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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
6話:道化師にも戦場はある
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その9・Camo spell

[クロノ]

試合終了の後の酒場。

自分の勝利を祝った宴会が開かれている。

ちなみに、毎日その日の試合の勝者を祝うので、大会中ずっとはしゃぎまくっているそうだ。

みんな笑顔で飲んでいるが、1人だけムスッとした顔の男がいる。

自分だ。

マリア「ま〜だ気にしてるんですか〜?」

クロノ「まぁな…」

テラーが行っていた詠唱が気になって気になって仕方ない。

クロノ「まさかアレが有りだとは…それだったら今まで色んな場面で使えたことになるし、これから先色んな場面で使える…俺としてはアレについて知っておきたいんだよ。」

マリア「でも、今はそんなこと考えなくてもいいんじゃないですか?」

クロノ「それもそうなんだが…」

だけどなぁ、と言おうとすると、

「それについては私がお話ししますよ。」

自分が座っていたカウンター席の横にフードを被った男が座ってきた。

ロナルド「マスター、弱めのお酒ありますか?」

店主「へいへい。」

この街に来たばかりの頃にも会ったフードだ。

クロノ「魔導士さんじゃないか。」

ロナルド「良い試合でしたね。攻撃を何発か食らってしまったものの、特に目立った外傷もなしに勝つことができました。何より、あの不思議な詠唱魔法に難なく対処しました。」

クロノ「どうせなら完封試合にしたかったがね。」

男「おいねぇちゃん‼︎」

マリアが酒の入ったおっさんに呼ばれる。

男「こないだの続きやろーぜ‼︎今日こそ勝ってやるよ‼︎」

マリア「はいはーい!じゃあちょっと行ってきますね。」

クロノ「いってらー。」

マリアが集団に加わる。

クロノ「そんで、アレについて知ってるってことか?」

ロナルド「はい。あれは、『偽装詠唱(ぎそうえいしょう)』というものです。」

クロノ「『偽装詠唱』?」

ロナルド「はい。遥か昔、まだ多くの英雄神が生きていた頃。当時にも詠唱魔法はというものは存在していました。しかし、その発動条件の厳しさを剣士殿もご存知でしょう?」

クロノ「心の叫びでしょ?」

ロナルド「まぁ、そうですね。自らの想いを呪文にして唱える。しかし、ただ言えば良いのではなく、その時の心情にも左右されます。強力ではあるけど使い勝手が悪い。そこで英雄神は、自らの武器に特殊な細工を施しました。特定の呪文を唱えることで、詠唱魔法と同じ魔法を発動させることができるのです。本家の詠唱魔法にはさすがに劣りますが、それでも驚異的な威力を放つことができるのは変わりません。」

クロノ「そんなスキルがあんのか…それがあればいつでも詠唱魔法撃ち放題?」

ロナルド「『偽装詠唱』を行えば、ですけどね。ただし、これはその偽装詠唱の細工を施した武器でないと発動できません。それもただの武器ではなく、英雄神が持つ武器に限られます。」

(英雄神オンリー?)

クロノ「なんで?」

ロナルド「この細工はですね。私の祖先にあたる…あぁ、私の正体を話してしまうと…」

クロノ「英雄神の子孫なんだろ?弓兵おじさんから聞いた。」

ロナルド「おや、そうだったのですか。えぇ、その祖先であるリーマナ様が編み出した魔法なのです。リーマナ様が持っておられたその杖があり、その細工を施すことのできる呪文さえ知っていれば、誰でも行える魔法だそうです。」

クロノ「じゃあそれがあれば…」

ロナルド「ないんです。」

クロノ「ない?まじで?」

ロナルド「リーマナ様は、この魔法が英雄神の力を存分に発揮させることができると同時に、もしその英雄神が何らかの影響で民や仲間たちに剣を向けるような事態に陥ってしまった時、それは神さえも恐れるような戦いが始まってしまうかもしれないと恐れたのです。」

クロノ「そりゃまぁ、超絶威力の必殺奥義をポンポン出し合うような戦いになるだろうしな。」

ロナルド「しかしその細工は、一旦行えばを解除できない強力なものでした。せめてこのような恐ろし物をこれ以上作り出さぬようにと、杖を粉々に砕いて海に山に川にと様々な所へ処分されました。」

クロノ「そいつは探しようがねぇな。」

ロナルド「あのテラーという男が持っていた槍も、かつて槍を扱う英雄神が持っていた物で間違いないでしょう。」

そんな大層なものをあいつが…

クロノ「確か…ガリアスとか言ってたな。」

ロナルド「ガリアス…ハシファナの武器の名ですね。義と悪を信仰する神、ハシファナ・リーズン。ここでいう義とは、正義を指します。」

(ハシファナってのは英雄神のことか。)

クロノ「正義と悪か。光と闇が備わりなんとやらってか。」

ロナルド「正義と悪というのは、対義の関係というわけではありませんよ。」

クロノ「そうなの?」

ロナルド「あながち間違いではありませんが、より正しく言うならば、正義の対義語は不義です。悪の対義語が善となります。ですから、相反する2つを信仰するという意味ではありません。1つを知れば自ずとその逆も見えてくる。似ているようで違う正義と善、不義と悪。人を知る為にそれらを片方ずつ知ることさえできれば、人の言う正義と悪の全てを知ることができるはずだ。ということで、彼女は何事にも中立な立場を取り続け、その立場から正義と悪を審判しながら戦ったのです。」

クロノ「彼女?」

ロナルド「はい。ハシファナは女性です。愛に生きられた神と言われたリーデロイを惚れさせたと言われる程の美しさだったと。」

クロノ「リーデロイも初めて聞いたよ。」

ロナルド「リーデロイは愛に生きられた神と言われているように、彼女の周囲では常に、愛が纏わり付くように存在していました。」

クロノ「彼女?」

ロナルド「はい。リーデロイは女性です。」

(この世界変態というか、特殊性癖が多い。)

いや、自分がいた世界では男は女を、女は男をというのが正常だった。

そうなった理由が、文化や文明の発達の仕方だったからだとしたら、こちらの世界のこの文明ではその辺に変態がいるのもおかしくはないのだろうか。

ロナルド「彼女の両親、友人、姉妹。自分以外の全ては愛に満ちたりていました。しかし、自分だけはその愛を感じられる生き方を知りませんでした。それゆえ、愛を知らない幼い頃のリーデロイはその纏わり付く愛を煙たがっていましたが、ある日、幼いが故に惚れっぽかった彼女はある男性に恋をします。しかし、彼女の愛を男性は受け入れませんでした。つまりはフラれたということですが、その時の彼女のショックはとても大きなものでした。その時に彼女は考えました。『嫌われるというのはこんなにも悲しいこと。辛いこと。こんなにも胸が苦しくなり、吐き気すらも覚えてしまう。そんな辛さをみんな味わってしまうのか。母も父も、姉も妹も。もし嫌われれば、そんな気持ちになるのか。私が嫌ってしまえば、同じ気持ちになるのか。そんなことしたくない。そんな気持ちになってほしくない。両親だけでなく、この世に生きる全ての人にも苦しんでほしくない。誰か1人にでも愛されていれば、それはその人の支えになるのではないか。それならば私がその支えになって、この世の人に笑顔になっていてもらわなくては。』と。リーデロイはあくまで全ての人に平等に愛を捧げました。誰か特定の1人を愛すのではなく、この世に生きるすべての物を、家族のように、兄弟姉妹のように、恋人のように、長年連れ添った夫婦のように、悪口を言い合ってもなんだかんだ仲の良い親友のように愛そうと生きました。そんなリーデロイが一目惚れし、他のことを忘れるほどに一途にさせたのが、ハシファナです。」

クロノ「そんな…えぇ…」

ロナルド「一時期はハシファナ以外愛すつもりもない程に惚れていた時期もあったそうです。その辺りの詳しい話は知りませんが、その後スルッといつもの生活に戻ったようてす。」

クロノ「とんだ英雄様だな。ってか戻れたのか。」

ロナルド「戻れたそうですよ。どうやって戻れたかは、当時の人間にでも聞かないと分からないですが。」

クロノ「ほぉ〜。あんた詳しいのな。」

ロナルド「私は父から、父はその父から、その父は…と、英雄神のお話を子孫に残していくのです。」

クロノ「へぇ〜。そういやさ、英雄神に不老不死が1人いるってのあるじゃん。」

ロナルド「そう…ですね……。」

クロノ「あんた…」

ロナルド「はい?なにか…?」

クロノ「顔に出るタイプなのな。」

ロナルド「なっ⁉︎」

クロノ「もしくは嘘つくの苦手か…。その不老不死の英雄神のことで何かあるのか?」

ロナルド「いや、別に‼︎」

クロノ「本当にか?」

(カマでもかけるか…)

クロノ「例の、俺の命が危ないっての…」

ロナルド「な、なぜそこまで⁉︎」

クロノ「…図星でも黙っとくもんだぜ…」

ロナルド「⁉︎あなた、また私を⁉︎」

外れたら外れたで、自分は関係なくロナルド本人に関係のあることなんだろうという推測が立つだろうと考えていたが、当たるとは思っていなかった。

いや、ここまで簡単に引っかかる奴だとは思っていなかった。

クロノ「お前、知恵の神様の子孫だろう…」

ロナルド「知恵と駆け引きは別物です‼︎」

クロノ「いや、駆け引きも大事だからな?」

ロナルド「うぅ…」

クロノ「とにかくだ。せっかくなんだからしっかり話してもらおうか。俺の命がどうヤバイのか。」

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