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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
3話:悪者街と情報屋
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その8・a werecat

[クロノ]

キキョウのアジト。

クロノ「というわけで、倒してきた。」

キキョウ「そうか…」

首は途中で捨ててきた。

クロノ「後はドルグマノの連中に何とかしてもらうよう頼んであるし、大丈夫だとは思うよ。」

キキョウ「あそこのトップも何だかんだ悪人じゃがな。」

クロノ「そりゃまあそうだけど…」

ジュリの横にいるワーキャットの少女を見る。

アジトに帰ってくるなり、ジュリに飛びついてきた。

すっかり懐いている。

クロノ「まぁ、これ以上マフィア組織壊滅させても余計混乱させるだけだ。マフィアってのは何だかんだで秩序だからな。」

キキョウ「それも間違いないな。」

ジュリ「あの人は?シリューシカさん。」

先輩を救助して先にアジトへ帰した。

キキョウ「奴なら今別室でケアを行っておる。とはいえ…」

クロノ「この町にはトラウマが多すぎるってか?」

キキョウ「うむ。もう無いものとはいえ、カノディアの恐怖は消えない。しかもこの町での出来事だったんじゃ。そう簡単に癒えはせんじゃろう。」

クロノ「ならこの町から離れればいいんじゃないか?」

キキョウ「それはそうじゃが…」

クロノ「うちのギルド、まだ部屋は空いてるはずだし、うちでなら預かれると思うが。」

キキョウ「よいのか?」

クロノ「ついでだよ。あんたにもうちのギルドに来てもらわんといかんしな。」

キキョウ「ありがたい。」

クロノ「部下思いなのなーあんた。」

キキョウ「なんじゃ急に。おだてても何も出はせんぞ?」

クロノ「いや、そこまで部下に気を回せるなんてさ。すげぇと思うよ。」

キキョウ「なんでもよかろう。ワシは別に人間嫌いではない。ワシはワシを嫌わない奴以外は嫌わん。それだけじゃ。」

クロノ「なるほどね。」

キキョウ「さて、ではシリューの所へ向かうとするかの。」


シリューシカが先輩のケアを行っているという部屋に入る。

シリューシカは先輩の手を握り、必死に言葉をかけ続けている。

カノディアのアジトにいた時より良くなっているようで、少なくとも殺してくれとせがむことはなくなっているようだ。

部下「あ、キキョウ様、クロノさ…様。」

クロノ「いや、呼びやすい呼び方でいいよ。俺もシリューでいいか?」

シリュー「はい!ありがとうございます!そしてジュリ様。」

ジュリ「私は様付け?」

シリュー「女性は様付けで呼ばないと気が済まないというか…」

キキョウ「ナナはどうじゃ?」

シリュー「大分落ち着いてきたとは思いますが、まだ不安定です…。」

この人、ナナって言うのか。

ナナ「ここはいや…こわい…こわい…」

シリュー「とまぁ、こんな感じでして…」

キキョウ「やはりここがダメということか。」

シリュー「今や先輩にとって、この町はトラウマの宝庫といった感じなのでしょう。」

キキョウ「クロノがな。ギルドに来たらどうだと誘ってくれたんじゃ。」

シリュー「え?」

クロノ「この町にいたらダメなんだろ?ならうちに来ればいいさ。そこで療養に専念すればいい。」

シリュー「とても嬉しい申し出なんですが、よろしいので…?」

クロノ「ただしうちのギルドのメンバーとして働いてもらうがな。まずはその先輩さんの療養を済ませること。それがお前の仕事だ。」

シリュー「ありがとうございます!」

クロノ「さて、じゃあリースに戻るか、の前に…」

ワーキャットの方を見る。

ワーキャットは首を傾げ、不思議そうな顔をする。

クロノ「この子を帰さなきゃな。キキョウ、ワーキャットってどこに住んでんの?」

キキョウ「そうだな。口で言うより、実際に行った方が分かりやすかろう。」

クロノ「なら出る準備をして早速出発かな?」


夜になり、キキョウ達を屋上から連れ出し、町の外に出る。

キキョウのような分かりやすい見た目が町を堂々と歩くと、目立ってしまう。

そのため、なるべく誰にも見つからないようにコソコソと脱出する。

馬車に乗り、南のワーキャットが住む集落へと向かう。


キキョウ「今の確か、繁殖期ではなかったな。なら安全かの。」

クロノ「繁殖期だと危険なの?」

キキョウ「男女構わず襲うんじゃよ。」

クロノ「男女?」

キキョウ「繁殖期じゃからのう。」

うわぁ…

キキョウ「ワーキャットには性別は女しかない。それでも子を成せるというのじゃから、大した種族じゃて。」

クロノ「えぇ…」

キキョウ「なんじゃ、そういうのは嫌いか?」

クロノ「いや、嫌いじゃないしむしろ好きだけどさ、キキョウがそういう話題を振ってくることに驚いた。」

キキョウ「年を取ると上品な話ばかりではつまらなくてなっての。たまには下世話なことを言いたくなるんじゃ。」

クロノ「そうなの?」

シリュー「初耳です…。」

キキョウ「ちなみに、どうやって子を成すか知っておるか?」

クロノ「や、想像つくんでいいです。」

キキョウ「ほう。お主の世界にはそういうものはあったのか?」

クロノ「あったけど、現実にはいたのかな?よくわからん微妙なラインだや。ってか、テンション高くない?」

キキョウ「あの町を出るのは100年ぶりじゃからのう。少し気持ちが高ぶっているのかもしれんな。」

なるほど。どうりでさっきから尻尾がバタバタしているわけだ。

ジュリ「その尻尾、柔らかそうですよね…」

キキョウ「触ってみるか?」

ジュリ「いいんですか⁉︎」

キキョウ「うむ。存分に触られい。」

ジュリ「では、失礼して…」

ジュリがキキョウの尻尾に近づき、手を触れる。

ジュリ「すごい…」

クロノ「柔らかいの?」

ジュリ「はい…抱きつきたくなるほど…」

キキョウ「なら抱きついてみるか?」

ジュリ「い、いいので⁉︎」

キキョウ「あぁ。」

ジュリが尻尾に抱きつく。

尻尾に顔をグリグリと押し付け、幸せそうな顔をしている。

クロノ「人をダメにする尻尾ってか。」

ワーキャットの女の子はそれに合わせてジュリに抱きついている。


御者「キキョウ様。着きました。」

キキョウ「ふむ、もうか。」

そこには大きな森が広がっていた。

キキョウ「この森の中にワーキャットの集落があちらこちらにある。確か6個くらいあったかのう。」

クロノ「じゃあ1個1個探すしか…」

キキョウ「いや、その必要はなかろう。ほれ。」

森の中からワーキャットがそろそろと出てくる。

クロノ「なんとなく予想はしてたが…」

ちょっと空気がピリピリしている。

すると、ワーキャットの女の子が森から出てきた群れの中に走っていく。

群れの中から2人のワーキャットが出てきて、ワーキャットの少女を抱きとめる。

親だろうか。

クロノ「感動の再会か。いい話だなー。」

ワーキャットの親と少女は何かを話している。

クロノ「ワーキャットって喋れないんじゃ?」

キキョウ「喋られないのはワシらが話しているこの言語のこと。ワーキャットにはワーキャットの言葉があるのじゃ。人間や他の亜人とは違う生活を送っておったが故かもしれんの。」

やがて、ワーキャットの少女がこちらに戻ってくる。

クロノ「あれ、どしたの?」

馬車を指差す。

クロノ「馬車?連れて行けってこと?」

キキョウ「ジュリに懐いておったからのぅ。ついて行きたくなったのかもしれんの。」

ジュリに抱きつく。

ジュリ「クロノさん…どうします…?」

クロノ「どうするって…」

ワーキャットの少女がジュリに向かって微笑む。

クロノ「そんな笑顔見せられたら断れねぇわな。」

ジュリ「ですよね!」

キキョウ「名前はどうするんじゃ?これから共に行くのであれば、名前が必要じゃろう。」

クロノ「ワーキャットには名前はないの?」

キキョウ「ないはずじゃ。以前ワーキャットに会ったことあるが、名前を聞いたら、そんなものはないと言われた。」

クロノ「会話できんの?」

キキョウ「いいや。身振り手振りで頑張った。」

クロノ「あぁ……じゃあ名前が必要だな…そうだな…名前か……」

猫らしく、そして可愛く…

クロノ「ミーア、ってのはどうだ?」

キキョウ「ミーアか。可愛らしい名前じゃな。」

クロノ「じゃあ決まり。お前はこれからミーアだ。よろしくな。」

ミーアは今までで1番明るい笑顔を見せて頷く。

言葉は通じないが、意思は通じるようだ。

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