表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
6話:道化師にも戦場はある
44/67

その12・Emergency

[クロノ]

大会本戦5日目。

少し強めに雨が降っている。

夜遅くから降っていたようだ。

しかし、キッドマンの出番だからか、いつも満員の観客席が更に混み合っている。

ピギー「はい落ち着いて‼︎みんな落ちついて‼︎走らない走らない、ほらこけた‼︎あーあーあー、1人こけたからどんどん巻き込まれて…いい?怪我したくなかったら歩いて移動してね‼︎それから席は出来るだけ詰めて、恋人とか家族とかは膝に相方乗せるなりして席を空けといてくれるとみんな幸せになるから協力してね‼︎」

どうやら凄いことになっているようだ。

マリア「まだ3時間もあるのにすごい数ですね…ヒールの言う通り、早めに来てて良かったですね…」

クロノ「だろ?」

あっちの世界にいた頃に、何かのイベントの度に徹夜待ちしてる人間がいた。

人気のコンテンツは、そこまでする人を生み出す。

今回のこれも、大会連覇のキッドマンが出るというだけあってファンも多いはず。

だから超早めに席を取っておいたのだ。

取ったのは大体朝の8時だが、既に8割は埋まっていた。

マリア「キッドマン、調子悪いんですよね?」

クロノ「テラーはそう言ってたな。あれから一晩経ったんだし、多少でも良くなってくれると嬉しいんだが。」

なんてったって今の状況で数少ないマトモな出場者なのだから。


時間が経つ。

マリア「そろそろですかね?」

クロノ「そろそろだ。そろそろピギーが…」

ピギー「レッディィィィス、アーン‼︎ジェントゥルメェェェェェェン‼︎」

クロノ「ほら来た。」

ピギー「さぁ、今日もやってきたぜ‼︎今日で全選手の1試合目が終わる‼︎だがまだ2回戦以降があるから、まだまだその元気使い切るなよ‼︎それじゃあ選手の入場だ‼︎去年の成績は3位‼︎全身を鎧に包んだ正体不明の斧使い、バァァァァァァァン‼︎」

鎧に身を包んだ男が現れる。

両手に斧を持ってドスドスと歩いてきた。

クロノ「二刀流か。」

マリア「斧の二刀流なんかするのは彼ぐらいなもんでしょうよ。」

ピギー「さぁお次だ‼︎こいつを待ってた奴も多いことだろう‼︎今年もふざけた成績を見せてくれるのか⁉︎キィィィィィッドマァァァァァァァン‼︎」

この上ない歓声が湧く。

入場口からキッドマンが出てきた。

しかし、どことなくフラフラしている感じがする。

クロノ「まだ体調治ってないのか?」

マリア「大丈夫でしょうか…」

ピギー「さぁ、お二方。握手だ!互いの魂とこの聖なる…」

そこまで言ったところでいきなりキッドマンが刀を構える。

クロノ「ん?」

いったいどうした、と言う前にいきなりキッドマンが刀を縦に大きく振る。

刀から発射された黄色く光る斬撃がバンと呼ばれた斧使いに迫る。

ギリギリで気づけたのか回避行動を取るが、右の脚に直撃し、脚が吹っ飛んでいった。

その斬撃は止まらず、舞台と観客席の間に見えない壁のように存在する結界にぶち当たる。

ガラスが割れたような音を立ててその結界が割れたように散らばった。

クロノ「えっ?」

静まり返った会場では、脚をぶった切られたバンの叫び声と雨の音が響く。

「キャアアアアアアアアアアアアア‼︎‼︎」

数秒経ち、1人の女性が悲鳴をあげた。

それを合図に、次々と悲鳴が湧き、観客が立ってその場から逃げようとする。

マリア「なんなんですか⁉︎なんなんですかこれ⁉︎」

クロノ「キッドがあんなことするわけない…何が…」

マリア「私たちも逃げないと…」

実況もようやく事態を理解できたようで、慌てふためく観客に向かって叫ぶ。

ピギー「待て‼︎みんな落つち…落ち着け‼︎慌てるな‼︎案内に従ってゆっくり素早く逃げるんだ‼︎魔導士‼︎今すぐ結界を修復しろ‼︎即応隊‼︎」

その間、キッドマンはもう一度構えていた。

クロノ「マズイ、また来る‼︎」

マリア「どこ行くんです⁉︎」

キッドマンが向いている方向に向かって走る。

キッドマンは人が集まっている観客席に向かって刀を振り下ろした。

先ほどと同じように、鋭く太い斬撃が観客席に向かって飛んでくる。

予想は当たっていたようで、その斬撃がちょうど自分のところに飛んできた。

クロノ「はぁぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」

飛んできた斬撃よりも大きな魔力の盾を右手から創り出し、受け止める。

クロノ「くっそぉぉぉおがぁぁぁ‼︎‼︎」

斬撃は盾にぶつかってもなお力を増し続けるが、なんとか耐えた。

ピギー「今の盾は⁉︎大丈夫か‼︎」

盾を消し、観客席から舞台に向かって飛び降りる。

キッドが次の構えをしようとしているところに向かって走り、右手で創り出した剣で斬りつける。

キッドはそれを刀で受け止め、後ろに下がる。

ピギー「ヒール⁉︎ヒールか⁉︎あんた…いや、すまないヒール‼︎即応隊じゃあキッドを止められそうにない‼︎結界の準備が出来るまでの間でいいから時間稼ぎを頼まれてくれ‼︎今のキッドは正気じゃねぇ‼︎」

正気じゃないのは見れば分かる。

目が据わっている。

こちらの1点をずっと見つめぱなしだ。

目を大きく見開いて、刀を握りしめている。

刀からは魔力の残滓がこぼれ落ちている。

クロノ「話し合いは通じそうか?」

キッドに呼びかけるが何の反応も返ってこない。

クロノ「あっそ。ならアレだ、力ずくだ。」

キッドが刀を振り上げる。

刀からは先ほどと同じ光が集まっている。

クロノ「魔力を収束…」

両手を下に向け、腰の前で合わせる。

集めた魔力と魔力を1つの大きな魔力へと結合させていく。

クロノ「反転…拡散…」

結合させた魔力を収束させる為のものから拡散させる為のものへ変換。

クロノ「フルチャージ…」

右手に全ての魔力を溜める。

本来なら容量オーバーするだろう量を無理やり凝縮して詰め込む。

いつもやる作業を手間暇かけて念入りに行う。

キッドが刀を振り下ろした。

刀から腕を簡単に吹っとばせるほどの威力をもつ魔力が放出される。

クロノ「こいつはどうだ‼︎」

放出された魔力を右手で殴る。

右手に当たった魔力はエネルギーだけを取り出して右手の中の魔力に吸い込まれる。

吸い込んだエネルギーを魔力に変え、右手に剣を創り出す。

剣にあらかじめ右手に溜めておいた魔力を流す。

魔力をこれ以上流せないというほど流すが、集めた全魔力の1割程度しか流せていない。

その大量な1割を剣に乗せて剣を振る。

空を切った剣から魔力が斬撃として放出、それがキッドマンの胸に当たる。

キッドマンの体が切れたわけではない。

そもそも切るためではなく、鈍器で殴るように魔力の塊をぶつけただけだ。

一振り終えると次の魔力を装填し、もう一度振る。

同じように放出された魔力が同じようにキッドマンの胸を殴打する。

続けて一振り、さらに一振り、もう一振り。

クロノ「でぇぇぇぇぇえやぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎‼︎」

魔力が残る限り、斬撃を放つ。

魔力を全て使い切る。

クロノ「これでぇ‼︎」

剣を消し、キッドマンに走り寄る。

クロノ「トドメだおらああああああああ‼︎」

右手を思い切り引き、キッドマンの顔面を殴り抜く。

体を浮かせて吹っ飛んだキッドマンが地面に落ちる。


クロノ「はぁ…はぁ…」

疲れ切った体をフラフラとさせながらもキッドマンに歩み寄る。

キッドマンの体をゆさゆさと揺らすが、何も反応が返ってこない。

脈があるのと、心臓がちゃんと活動しているのを確認して生きていることを確認する。

クロノ「ただの気絶か…良かった…」

(ただ狂ってたわけじゃないな…狂ってたなら意味わからんこと叫ぶだろうし…そうすると…)

ピギー「ヒール‼︎よくやった‼︎結界も修復できたし、観客の避難も完了した‼︎」

クロノ「そいつは良かった。」

ピギー「ほんとにありがた…え?なに?え?なんで?あぁ。」

誰かと会話しているようだが、ピギーの返事が聞こえてくる。

ピギー「いやだってそりゃお前…あれだよあいつのサポートしなきゃいけねぇんだもん。え?してたよ!しようとしてたよ!する前に勝負ついてんだよ‼︎ったく…」

ピギーの声を聞いていると、頭がボーッとしてきた。

(疲れたか…そりゃまぁ、限界超えたレベルの魔力使ったわけだしな…)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ