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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
1話:さっきぶりの悪役英雄
2/67

その2・Katana girl & Masochistic girl

[クロノ]

クロノ「そぉら‼︎」

女盗賊「ぐわー‼︎」

リースに来て4日目。

今日も今日とて盗賊退治。

退治というか、追い返してるだけだが。

女盗賊「くっ…」

クロノ「ほれ、帰れ帰れ。」

女盗賊が撤退していく。

商人「いやぁ、あんた強いな…どうやってそんな剣出してんだ?召喚士だからか?」

召喚士、というのは文字通り何かを召喚することで戦闘や治療なんかの色々を行うことができる者のことである。

逆に言うと、召喚師は召喚以外の魔法はロクに使えない。

召喚師以外でも召喚はできるが、それらの召喚師以外にはできない大きな召喚もやってのけることができるのが召喚師である。

以前、ガイア・フォレストという仲間がいたが、彼は巨大な鎧を召喚したりできたが、それら以外の魔法は魔力による身体強化ぐらいしかできない。

召喚士という名前は職業ではなく、単に分類分けすることで分かりやすくしているだけである。

召喚師にも2つの種類がある。

魔獣などの生命体を召喚する召喚獣師と、剣や乗り物などの無機物を召喚する召喚技師だ。

後者は割とたくさんいるが、前者の方はここ数百年で1人いるのかどうかすら分からないとのことだ。

その為、召喚師=召喚技師というイメージが付いているらしい。

クロノ「いや、俺は召喚師ではないがな。」

商人「何にせよ助かったよ。ありがとう。」

クロノ「はいはい。いってらー。」

商人が村に入っていく。

クロノ「さて、俺もそろそろ入るかね。今日のお仕事終わりーっと。」

さすがに1日中働くのはダルい。

アリアンテのギルド、「ラフ」にいた頃は仕事がない日があったくらいだ。

「ラフ」とは、以前自分が所属していたギルドだか、数日前の事件でラフを離れることになった。

別に喧嘩別れをしているわけではないが、今ラフには戻れない事情というのがある。


店で食糧を買ってから家に戻る。

クロノ「ただいまー。」

幽霊が天井から顔を出し、出迎える。

幽霊は壁や扉を透過することができるので、帰宅するとよく2階から顔を出してかたりするが、

クロノ「なんで俺の部屋にいんの?」

幽霊が身振り手振りで伝えようとするが、やはり声が聞こえず、何を言おうとしているか分からない。

クロノ「まぁいいや。ほら、晩飯作るぞ。」

といっても、簡単なものだ。

パンにベーコンをのせた物。人参、白菜、ピーマンの野菜炒めの2つ。

リースの村長であるルーガルから報酬はたくさん貰ってはいるが、まだ傭兵稼業を始めたばかりなのでそんなに贅沢はしない。

幽霊はスプーンや箸といった食器の類には触れないが、パンやお菓子などのような食物には触れるようだ。

野菜炒めは手づかみで食べているが…

手づかみだからか、手づかみのくせになのか、凄く大胆な食い方だ。

一応幽霊は喜んではいるようだ。

自分が来る前はいったい何を食べていたのか…

というか物を食べれるのか…


夕食を終え、ベッドに入る。

(そろそろ、アジトに突撃訪問してやるかね…明日か明後日にでも…)


次の日の朝。

いつものように起き、台所で朝食を作る。

パン、それから白菜と豆のスープ。

自分は朝はそんなに食欲が湧かないタイプだ。

一応食べるには食べるが、そんなには食べない。

高校の頃は、朝はシリアル一杯が普通だった。

スープを作っていると、後ろで何か音がした。

振り返ると、幽霊が大根と大根を叩いて音を鳴らしていた。

この幽霊は食物以外は触れない為、何かを伝える時はこうやって何かしらの食い物で音を鳴らす。

クロノ「どうした?腹でも減ったか?朝飯なら今できたばっかだが…」

幽霊が玄関の扉を指差す。

クロノ「なんだ外に何かあんのか?」

扉を開ける。

家の前で2人の女の子が倒れていた。

(見た感じどちらも17,8といったところか?)

まだ朝も早いので、外に人がいない。

誰も気付かなかったのだろう。

クロノ「おい、あんたら!大丈夫か!おい⁉︎」

ポニーテールの方の女の子が手を伸ばす。

クロノ「おい!」

すると、大きな腹の虫が鳴る音が…

クロノ「腹…減ってる…のか…?」

ポニテ「………」

クロノ「とりあえず…飯でも食ってくか…?」

ポニテ「…はい……」


クロノ「ほらよ。熱いから気をつけろよ。」

2人の女の子を家に上げる。

ポニテ「ほぉああ…3日ぶりの…」

ロング「…いただきます…」

ロングの方はいかにも大和撫子といった感じの少女だ。

ポニテは逆に日本人感というものはない。

アリアンテの東側にある町にイクツキという、日本の江戸時代じみた町がある。

ロングの方はそこの関係者だろうか。

いや、ああいう町は他にもあると聞いたし…

それよりも2人の持っていた物が気になる。

(刀に長い棒…棍ってやつか?つまり、どこぞの傭兵か…。戦える力があるならこんな子らでもあり得るか…レオだってまだ10歳前半くらいだったはずだし…)

クロノ「あれ、幽霊ちゃんは…」

辺りを探す。

天井を見ると、顔を少しだけ出していた。

(隠れてるつもりだろうが…逆にホラーだぞ…)

2人の方を見る。

ポニテの方がスープを器を持ち上げてゴクゴク飲んでいた。

(いや待てそれって)

クロノ「それ沸騰させたばっかの超熱いやつだぞおい。熱くねぇの?」

ポニテは体をビクンビクンさせながらも飲んでいる。

隣のロングもそれを見てさすがに引いているようだ。

ロングの方が自分の分のスープを少し飲もうとしたが、当然熱く、ちびちびと飲んでいる。

ポニテが器を置く。

心なしか顔が赤い。

いや、熱いものを飲んだのだから赤くなるのは普通だが…

クロノ「大丈夫かよ?熱くないの…?」

ポニテ「いえ、熱いんですけど…それでいいんです…」

何者だよこの子。

ロング「あぁ〜えーとその〜気にしないでくださるとありがたいというか…この子ちょっと…アレなので…」

クロノ「マゾってやつか…」

ロング「えーと…はい…」

なかなか濃い奴を拾ってしまったな…。


ロング「ご馳走様でした。」

ポニテ「ごちそうさまでした。」

クロノ「お粗末さんでした。さて。」

2人の向かい側の椅子に座る。

クロノ「とりあえず色々聞きたいことはあるが…まずは名前から教えてくんないかな?」

ロング「はい。私はイクツキのギルド、「月光」から来ました、アイゼン・サクラと言います。」

ポニテ「私も同じく「月光」から来たジュリ・ロランと言います。」

2人ともイクツキの関係者だったか。

イクツキのギルドといえば、ちょっと前にイクツキで連続殺人を解決した時にそこで知り合った男がギルドを作ると言っていたが、本当に作りやがったとは…

クロノ「俺はカミヅキ・クロノ。そんで、イクツキどうしてこんなところに行き倒れになりに来たのよ?」

サクラ「えっと…この村にカミヅキ・クロノという方がいると聞いて…」

ジュリ「知ってますか?」

俺をお探しかよ。

クロノ「カミヅキ・クロノってのは俺だが?」

サクラ「本当ですか⁉︎」

クロノ「う、うん。」

ガタッといきなり立ち上がるのに驚いてしまった。

サクラ「あ、ごめんなさい。えっと…イクツキのギルドのことは知ってますか…?」

クロノ「アマノ・クロウがギルドを作ろうとしてたのまでは知ってるけど、あいつ?」

サクラ「はい。そのクロウさんからお手紙を預かってまして…これです。」

サクラから手紙を差し出されるが、

クロノ「すまん。俺、字読めないからさ…代わりに読んでくんない?」

サクラ「あ、はい。分かりました。」

『カミヅキ・クロノ様へ


どうも、アマノ・クロウです。

こうやって手紙を書くのは初めてだから何書いたらいいか分かんないけどお前相手だから別にいいよね。

シーラから色々事情は聞いたぞ。

随分大変なことになってるっぽいな。

傭兵始めたっていっても1人じゃ何かと大変だろ?

つーわけでうちの従業員を2人そっちに送ったるぜ。

その子らは中々腕はたつが、ちょいとキャラが濃い。

でもま、あんたにはお似合いだとは思うぞ。

必要なかったら送り返してもいい。

そんじゃ、新生活がんばれ。


アマノ・クロウより。』

サクラ「と。」

クロノ「もうシーラにバレてんのかよ…早すぎだろ…」

サクラ「この手紙を渡すのと、クロノさんの元で働くという為にイクツキからここまで来たのですが…」

クロノ「それ何日前の手紙?」

サクラ「3日前です。」

ってことは2日目でばれたのか…

クロノ「歩きで来たの?ここまで結構距離あるだろ?」

馬車で1日かかるかからないかというような距離なはずだが…

サクラ「いえ、始めは馬車だったんですが…途中で魔獣に襲われて…私達は怪我はしなかったんですが、魔獣の先制で馬が殺されてしまって…」

ジュリ「もう半分も進んでいたのでイクツキに戻るよりかはそのままリースに行った方がいいかと思ったんですけど、道中魔獣に襲われて体力がどんどん少なくなって…」

クロノ「んで、俺んちの前で力尽きてたと。」

サクラ「はい…。」

クロノ「ま、運が良かったな。」

ジュリ「それで…どうします…?」

クロノ「どうしますって…」

そんな辛い目にあってまでこの村に来た子に帰れなんて言えないし、人手が多いと助かる。

クロノ「こっちとしてはうちで働いてくれるのは大歓迎だ。」

サクラ「分かりました!頑張ります!」

クロノ「あーでもなー…」

サクラ「どうしました?」

天井を見る。

幽霊がちょこんと顔を出す。

ジュリ「ゆ、幽霊⁉︎」

サクラ「かわいいー‼︎」

クロノ「お?」

幽霊見て第一声がかわいいとは…

サクラ「なんとなくこの家から幽霊の気配を感じたと思ってたけどホントにいたなんて‼︎」

クロノ「どゆこと?」

ジュリ「あの子昔から霊感が強いっていうか…幽霊に目がないっていうか…」

クロノ「なんとなく察した。あんたらキャラ濃い。」

ジュリ「そうですか?」

クロノ「お前が1番濃いんだよ。」

ジュリ「いやそんな…」

クロノ「褒めてねぇ。」

ジュリ「もっと強く言ってくれても」

クロノ「言わねえからなこのやろう。」

ジュリ「もっと物理的に」

クロノ「しねぇよタコ。」

頭を叩く。

ジュリ「あぁ‼︎これ‼︎」

絶対こいつの方が濃い。

今まであった中で多分トップ。

俺としては嫌いではないが、どうしたものか。

気味が悪いというわけでもないし、気持ち悪いとも思わないが…本当にこういうやつがいたのかと驚いてしまう。

まぁ、俺も人を叩く蹴るは嫌いではない。

仲良くなれ…なっていいのだろうか…。

クロノ「あー、あー、ちょっといいか?そいつのことなんだが…」

サクラ「は、はい‼︎この子の言葉は私たちに通じないみたいですね。」

クロノ「そうなんだよ…。だから意思疎通が難し…そうだ。あんたらなら出来るかな?」

紙と黒色の人参のような野菜を取り出す。

これはカリツォというこの世界特有の野菜の1つで、ありえない程苦いが栄養価は高い。

調理の仕方ではその苦さを上手く活かせる(かもしれない)。

また、もう一つの特徴は粉を固めたようなもので、人参のように焼いたり茹でたりではなく、パウダーのような役割で使われることが多い。

そのため紙の上で擦ると紙にカリツォが付くので、鉛筆としても使える。

クロノ「これで筆談できるんじゃないか?あんたらなら。こちらの声は向こうには聞こえるからこっちは喋りでさ。」

サクラ「なるほど‼︎」

幽霊にカリツォを渡し、紙を机に置く。


サクラ「えーと、あなたのお名前はなんですか?」

幽霊が文字を書く。

サクラ「『リミ』…『リミ・ハルツ・レヴァイン』だそうです。」

クロノ「リミ・ハルツ・レヴァイン…。意外とゴツい名前だったな。じゃあ、リミちゃんだな。」

サクラ「えーと、何歳ですか?」

幽霊は首と手を横に振る。

クロノ「乙女に年齢は聞くなってのはどの世界行っても同じか。」

サクラ「えーと他に聞くこと…」

クロノ「いつからここに住んでるだ?」

サクラ「それも年齢聞いてるってことじゃ?」

クロノ「死んでからじゃカウントはされないだろ。いつからの人間なのかは知りたい。」

幽霊が紙に書く。

サクラ「20年前だそうです。」

クロノ「20年前か…結構前だったんだな。」

ジュリ「私らが産まれる前だね。」

クロノ「あとは…朝起きたらいつも俺の部屋にいるが、あれはなんでだ?」

サクラ「な⁉︎」

クロノ「あ、いや…変な意味じゃなくて」

サクラ「羨ましい‼︎幽霊から夜ば」

クロノ「なんなんだこの2人。ってか書き終わってるぞ。読んでくれ。」

サクラ「うぅ…えーと……『守りたかった』?『夜は危険だから、寝ている間に私が起きてた。』だそうです。『迷惑だったか?』ですって。」

なるほど、こいつなりの親切だったのか。

クロノ「いやむしろありがたいが、リミがそれで寝不足だとかにならないのかなとは思うな。」

サクラ「えーと…『幽霊は寝不足にならない。寝る必要もない。』だそうです。」

クロノ「ほー。まぁ、何にせよ嬉しいよ。ありがとう。」

幽霊はクネクネと体を動かす。

サクラ「うー…私の方に来てくれても‼︎」

クロノ「あんたらは何があっても死ななそうだから大丈夫だろ。」

サクラ「私たちはか弱い乙女ですよ⁉︎」

クロノ「か弱い乙女は刀とか棍とか持たねぇよ。」


クロノ「まぁ、とにかく。色々と分かりたいことが分かって良かった。さてと俺はちょいと出かけなきゃならん。んでリミにはいつも通り留守番を頼むとして、あんたらにはちょいとお願いがあるんだがいいか?」

ジュリ「さっそくお仕事ですか?」

クロノ「この村を出入りする馬車が盗賊に狙われてるのは知ってるか?」

サクラ「変な気配はするなとは思っていましたが…知りませんでした。」

クロノ「まぁ、生身だったら狙われないのかは知らんが、馬車に積まれてる食い物やら何やらが狙われてるんだ。んでこないだ奴らのアジトを聞き出せたんだ。俺がそこに行ってる間村の門はあんたらに任せていいか?」

サクラ「はい‼︎任せてください‼︎」

クロノ「村長さんにも言っとかなきゃな。」


クロノ「というわけです。」

ルーガル「分かりました。それでもう行かれるのですか?準備などは…」

クロノ「準備は済ませてますし、拠点を攻めるってのは気まぐれなタイミングで行くのが1番効果的なんですよ。びっくりさせるわけですから。」

ルーガル「まぁ、あなた程の腕があれば大丈夫でしょう。どうかご無事で。」

クロノ「はいよ。そんじゃ、頼んだぞ。」

ジュリ「はい‼︎」

サクラ「お任せください‼︎」

さて、アジトに攻め入るわけだが…

クロノ「奴らが応じてくれるかねぇ?」

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