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銃剣魔弾の精霊王  作者: 白羽彼方
二章 異世界
10/28

もうどうにでもしてください

 ここが今後あなたの住まう家です。そう言われた瞬間拒否したい気持ちになりました。

 『此花女子寮』。学校の寮。しかも高校生の通う学校『実桜学園』という学園の寮らしいです。『此花女子寮』や『実桜学園』というのは久城院さんが口で言ってくれたので言葉に出来ました。私は大卒なのでもう必要な知識は溜め込んだはずなのですけど。

「この国の文字はどうなっているのですか・・・・・・さっぱり読めません。」

「言語は正常なのにジパング語が読めないと? これまた興味深い。」

 もしかして余計なことを私は口にしてしまったのでしょうか?

 彼女に連れられ私の自室となる部屋に案内されました。

「そういえば何故にここに来ることになったのでしょうか?」

「言っていなかったわね。あなたは明日『実桜学園』の二学年に編入するのよ。」

 はて幻聴が聞こえてきましたよ。今『明日編入』と聞こえた気がしました。

 その前にこの短時間でこの部屋用意したんですか!?

「そこら辺はほら。学院長パワーでちょいとしただけ。」

 それはまずいのでは・・・・・って・えっ? 学園長?

 この子が! 人類終わりましたね。

「やっぱり面白いわね。私に心の中とは言えそこまで強気に出られるなんて。」

 そうそう心の中で暗い強気でないと年上の威厳がなくなる。いやちょっと待ってください。今この人心の中呼んでいませんでしたか。

「心を読むなというのならもう読まないわ。プライバシーは尊重するから。」

 今までの行動から信用できません。

「お嬢様。編入の準備が整いました。」

「ありがとう深山。後で撫でてあげる。」

「ありがたき幸せ。それと部屋も予定通りこの部屋で大丈夫です。」

「ありがとう。まさか許可が降りるとは思わなかったわ。」

行き当たりばったりだったの!?

「お嬢様のためにちょっとだけ理事たちを脅迫・・・・・・ではなくお願いしただけです。」

 今この人脅迫って言った。完全に笑顔で脅迫って言いましたこの人!

「深山、理事たちをあまり虐めないでおいてね。警察に突き出されたら面倒だし何より私が理事たちを弄れないわ。」

 ダメだ、この人。真性のドSとしか言い様がありません。

「警察には賄賂渡せばよろしいでしょう。」

「それもそうか・・・・・・。」

 本当にダメだ。この人たち早く何とかしないと。

 頭を抱えているとみやまという執事に肩を置かれて耳元に顔がありました。

 ぼそぼそと何か言っていました。読唇術の心得があるので唇を読んでみてみます。

『い・ま・き・い・た・こ・と・は・わ・す・れ・ろ。も・し・しゃ・べっ・た・ら・よ・る・の・つ・き・に・き・お・つ・け・ろ・よ。』

 まさかの私も脅迫されていました。体がなぜか盛大に震えます。

 ともあれきちんとした布団で寝られそうです・・・・・・。

「アレ? なんですかこの匂いは。」

 部屋に入ってみますと嗅いだことのない草の匂いが。

 思わず花を摘んでしまいました。

「あら? もしかして和室とかダメな人?」

「その前にこの床は何ですか? そもそも和室とは?」

 芝生のようなこの感触。だけど芝生とは違う変な匂いがします。

 まるでグリフリーフを焼いたような匂いだと感じました。

「イグサ草を使ったジパング製の畳を知らないとは思わなかったわ。」

 イグサという草に覚えのない私はどういう品種なのか興味が湧きました。

 でもこの匂いは苦手です。

「和室とは畳などを使ったジパング特有の部屋のことです。」

 私の気になっていたことを執事さんが答えていた。

 ドS主人より有能な人。

「お嬢様を侮辱する発言は控えてもらいたいですね。」

「なぜにおナイフをクビに?」

「いえ、気のせいならば結構です。気のせいならば。」

 ナイフは首元から離れると安心できました。

首元にナイフを突きつけられるなんて体験は初めてです。

 ふぅ。それにしてもこの人の前では不用意に思うことも許されないわけですか。

「それではこれが学校で必要なものです。お収めください。」

 ドサッと本の山が部屋に置かれる。見たことない言語がいっぱい。

 辞典のような大きさの本もたくさんあります。

「それは言語科目。ジパング語。English(英語)。仏語。古典の辞典です。」

 やっぱり辞典ですか・・・・・・それにしてもわからない言語名ばかりです。

 特にこの分厚い『仏語辞典(読めない)』と書かれたのは意味不明です。

 唯一読める文字は数字くらいでしょうか。

「できれば案内してあげたいけど私も学院長の仕事があるの。あなたをねじ込んだ責任もあるからなおさら仕事が必要ね。」

「お嬢様の好意を大事にするといい。(逆らうと殺すぞ。)」

 執事の裏の声はやはり物騒でした。

 久城院さんと執事深山は私の部屋から出て行ってしまいました。

 さて思いがけず時間が出来てしまいましたがどうしたら・・・・・・。

「ああああああああああああああああああああ!」

 はて、奇声が扉の方から聞こえてきたと思っていたら扉が勢いよく開かれました。

「はいドーン。私、参上。」

 開け放った主は指と鼻に絆創膏。左腕に包帯。左右の目がオットアイの少女がいた。

 斬新で前時代的なファッションです。

「あけましておめでとう。」

 それは新年においていう言葉では?

「好きなものは酢昆布。苦手なものはアンコウ料理の私の名前はブレイドオーガ。」

 何か無駄に男前な名前のようです。もしかして偽名。

「そしてムッチャデコピン真拳の伝承者。」

 一体どんな真拳なのでしょうか? それといろいろついていけません。

「おや、何か面白い格好しているね。イカしているよ。」

 この格好(制服)はおかしいのでしょうか?

 元の世界の服装なのですがこの世界では浮いてしまうのでしょうか?

「色合いが珍しいからかな。それよりも編入生だよね。」

 寮の部屋を当てがわれてはそう言う結論には達しますよね。

「半ば強制気味ですけどね。」

「あの学院長は横暴でドSだからしょうがないとしか言えないね。」

 その通りだと納得してしまったのが悲しいです。

「学院長の横暴は置いといてせっかくだからこのあたりの街案内しようか?」

「それはありがたいです。」

 車とやらで連れてこられてまったく地形がわかりません。

 窓の外を見ていても全然わかりませんでしたし。

「それじゃぁレッツゴー。」

 ここは三階なのではとツッコミを入れようとしたところでひとつの事柄に気づく。

 縄がぶら下がっているではありませんか!

 その縄で爽快に下に降りた彼女は手を振っていました。この人規格外すぎます。

 階段で降りた私は彼女にありえないほど痛いデコピンをされてしまった。

 彼女の性格はともかく案内はまともでした。商店街におもむき生活必需品のお店や化粧品店。果に怪しいお店や下着ショップらしきところまで案内してもらいました。

 数字しか読めないのは別としてとてもいい案内でした。

「ここらだとこんなものかな。後は歩き回って自分好みのお店を探せばいいよ。」

「ありがとうございます。この世界の歩き方にも慣れてきました。」

「この世界だって!? まさか編入生が秘密組織のエージェントだとは。」

 もう案内される過程でこの程度の会話はかなり返答できるようになっていました。

 私まで残念な子になった気分です。

「もしもし、機関のエージェントに接触してしまった。今より戦闘に入る。」

 さすがにもう視線が痛いので止めに入ることにしました。

 近くでチラシを配っているお姉さんを見つけチラシをもらい丸めて剣のように持ち頭からスパーンと叩いてやりました。チラシは相当重ねたので強度も抜群です。

「ユエ、痛いよ・・・・・・。」

「まずは公共の場でその設定厨はやめなさい。」

 頭を抑えて涙を目に馴染ませながら私を見るブレイドオーガこと剣鬼百桃。

 可愛らしい名前がいただというだけで自分をブレイドオーガと名乗っていたということらしいです。このことは買い物最中に耳に入れました。

「別にいいじゃない! これが・・・・・・私だ!」

 無駄にかっこいいセルフで場を流そうとしないでください。

 ほら皆さんこちらを見ているじゃないですか。

 ここから早く逃げたかったため剣鬼の首根っこを掴み脱出することにしました。

 周りを見ながら人が行かなそうな方へと向かいます。

「これはどこに向かっているの?」

「わかりません。この場所がどんな場所に繋がっているかわかりませんから。」

「行き当たりばったり良くない。あう、あう、あう。」

「黙っていてください。舌を噛みますよ。」

「ユエも雪花学院長に負けないくらいに横暴だと思う。」

 あのハチャメチャと一緒にされました。少しどころか超ショックです。

 しばらくすると行き止まり。あるのは怪しげな名前の看板のみ。

 でもそんなものを見ると興味がわいてしまいます。

 私はワクワクしながら扉を開けました。

「いらっしゃいませ。二名様でよろしいですか?」

 メイド服を着た少女が接客スマイル全開で話しかけてきました。

 どこかで見たような気がしないでもない。

「って今日朝会った世間知らずのお嬢様じゃない。」

「・・・・・・どこかで会いましたっけ?」

「どれだけ鳥頭よ。交差点でたむろしているところを助けてあげたでしょう。」

 思い出しました。この世界に来て初めてあった人です。

 魔法のこととあの場所に留まってはいけないことを教えてくれた少女です。

「今思い出したみたいな顔やめてくれる。でお客様でいいんだよね。」

「お金がないからお客と呼べないかもしれません。」

「お金無いとか一体どこのホームレスよ。そのポケットにあるのは財布じゃないの?」

「財布ですけど?」

「それならお金がないなんてことはない・・・・・・。」

「何この硬貨?」

 いつの間にか剣鬼が私の財布を奪い取っていて中身を確認していました。

 全く気づかなかったです。この世界の人とは硬貨が違うのでしょう。物珍しい目で見ています。剣鬼が硬貨を手に腕を伸ばして掲げると周りの人たちが一斉に声を上げました。

 どうしたのでしょうか?

「ぼさっとしない。この硬貨。文化遺産になるくらいのレベルのものだから。」

「そんな大げさに言わなくとも。」

 肩を捕まれキリキリとすごい力で肉にめり込んでいます。痛いです。

「それが全く大げさではないのよ。数千年前に使われていた硬貨。いわば伝説の硬貨よ。」

数千年前は私の持っていた硬貨が流通していた?

 そうなると風化していてもおかしくはないでしょう。しかし完璧な姿で存在している。

 周りが騒ぐのは無理もないがどうして皆さん知っているのでしょう。

「ここは歴史喫茶だから世界史好きが集まるから。」

「別名悪魔図書館と呼ばれ、あう。」

「いいからさっさとしまって返しなさい。」

 初めて会った方に殴られた剣鬼は無造作にお金を財布に戻しました。

自称文化遺産クラスの硬貨をそんな風に扱っていいでしょうか。

財布は再びポケットに戻されましたが根本的解決にはなっていません。

お金がないという状況には違いないのですから。

「しょうがない。店長。」

「なにかしら・・・・・・あら、可愛い子。」

 店長と呼ばれて出てきた人は私にとって人生初めて会った生物。

 男の顔、肉体を持ち合わせ尚且つ唇にはリップ、つけまつげ、化粧まで施した人間が経っていた。あまりの異様さに足を交代させてしまいました。

「店長。私のツケでこの人に食べさせていいですか?」

「いいわよ。そこの悪ガキは絶対に奢らないけど。」

「やはり真性の変態(マスター)は話が通じない。」

「話し合いに応じる気なんてこれっぽっちもないけどね。」

 隙間一センチくらいの隙間しかない指と指の隙間。

 あれでもものすごく譲歩しているのかもしれません。

 私は定員に案内され席に通される。剣鬼は外に放り投げられました。

 どうやら彼女は出勤をくらっていたようです。

「あの子、ろくなことしないの。」

 こんな優しそうな(外見は違う)人にこんな嫌われるなんてどんなことをしたのやら。

 思い切って聞いてみるとそれはもうご愁傷様としか言い様がない内容でした。

 剣鬼はこの店に来るといつも食い逃げ。厨房に勝手に入り味見と称しお客様の食べ物をつまんでいたりしたという。もう公共機関で裁かれてもいいレベルとのことです。

 少し待つと目の前に高級料理店で出てきそうなスパゲッティ。

 ミートソーススパゲッティですがそのように感じてしまいました。

 スプーンとフォークをうまく使って誰をなじませ口の中に。

 その瞬間体に電流が走りました。美味しさが半端じゃありませんでした。

 口にとろけるという表現がまさにふさわしいです。

「お気に召したようでなにより。当店自慢の料理よ。」

 店長の言葉虚しく届かず無我夢中で麺をすする。

 五分も経たずに間食。大変おいしゅうございました。

「ご馳走様です。ここの料理はすごいのですね。」

「店長が腕によりをかけているから。「そうそう夢中になるくらい美味しかったのね。」と店長は言っていたけど後でお礼言ってきなよ。奢ってもらったんだから。」

「わかりました。今後お礼はします。ごちそうさまでした。」

「もう行っちゃうの? もう少しゆっくりすればいいのに。」

「外で連れが待っているみたいですからこのへんで失礼します。」

 席を立ち上がって外に行くと頬をふくらませた剣鬼がいました。

 真っ赤になって少し可愛いですね。

 咄嗟に頭をなでるとフニャッとした顔になりました。

「そ、そうだ。もうすぐ寮に戻らないと。」

 急になにか思い出したようです。びっくりしました。

 顔もいつの間にか元に戻っています。

「どうしたのですか?」と剣鬼に訪ねますと寮に門限があるとのこと。

 門限は6時。門限やぶりの罰は学園長のわがままを一つ聞くことだそうです。

 あの横暴女の要求は受けたくありません。

現時刻の確認をするために時計を・・・・・・そんな高尚なものは持っていませんでした。

「現時刻確認。残り一刻。かなりギリギリ。」

 制限時間は一時間ですか。ここに来るまで一時間半かかったということは全力で走って間に合うか間に合わないかの二択ですか。

 いえ、別に走らなくてもいいのです。何あえさえすれば。

「すいません。ちょっと負荷がやばいかもしれませんが我慢してください。」

 ここで力を使うのはまずいので一度お店の裏側に向かいます。

お店の真後ろは天蓋もなく青い空が見えました。

 剣鬼の腕を素早く掴むと足に風の力を集中。思った以上に制御しやすい。

 一度使って思いましたがこの世界にはやはりマナが溢れている。

 軽く足を叩きつける。すると一気に遥か上空までたどり着きました。

「と、飛んでいる。なにこれ。これは魔法なの?」

 魔法は存在している。言葉からそれもはっきり確認できる。

 それでも不自然な部分があります。

 顔が驚きに満ちている。道のものにあったようなそのような表情です。

「しっかり捕まってください。場所は覚えています。最短ルートで行きますよ。」

 私は空中で足を蹴る動作をする。私たちは一気に蹴った方向に加速する。

 まさ『風になる』という表現が正しい状況です。

 数分かかりましたが目的地上空に到達。ここまでの使用時間12分。

 まだ空中ですけど時間にして7分の1で到着です。

「気持ち悪い。何か重力かかりすぎてものすごく気持ち悪い。」

「貧弱ですね。もう少し体を鍛えたらどうですか?」

「鍛えてどうにかなる問題ではない気がする。」

 音速は出していませんから鍛えればなんとなく大丈夫な気がするのですけど違うのでしょうか? ゆっくりと寮の前に着地するとなぜか騒がれました。

騒がしいのはあまり好きではありません。

「派手な登場。私より目立つとはやるわね。ねぇ深山。」

「お嬢様も存外派手な演出を催していますけどね。」

 気配を感じられず背後を足られてしまいました。

 本当にこの人たちはなんなのでしょう。悪魔ですか?

「空から飛んでくるインパクトに比べたらそんなものはカス。使用人たちのお尻に花火を挿し着火しながら歩くなんてインパクトないじゃない。」

 ありえないぐらいインパクトあると思います。

 泣きながら皮肉に喜ぶ笑顔がしみじみと目に浮かんできました。

 ああ・・・・・・執事の皆さん悲惨なりや。

「それにしても・・・・・・能力がここまで高いとは思っていなかったわ。」

 能力が高い? この程度私の周りなら誰でも使えていましたけど変なのでしょうか。

「誰でも使えるみたいな顔しているけど皆それほど高等な精霊術は使えないわよ。」

精霊術? もしかしてこの世界では精霊魔法という名前が使われていない。

世界が違うと言葉一つが違う。私がいた世界では一つの言語でこと足ります。

ですがこちらでは複数の言語が使われている。

 それと同じく似ているようで似ていない。または全く同じもので名前だけ違う可能性もあります。精霊術。調べてみる必要がありそうです。

「そこまで強力な術を使えるなら今更だけど編入に問題なさそうね。」

「能力が強くないと入れないのですか?」

「違うわ。能力の強さによってクラスが分けられているの。特異能力者はSクラス。大能力者はAクラス。上位能力者はBクラス。下位能力者はCという感じにね。」

 ランク付けは気に入りません。ランクだけでは測れないものを見ようともしていない。

 階級を作ればいじめの問題だって起きるでしょうに。

「では私はCランクですね。精霊術は使えませんから。」

「先程の術が精霊術ではないとするとなんなのかしら。魔法とでも言うの?」

「正解ですよ。私の国では精霊術は精霊魔法と呼ばれています。」

 元となる精霊魔法は単なる魔法として扱われていました。それと魔術と魔法がどう違うかはさておいて全ての超常的力は魔法と称され発動条件などもあやふやなままでした。

 それなので私は21才になる前に精霊魔法の定義と証明。論文を完成。

 そのページ数は『423ページ』にも及び国家に表彰されることになっていました。

 しかし表彰前夜。何者かにより同じような論文が。その何者かは顔を明かさずパクリだと主張。私の表彰も無しになった。学会から脱会を強いられた。そこで論文から生み出された超駆動兵器オーバルアークを作ることで名誉を挽回しようとした。

 だけどそれさえも何者かに奪われていた。オーバルアークは数日後警察で試用期間が設けられどれだけ使えるか試されたらしいです。

あの時私のお父さんは何を思ったのでしょうか。

娘の研究が奪われ職を失わせた人物。その人物に何を思ったのでしょうか。

あの事件は私の始まり。自分の思うように生きようと考えた瞬間。

「顔色が優れないわね。何か嫌なことでも思い出したのかしら。」

「大丈夫です。昔昔のことですから気にしないでください。」

「そう。なら気にしないわ。それで精霊魔法は精霊術とどう違うのかしら?」

「そちらの魔法を構築する手段を教えてくれればここで説明しますよ。」

「そうなの? 深山! 説明なさい。」

 パチンと久城院さんが指を鳴らすと深山が久城院の前に立った。

「はっ。お嬢様に変わり私が説明させていただきます。精霊術とは大気に散らばるテラと呼ばれる力を使って行われる術です。」

 大気に散らばるテラ・・・・・・ここでも呼び方は違うわけですか。

「質問です。精霊術を発動するときはどうするのですか?」

「テラを体に取り込み力を使用する。もしくはそのテラを目の前に集める必要があります。」

 基本的なことは同じようですがこちらとは違う点があるはず。

 あの初めて会った方は四大精霊のことを知らなかった。直接聞いていませんがきっと知らない。これが事実であるのならこの世界に精霊はいない。

「最後の質問です。皆さん。精霊をご存じですよね。」

 周りがざわめきたった。そして久城院さんは済ました顔でこう言いました。

「精霊術を作ったのは精霊。精霊はいるわ。そのことも知らないの。」

 衝撃でした。精霊はいる。すると精霊進行は行われている。

 だとしたら四大の力の低下はどう説明すれば。

「その精霊の名前は? 他にも精霊はいるの?」

「精霊術を作ったのは元素精霊マクスウェル。それ以外の精霊は確認されていないわ。」

 マクスウェル。ここでその名前を聞くとは因果なものです。

 この世界では元素の精霊と呼ばれるマクスウェルがいた。

 四大が言うにはラクリマでは一千年前に消えてしまった大精霊。

 四大精霊を生みし原初の精霊。無の属性を司る大精霊です。

 どのような経緯で実体化したかは知りませんが精霊術を人に教えた。

 しかも同じ名前で同じことを繰り返していたとは・・・・・・・。

 笑いを通り越して笑えません。

原初の精霊がいるからこそこのマナの豊富さということですか。

「それで? もしあなたが別世界の住人であるのなら精霊魔法の説明をどうぞ。」

 目を輝かせて期待しているところ悪いですが期待に応えられません。

 原理がまるっきり同じなのですから。私は小細工せず素直に説明することにしました。

「私は別世界の人間である証明する手段がありません。異なる点があるとしたなら精霊と契約したものは膨大な力を得るという点だけです。」

「精霊と契約? マクスウェルと契約したの?」

 百花が興味津々な顔で私に質問する。別に言って悪いわけでもないので話すことにする。

「私が契約したのはマクスウェルの生み出した四大精霊です。今は別行動中なので姿は表すことができませんけど実際にいます。」

「信じられない。今でもマクスウェル以外に精霊はいないと思っているけど。」

 今まで一人の精霊しか存在しなかったというのならこの反応はごく当然の反応です。

 信じられないのは当たり前ではある。でも信じてもらわなければ話が進みません。

「今は信じていてください。四大精霊の存在を知った私はある論文を書きました。精霊魔法に関する。いえ、精霊魔法が認知される原因となった論文です。」

「認知される・・・・・・・精霊魔法と呼ばれるものをあなたが作った? マクスウェルの様ように人に伝えたということですか。」

「深山の言う通りです。ですが私ではない誰かが伝承させました。あくまで広めたのは違う人。別人です。伝承したのは名前も声もわからない人物ですよ。」

 本当に何もわかっていない。声も偽装。どこからその声を届けたのかも謎。

 精霊単体の仕業にしては大きすぎるしそれでいて意味をなさない。

 精霊は元来人に不干渉。干渉できるとしたら故意に姿を現している時だけ。

 それ以外の時は接触しようともできない。例外があるとしたら精霊契約者。

 私を含め精霊契約者は精霊の姿を常時見ることができる。

 見えないと不便だしいたずらされた時に困る。

 それなのにあの場所に精霊の痕跡は見当たらなかった。

「それにしてもどうやってあなたの論文を盗み出せたのかしら。見るからに盗んだ人物に報復しそうだけど。」

実際報復しようと思いましたよ。正体不明なので追いかけることもできない。

研究成果を全て台無しにした謎の人物にはお仕置きしなくてはならないと思っていましたがあれから約百年。生きているとは思えません。

「まぁいいわ。本当に能力は問題なさそう。頭もそれなりそう。」

「はい。たとえ入試を行ったとしても彼女なら高得点を叩き出してしまうかもしれません。」

 ・・・・・・それは買いかぶりや希望的観測では?

「試験させれば理事たちは納得すると思う?」

「高得点なら問題なく黙らせることができるでしょう。」

 なんか試験する方向に纏まっているようです。

 ここの文字なんて知らないから問題が解けないというのに。

 当たり前のことですが断ったとしても強制的に受けさせられるでしょう。

 仕方なしに試験を了承。執事深山が懐からほんのり暖かな教科書のようなものを取り出し開く。パッと見ましたが計算式だけは見たことあります。

「問題が読めないとおっしゃるのならお読みしましょうか?」

「お願いします。問題を読んでもらえば問題ありません。」

 計算式は既に知っているものなので暗記する必要もなかったのでそう答えました。

 だけどこの執事はおかしいです。まるで人の心が読めるみたいに・・・・・・。

怪しんでいると「私は心を読んでいませんよ。表情から察しているにすぎません。」と笑顔で答えられてしまった。余計にこの人が怖い。なんでもやってしまいそう。

「では読みますよ。この計算式x1、x2、x3に入る数字を答えなさい。」

 そこまでわかればもう答えはわかったことも同然です。

「x1=1、x2=4、x3=6ですよね。」

「正解です。どうやら数学はジパング語を理解できれば問題なさそうですね。」

「編入試験の試験内容は数学、英語、精霊術学の三つ。決死の覚悟で挑みなさい。」

 たかだか試験にそこまでの覚悟が必要だというのでしょうか。

「とりあえず程ほどに頑張りますよ。」

 これ以上何か言われたり何かされたりは嫌なので。

「それじゃこれから私が直々に問題を教えてあげる。編入試験のテストの内容も持ってきてあげるから満点確実だわ。」

「やめてください。」

 心の底からお願いしました。



次回「喧嘩と魔獣と編入試験」

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