恐縮ですが別にすごいことではありませんよ。ティーパックです。」
「ティーパック・・・・・・・・・それはどんなパックですか?」
先程のアップルティーと関係しているのでしょうが私には想像がつきません。
「ティーパックもご存知ないのですね。いいですか。ティーパックは簡単にお茶や紅茶、コーヒーなどを作ることができるものなのです。」
それはすごい。素直にそう思いました。
この世界の人間は素晴らしいものを開発したようですね。
「もしかしてコーヒーの方が良かったですか?」
「いえ、こちらのほうが好きですよ。」
コーヒーの単語はラクリマでも使われていたのでどんなものなのかはわかります。
ものすごく苦くてカフェインがたくさん入っている泥水みたいな液体でしょう。
いつもよくあんなものよく飲めるといつも感じています。
「それでどうしてミステルは私にお茶を入れてくれたのですか?」
「ああ、ユエ様は編入生だから知らないのですね。説明ならお任せをば。」
床に手をつけたかと思うとその手につけた場所から大きなホワイトボードらしきものが生え出てきました。どうやってこんなものを・・・・・・。
「メイド七つ道具の一つ。簡易設置型ホワイトボードです。たためて収納できて重宝します。さて実桜学園のことをお教えしますね。」
「よろしくお願いします。」と布団の横にあるなんか高そうな机の上にカップを置く。
その机はカップとものすごく似合いません。ミスマッチです。
「まず一番大事なところです。実桜学園はマクスウェルが現れた頃から存在する学校です。昔は実桜分校と呼ばれていたみたいですね。創立されたのはいつなのか知りませんけど。」
マクスウェルの登場した頃からの学校・・・・・・一番初めの魔法学校というわけですか。
しかもマクスウェルの失踪は約千年前の話のはず。創立もその頃でしょう。
それだけ長く続いているのならそれなりの伝統もあるはずです。
「それでですね。規則はあまり固くありません。むしろ不健全オールオッケーです。」
まぁあんなのが学園長ですしね。
「それと絶対守らなくては簡単な規則があるのでこれだけは覚えておいてください。」
用意されていたホワイトボードにマジックでミステルが文字を書いていきました。
意外にもきれいな字でまるで有名な人が書いたような達筆でした。
無論私にはなんて書いてあるかはさっぱりですが。
「『大事なこと・ものはしっかり自分で守り抜きなさい。』それが学園長から伝えられている最重要の規則です。というかこれ以外の規則はありません。あとは公序良俗くらいです。」
公序良俗が普通一番の重要事項ではないのですかと心の中でツッコミます。
同時にあの学園長だから仕方ないとも・・・・・・。
二日目の朝で私にここまで感じさせるとはある意味すごい人です。
クレア姫様よりひどいかも・・・・・・おっと今頃噂でくしゃみしているかもしれません。
「学校の敷地面積は1200Asです。単位Asは分かりますよね?」
「いえ、まったくもって知りませんけど面積という話ならば理解できました。」
面積ならば元学園時代に散々習いましたから。
「ユエ様は本当に面白い人です。そういえば名前も読み方的に横文字なんてマクスウェル様に似せているのでしょうか?」
「それはないですね。」と私は即答しました。
私にとっては自分で横文字がなんたるかは理解していません。
ですがマクスウェルと似せているわけではないと断言できます。
ラクリマでは深山や久城院さんのような名前人はいないのですから。
「では続きですね・・・・・・と言ってもあとは自分の足で知ったほうがいいと思います。ユエ様そろそろ時間です。学園に向かう準備をしてください。」
「これで全てではないのですか?」
教科書も全て放り込んだのですけど。それでも足りていないと?
「ユエ様はまずこの編入書類を書いてください。」
「今からですか!」
随分唐突な出来事でした。どうして昨日のうちに渡してくれなかったのですか発案者。
できるだけ急いで編入書類を綺麗に記入していく。昨日散々この世界の言葉を覚えさせられましからね。もうほとんど読めるようになりましたし書けるようになりました。
もう死ぬかと思いました。あんなスパルタもう二度どうけたくありません。
「書けました。これでいいですか?」
「確認します・・・・・・。大丈夫そうですね。これで編入試験を受けられますよ。」
OKサインをもらったところで早速学校へと向かいます。彼女が言うには7時。
もうそろそろ私の登校する時間です。カバンを持って廊下に出る。
実は此花寮のあるこの場所は既に学園内とのことで歩いて五分の場所に実桜学園があるみたいです。寮の外に出ると私はどこにあるのかと探すため見渡しました。
学校はすぐに見つかりましたがこれは何ということでしょう。
「・・・・・・どこのお城ですか。」
そうお城。見事すぎるほどに完璧なまでにお城です。
言うならば童話に伝わるシンデレラの城。お城にはしっかりと実桜学園と書いてありました。もしこれが立て直した結果だとして立て直すにも限度があるでしょうに。
歩いて学園(お城)に向かった私の道の途中変な生き物に遭遇しました。
小さくて丸くて体毛がモフモフしていてとても抱き心地の良さそうな生物。
未知の生物との遭遇・・・・・・どう対処したらいいのでしょうか?
「むー。むー。」
鳴き声までおかしいです。この世に唸るように鳴く生物がいるとは思えませんでした。
ふと私はこの未知の生物の体毛に隠れていた足にリボンがついているのを発見。
この未知の生物は誰かのペットの可能性も出てきました。
誰のペットかわかりませんがとりあえず拾っていきましょう。
私は奇妙珍妙の生物を抱きかかえました。予想通りとても抱き心地が良いです。
なごみます。このまま持っていたいですね。モフモフしながら歩いていく。
心なしですが奇妙珍妙奇想天外生物は気持ちやすそうでした。
学校前まで行くと大人しそうな紫色の髪の長い少女がたっていました。
彼女の目は私が持っているこの珍妙生物を見ているようです。
「この子がどうかしましたか?」
とりあえず視線が気になったので聞いてみました。
「あのー・・・・・・その子を離してくれませんか?」
髪の紫の少女は珍妙生物に指を指してそう言いました。もしかしてこの珍妙生物の飼い主なのでしょうか? 確かに飼い主っぽいですが。震えていますし。
「この子の飼い主ですか?」
珍妙生物を目の前に突き出すと髪の紫の少女は後ずさりました。
足もガクガクさせ青ざめていますし体調が悪いのでしょうか。
もう一度彼女に珍妙生物を突き出すとさらに青ざめ後ずさります。
どうしてでしょう。飼い主ならばまず後ずさりするということはないでしょう。
だとしたら他の可能性は? この生き物を入れてはいけないと忠告でもしている?
そういえばこんな時間になぜ人がいるのでしょうか?まだ朝の7時あたりですよ。
「いえ違います・・・・・・規則なので動物は学園内に入れられないのです。」
はて、規則はほとんどないとミステルは言っていましたがこの方の意見だと動物を入れてはいけないとのことです。どちらが本当のことでしょうか?
少女の後ろからスレンダー美人が現れました。身長おおきいです。
「大丈夫ですよ。生徒会長は犬アレルギーですから。」
犬? これが犬に見えるのですか? 私の知るものとかなり造形が違うのですが!
犬っていうのはこう人懐っこい感じでこんな耳があって・・・・・・・・・。
「考え込んでいるところ失礼ですがその生物は紛れもなく犬という魔獣です。」
犬って魔獣化するとこんな感じになるのですか。
生物的に普通に退化している気がします。でも触り心地はやはりいいです。
「まぁそんなことはどうでもいいですね。私は試験管の実桜学園生徒会副会長椎名月です。」
「私は実桜学園の生徒会長の星月実穂乃・・・・・・です。とにかくその犬を離してください。」
犬と呼ばれた珍妙生物を私から解放させました。
そのままどっか行くのかと思いきや私の足に体をスリスリし始めました。
なんか微妙に可愛くなってきました。
「随分なつかれていますねユエ・エリトーゼさん。」
どうして私の名前をと言いたかったですが試験管なら知っていてもおかしくないです。
むしろ知らないとしたらちゃんちゃらおかしいですね。
そして犬(仮)は未だに私の足元から離れようとしません。
でもこのままでは試験を受けられません。
とりあえず犬型魔獣なら話がわかるかもしれないので犬(仮)に話しかけてみます。
「犬さん・・・・・・どうか離れてください。学校が終わればまたここで会えると思いますから。」
「むーむー。」と犬(仮)私から離れて草むらに入いりもう姿はなくなりました。
本当に言葉が通じましたよ。結構利口ですね珍妙生物。
「では犬が離れたところで試験を開始します。まずは筆記試験です。」
生徒会長と副会長に試験会場に案内されました。
場所的には三階の左端の場所そこで試験が行われました。
筆記試験は三つの科目『数学』『英語』『精霊術学』の試験です。
数学に関しては問題なく点数が取れると思います。英語は良くて半分位。
精霊魔術は基本的に同じなので単語さえ気を付ければ大丈夫でしょう。
試験が終わり今度は実技試験。運動能力などを測定し終えるとゴリラのような人が現れました。ゴリラとしては身長が短く毛むくじゃらな人です。
ゴリラが副会長になにか耳打ちしました。
耳打ちが終わると生徒会長と副会長がこっち無向かってきます。
「これで試験終わりってことですか?」
「残念ながら違います。この次の試験の結果でクラスなどが変わりますから。」
「もうすぐ8時なのにまだ試験をするのですか?」
「はい。今先ほど準備が整ったとの報告がありましたので案内します。」
どんな試験なのか全く理解できぬままお二人についていきました。
案内された場所は学園の地下。まさか学園に地下があるとは驚いています。
雰囲気的には精霊界で見たあの闘技場と似ています。
「どうぞここから先はお一人でお進みください。」
言われた通りにひとりで歩いていく。本当にこの場所は闘技場そっくり。
いえ、闘技場そのものです。もしかしてと振向くともう遅く鉄語寿司が下ろされてしまいました。無駄な努力だと思っているのに鉄格子に近づいて鉄格子を外そうとします。
そのような無駄なことをしていると闘技場の中央の上天井から生徒会長と副会長が出現。
「なんとなく予想ができますがこれはどういうことですか?」
「今日は特別に捕まえてきました合成魔獣キメラと戦ってもらいます。」
キメラといえばラクリマではかなり危険な魔獣に認定されています。
しっぽの蛇の目は石化能力を持ち爪には強い毒。牙はあらゆるものを噛み砕く。
そう伝えられています。でも実在していない幻想生物だと記述されていました。
反対側の鉄格子が開くのを感じてそちらに向くとそこには・・・・・・ペンギンがいた。
無駄に凛々しいペンギンさんが!
「可愛いでしょう・・・・・・私の自信作です。」
生徒会長さんの作品ですか。ならば可愛い外見なのも納得です。
ですがすごくそのペンギンさんが睨んできています。
「しかしそのペンギン。作り主以外にはとても凶暴なので注意してください。」
「私の作ったものは全部地下行きにされちゃう・・・・・・どうしてでしょうか?」
「凶暴な上に処分に困るからですよ。」
副会長さんが作り主の前でぶっちゃけましたよ。
「そうですか・・・・・・仕方ないですね。」
その作り主まで納得しちゃった。いいの。それでいいの作り主。
「はっ!」何かが迫ってくる気配がしました。
咄嗟にイナバウアーするとペンギンさんが目の前を通り過ぎました。
ペンギンさんは鉄格子にぶつかりましたが嘴がガキンといっただけでした。
あの勢いでぶつかりながらそれだけですむなんてまさにペンギンダーツ。
あんなのが当たったらひとたまりもありません。
「避けました。私の作った魔獣の中で一二位を争うくらいに早いのに・・・・・・。」
「会長は魔獣を作るのはもうプロレベルです。」
淡々と言っていないでくださいよ。普通に命の危機ですよ。
ああ・・・・・・あのペンギンさんの目。やってやるぜと目が語っています。
戦うしかありません。ペンギンさんには悪いですけどこちらも命がかかっています。
「ぺー!」
技名『ペンギンダーツ』をこちらに向かってペンギンさんは放ちます。
ものすごい速さです。目をそらせば一瞬でやられかねません。
それでもチャンスはこの瞬間にしか存在していないのです。
「ここです!」
私はペンギンさんが間合いに入ったその刹那に首をキャッチしました。
私到達まであと数センチ。うまくいってよかったです。
「さてこのペンギンさん。どのように料理してやりましょうか。」
「ぺぇ!?」
ペンギンさんが暴れだしました。このペンギンもまた知能が高いみたいです。
「さて命を奪われそうになった私としては食物連鎖を実行したいわけですが・・・・・・。」
「私の可愛い子・・・・・・殺さないで。」
「とのことです。とりあえず鉄格子の向こうに投げておいてください。」
「そうですか」と言われたことを実践。今までの鬱憤を晴らすがごとく思いっきりペンギンさんを出てきた鉄格子の向こうへと投げつけました。
ペンギンさん・・・・・・さようなら。もう二度度会いたくありません。
「文句なしの合格です。会長もそれでいいですか。」
「私の可愛い子を殺さなかったことも評価します・・・・・・編入試験合格です。」
やっと試験が終わりましたか・・・・・・。
「それで終わった試験結果ですがあなたのクラスはCクラスになりました。」
「そうですか・・・・・・。」
編入は無事出来たようで何よりです。闘技場を出て職員室へと案内され・・・・・・。
「アンニョンハセヨ。」
・・・・・・・・・なんですかこの不思議な物体は? 浮いていますよ。
明らかに人間ではないものに廊下でエンカウントしてしまいました。
なんですか丸く丸い丸すぎる青色の目と口のついた物体はぁ。
「あっ、フロウ先生こんにちは。」
「先生!?」
この丸っこい球体の物体が・・・・・・先生!
「おう。わては1年Cクラスのフロウちゅうもんだ。よろしくな嬢ちゃん。」
この人が・・・・・・。いえ人ではないですけどこの物体が私の先生?
ラクリマよりも先生がおかしいです。どうやって黒板に文字を書くのでしょうか?
「どうしたんや? 嬢ちゃんも挨拶せなぁアカンで。」
「わ、私はユエ・エリトーゼです。Cクラスに転入することになりました。」
「ユエちゃん。ええ名前やないか。」
ユエちゃんと呼ばれるのは久しぶりですね。高校時代を思い出します。
特に親しい友達は一人だけのさみしい青春時代でしたけど。
「では案内するでぇ。付いてきい。」
プカプカと目線あたりに浮かんだまま球体が進んでいく・・・・・・。
その後を付いて行く私・・・・・・絵面がとてもシュールです。
フロウ先生の案内によりCクラスにたどり着いた。
教室前まで来ると流石に緊張してきました。
約百年ぶりの学園生活です。楽しむことにしましょう。
「わてが合図したら入ってきいや。」
フロウ先生が体から出したアームで教室に入っていきました・・・・・・。
それにしてもあんなふうに中にての代わりが入っているとは。
「それじゃぁ編入生や。この時期に編入してくるのは異例やけどこれから仲間になるからよろしゅうなぁ。ほな、入ってええでぇ。」
フロウ先生に呼ばれた。きっとこれが合図なのでしょう。
ガラッと教室の扉を開けて教室に入ると大多数に奇異の目で見られました。
残り少数は特に反応はなく寝ている人すらいます。
「とにかく挨拶や。しっかりと第一印象を刻み込んどきぃ。」
丸い球体が私に向かっていう光景はシュールの極みでした。
おっとそれよりも挨拶をしなくてはこの時間が引き伸ばされてしまいます。
「ユエ・エリトーゼです。このCクラスに通うことになりました。よろしくお願いします。」
編入生が来た割にはあまりにも静か過ぎました。不気味です。
「簡単な挨拶結構。そんじゃ空いている席。あの一番後ろの席に座りや。」
6列ある中の右から3つ目の一番後ろの席が空いていた。
あれが私の席みたいです。クラスの注目を浴びながら席に向かったのですが足に何かが引っかかりました。こけそうでしたがなんとか持ち直し引っかけられたかもしれない方へ向くとそこには笑った男子生徒が座っていました。
「早く席に座れ。このクラスの新人だろうが。」
感じが悪い。そのような言葉が似合う男性でした。
外見も悪そうなガキンチョの典型的ファッションで制服を着こなし頭はパッツン。
まさに前時代的な不良像です。椅子を引き私の席に座るとベチョッとする不快感に襲われます。この感触は考える必要もなくガムであると推測できました。
「普通に引っかかったな。お前バカだろう。」
「人をいきなりバカ扱いですか・・・・・・。それならばこんな幼稚ないたずらしか考えられないあなたは幼稚園児以下の脳細胞の持ち主ですね。」
「んだと。━━━━ちょっと表にでろ。Cクラスのルールを教えてやる。」
不良のような男は何か私の前に投げ飛ばしました。
見たところプラカードのようなものですが特別な意味があるに違いありません。
これを拾えば彼との間になにか起こることは目に見えています。
ですがここまでやられては私も少々お仕置きがしたくなってきているのです。
無作為にプラカードのようなものを拾い上げました。『決闘』と書いてある。
「そのカードを拾ったからには決闘を了承したって事だ。今からグラウンドに行くぞ。」
喧嘩を買った私はグランドへ移動。またやじうまも大量についてきました。
グランドは普通の学校と同じぐらいで400mトラックがあるだけのものでした。
「決闘は先生の審判のもとに行わられるで。相手がギブアップ。もしくは戦闘が続行できない場合はジャッジすることで負けになるちゅうことや。」
「着替えなくていいのか? 女子はスカートだから視線が気になるだろう。」
軽い挑発を不良の男はしてきましたが私は無視をします。
こんなのを買い続けていたらキリがないですし。
「無視か・・・・・・その余裕がどこまで続くか楽しみだ。」
「それでは決闘開始。レェーディー・・・・・・ゴーや!」
「先手必勝。死ねこら。」
まるで電光石火と呼ばんばかりに走ってくる。ですがこの程度今朝戦ったペンギンさんと比べると断然遅い。直前まで引きつけて左へ避ける。
彼の体は横を通り抜ける。ですが突如熱気が後ろの方からしてきました。
気になって振り向くと右手を私に向けその右手の先には力を集めていたのです。
力は赤い色を帯びており渦が巻いているようなイメージです。
「おらぁ・・・・・・俺の最大の精霊術だ。くたばれ!」
その渦からビーム砲のようなものが打ち出される。
意外にも遅いのでこれも避けることは簡単・・・・・・ではない。このままではやじうまにあたってしまいます。何の罪のない一般人に当たるのです。
「気づいたようだな。お前の後ろには観客がひしめいている。動けばそいつらに当たるぞ。」
「ふぅ。まったく悪知恵はもっと健全なところで使ってください。」
「まだ余裕ぶっこいているとは。もう直前だぞ。」
当たる直前腕を前に出す。斜めに風のバリアを貼る。
この動きによって上方にレーザーが逸れますので痛くはない。
「この程度の力・・・・・・私の前では論外ですよ。」
正確には私に当たる直前で障壁がはられているのです。
力の応用。風の力を使った簡易的なバリア。少し程度の障壁、これで十分なのです。
私は腕を縦に振り向くとレーザーはどこか遠くへと飛んで行きました。
弾いた精霊術を見て不良はボーとしていました。
「どうしました? この程度で終わりですか?」
「くそぉ!」と叫びながら不良の彼は私に殴りかかってきます。
ですが先ほどと同じように障壁を作り彼の拳を阻む。
彼は苦笑いをして苦虫を潰したような目で私を見ていました。
「お前・・・・・・どうしてCクラスに入ってきた。その力はCクラスで扱えるものじゃない。」
「この程度のことは朝飯前です。私の周りも全員できましたよ。」
「ふざけるな・・・・・・精霊術学の応用はAクラス以上のやつにしか使えないだろうが。お前の周りが化け物すぎなんだ。」
この程度の基本技術が応用ならばいつも使っているのは上級応用以上になるでしょう。
それくらいにこの程度の技術は難しくないのですがこの世界では違ったみたいです。
「お前……編入試験の時どんな奴と戦った。」
「編入試験の内容を知っていたのですね。戦ったのは生徒会長の作ったペンギンです。」
「生徒会長の作ったペンギンだと。そいつはBクラス以上の精霊術が使えるやつが学校のランクアップ試験で戦うものだ。入試や編入の試験に出てくるレベルじゃない。」
「そうなのですか? 私はアレを素手で勝ってしまったのですが。」
ワッと今まで無言で試合を見ていた人たちが騒ぎ始めました。
ふと球体の先生を見てみると目が点になっています。先生はプカプカ浮きながらこちらに近寄ってきました。なにかまずいことでも言ってしまったのでしょうか。
「ユエちゃんこっちきいや。ちょっと可及的速やかに緊急的に会議や。」
「ここで話せないことなのですか?」
「そうや。ユエちゃんはこの学校の力の関係を壊した人物というレッテルを貼られることになってしまうこと必死や。」
力の関係? 私は別にあの場ではあれが正解だと思ったのですが間違いだった。
そんなはずはない。あのペンギンさんを殺す必要はなかった。
あくまで試験だったのですから殺さなくてもいいのです。
先生の後を追いかけた私はある場所にたどり着いた。
サイエンスの最先端と言わんばかりの場所。ウィンウィン常に何かが稼働している音がします。これがこの世界の技術というわけですか。
「さて、わてを作った人物のお出ましや。敬意を払うといいで。」
先生がふわふわと影で見えない人物に近づく。
暗くて何も見ないと思った矢先に部屋獣が明かりに満たされる。
思わず『目が・・・・・・目がぁぁぁぁ!』というリアクションをとってしまいました。
なんという恐ろしいトラップ。視界が見えないのは本当に恐ろしい。
やがて視界が安定しある人物がいることに気づく。
どこか大人びた女性。白衣を着てタバコを更かしている。
つまり・・・・・・非喫煙者の敵。私は咄嗟に構えをとってしまう。
「タバコは知っているようだね。まぁそれはそうだ。タバコはあっちにもあったかね。」
「あっちとはなんのことですか?」
当然しらけてみる。ラクリマという世界のことを知るはずがないと。
でも違いました。タバコを近くの灰皿でもみ消し目の前の女はこう伝えました。
「ユエ・エリトーゼ。私はラクリマの人間だ・・・・・・といっても言葉信じないだろね。」
もちろん最初は信じられませんでした。この高い技術力はラクリマに存在し得ないからです。ですがこの後証拠を見せつけられてしまいます。
「精霊・・・・・・この世界ではマクスウェル以外の精霊は基本的姿を保つことができない。しかも本来の力を出しきれずにいる。この私の精霊『オルフェ』でさえもね。」
彼女はパチンと指を鳴らしたその時大きな揺れが・・・・・・。
それとほぼ同時に綺麗な半透明の人が現れた。いやこれは精霊。この世界に存在することのない精霊。これは決定的の証拠でした。
何故か精霊のオルフェは私の方を向いていました。
「なにか御用ですか?」
どうして見られているのか耐え切れず質問してしまいます。
キョドキョドした態度を取りながらもオルフェは私に向き直ります
『私の名前はオルフェ。地震の精霊です、よろしくお願いします。』
ぺこりと精霊オルフェはお辞儀する。
「いい子だろう。私にはもったいないくらいに。」
「そうですね。精霊オルフェの使い手『シエル・ミケア』さん。」
「私ってそんな有名? それとここでの私の名前は『伊井智』で通っているから。」
智さんは懐からタバコを取り出し口に含み火をつける。
「おっとごめん。君はタバコが嫌いのようだね。」
私に睨みつけられた智さんは急いでタバコの火を消した。
「仕方ない。ニコチンが切れる前にさっさと話すとしよう。ここに読んだのは他でもない君が強い力の持ち主とラクリマの住人だと判断してのお願いだ。」
頭を深々と下げられてしまいます。やめて! 私はそのような高尚な人間ではないです。
私は頭を伊井に頭を上げてもらいました。
敬意を表せないだろうと呟いていましたが私には一切関係はありませんし。
「それでお願いはなんなのですか?」
「うむ、ラクリマ人であればCクラスなんて一人で三学年潰せる。巨大な精霊魔法を使わずに。そこで1年Cクラスの代表として『ジャッジ』に参加してもらいたい。」
ジャッジ? 昨日勉強した時にも学園長が言っていた言葉ですね。
確かルール付きのゲームという話でしたが。
「今回のジャッジのルールは純粋なパワーゲームになっている。まず一つ目に今回の『ジャッジ』はクラスの三人を選出。まず同クラス同士で争う。二つ目に敗北条件は各クラス三人がパーティーを組み先に二人倒された方の負けというルールだ。」
ここで力の階級の差が出てくるというわけですか。学園長の久城院さんはこう言っていた。CクラスはBクラスには一人相手に三人ぶつけなければ勝てない。BクラスはAクラスに一人につき六人ぶつけなければならない。そしてAクラスはSクラスに・・・・・・。
「Sクラス相手にはまず今のメンバーでは三秒で全滅するだろう。だが君は違う。CクラスでありながらB級の魔獣を素手で倒せる君の実力ならば。」
「私の言葉を鵜呑みにするなんて愚かしい行為ですよ。」
たとえ事実であっても裏の取れていないことは信じられないもの。
わからない限り相手が本当のこと言っているとは限らないのだから。
「残念だが裏は取れている。試験の内容が闘技場用のカメラに映っていてね。いやはやあの生徒会長のペンギンをこうもたやすく捕獲するとは恐れ入ったよ。」
伊井の手によって私の試験を受けた時の画像が表示されている。
この世界にこのようなものあるとは知りませんでした。
画面いっぱいに映し出されまるで再現するように画面の中の私が動く。
「これは? ・・・・・・この世界の国の科学の粋なのは理解できるけど。」
「ホログラムで映像を映し出す機械。ジ・アースにはこの程度の機会たくさんある。」
ジ・アースというのはこの世界の名前でしょうか。
ラクリマ同様安直なネーミングセンスではありますがいいとは思います。
それにしてもすごいものがいっぱいです。何に使われるのかは知りませんけど。
「それで・・・・・・あなたをジャッジに推薦したいのだけど。」
「私はいいですけどクラスの皆の意見はどうなるのですか?」
「そこらへんは大丈夫よ。この子を通してまた逢いましょう。」
そう言うと球体の先生が浮かび上がった。
この球体は伊井の作品で伊井は私の姿をこの球体を通して私を見ていたと。
まったく本当にとんでも科学ですね。
先生(球体)の後を追い教室へと戻ると一時限目を過ぎて二限目が開始していた。
「初日から遅刻とはいい度胸ですね。」
ムチを持った教師は私に怒りの視線を向けていた。説教を一分間され私はバケツを持って廊下に立つという古典的な罰を受けたのでした。
次回「ユエの秘密」




