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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
3話:悪者街と情報屋
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その3・Killing request

[クロノ]

クロノ「生首?」

キキョウ「そうじゃ。カノディアはこの町のマフィアで1番大きく、その影響力も絶大じゃ。」

キキョウを仲間にする為にはマフィアのボスの生首を持ってこなければならないらしい。

クロノ「なに、あんたそういうグロいのが好きとかそういうこと?」

キキョウ「そういうわけではない。奴が死んだという証拠があればなんでも良いのじゃ。」

クロノ「そんなに死んでほしい相手ってことか?マフィアが?」

そりゃマフィアと情報屋なんて色々とトラブル抱えそうな関係ではあるが、お互いがあってこそ地位が保てるってもんじゃないのか?

キキョウ「なに、只の復讐の手伝いをしてほしいってだけじゃよ。」

クロノ「復讐だ?」

キキョウ「以前、カノディアのボスがワシの所に来てお主の情報をよこせと言ってきた。」

また俺かよ。

キキョウ「他の者と同じように、ワシは対価を要求した。したらあやつ、殺されたくなかったらタダでよこせと言ってきおる。今まではそんなことしなかったのにのぅ。ワシはそれを拒否した。金さえ貰えれば協力するのだ、ヘタにワシを殺すことはできんからな。じゃが奴はワシではなく、ワシの部下に手を出しおった。」

ジュリ「部下が殺されちゃったんですか…?」

キキョウ「それだけならまだマシじゃよ。もっとひどい。奴らの下衆さが溢れ出ておったわ。」

ジュリ「なにを…」

キキョウ「お主も過去に経験したことはあろうて。」

ジュリ「私も…?なにを…」

クロノ「どういうことだ?」

キキョウ「ジュリとまだその話はしていないのか?仲間なんじゃから信用して話してやってもよかろうに。いや、1ヶ月だったら、仲間として見ることはできても、心から信頼を預けるにはちと難しいかもしれんな。」

ジュリ「…………」

キキョウ「思い出してきたかの?お主が変わってしまった原因が。」

クロノ「変わってしまった原因…」

サクラから聞いたやつか?不愉快な事件とかいう…

クロノ「ジュリ?」

ジュリ「アレ…ですか?アレなんですか?」

ジュリの顔が青くなっていく。

キキョウ「アレと言われても分からんが、おそらくそのアレで合っとるじゃないかの?」

クロノ「大丈夫かジュリ!」

ジュリ「大丈夫です…ちょっと嫌なこと思い出しちゃったっていうか…」

クロノ「嫌なことって…何があったんだ?」

ジュリ「私が…変わってしまった時のことです…」

クロノ「変わってしまったって何が…」

キキョウ「この葉じゃよ。」

キキョウが葉っぱを1枚見せる。

見た感じ普通に木に生っている葉っぱだが…

クロノ「なんだそれ?」

キキョウ「これはラパレリャと言って、麻薬の原料となる葉じゃ。」

クロノ「麻薬⁉︎」

キキョウ「その驚き方から察するに、お主の世界にもそういったものはあるということかの。ラパレリャは非常に強いクスリじゃ。得られる快楽は大きく、身体に悪影響が及ぶことはない。が、その代わり人格に与える影響は凄まじく、他の麻薬の比にならん程だ。快楽を得る目的よりは、誰かの尋問や拷問、又は精神破壊が目的なんかで使われる。だから麻薬を扱う業者の中には、これに関わりたがらない者もいる。」

一種の兵器じゃねぇか。

クロノ「それをこのタイミングで話してくるってことは…」

キキョウ「ジュリもそうじゃが、ワシの部下もこれを使われ、犯された。はっきり言ってやろうか?レイプじゃ。」

クロノ「ジュリ…」

ジュリ「でも私は…まだ大丈夫な方でした…」

キキョウ「ラパレリャを使った人間としては、使用後に理性が残っていた例は初めてかもしれんな。じゃがラパレリャを吸わされた際にやられた『コト』が原因で、マゾヒストになったという可能性が高い。」

クロノ「それでか…」

ジュリ「嫌な経験でしたけど…後悔とか不愉快だったとか、そういうのはないです。だって気持ちいいんですから…」

ジュリは顔が青いままで、過去の事に恐怖しているのだろうが、そのまま口元が歪んだように曲がり、笑顔を見せる。

昔はこんな奴ではなかったらしい。

そこまで壊せる程のクスリなのかあれは…

クロノ「あんたの部下もこんな感じか?」

キキョウ「さぁ、分からん。なにせ連れ去られてしまったままじゃからな。」

クロノ「いつからだ?」

キキョウ「3ヶ月と20日じゃ。」

俺が魔界に攫われて戻ってきたあたりか?

俺がまだラフにいた頃から…

キキョウ「部下を連れ戻してきてくれとは言わん。どうせ壊れてしまっとる。じゃが復讐だけはさせてもらう。ワシにナメてかかったことを後悔させてやる。その為なら必要な情報は無償で渡そう。聞きたいことがあったら聞いてくれ。それ以外のことに関しては、お代は頂く。」


キキョウの部屋を出る。

カノディアはこの町の人間は誰も逆らえない程大きく、またそのボスは冷酷な人間だそうだ。

今までに何人かカノディアに刃向かった奴はいたが、その全てが消息を断った。

運が良ければ、数日後に死体として見つかるらしい。

ボスの顔は分かっているが、その名前は知らないようだ。

なるべく自分の事を外部に知られない為だろう。

クロノ「部下ってのは何人もいるのか?」

部下「はい。様々な分野から優秀な人材をスカウトし、教育されます。情報を集める為に各地に散った部下は100名を超えますが、私のように直接キキョウ様にお仕えできる者は2,3名の限られた者のみです。」

クロノ「100人って、えらくいるな…」

部下「ですがキキョウ様はその100名の顔と名前とを全て覚えています。それだけでなく、その家族構成、好きなもの、どんな思いで働いているか、全てを把握しております。それはキキョウ様が情報屋だからではなく、また、部下が主人であるキキョウ様に刃向かわせない為でもありません。キキョウ様は私たち1人1人を大切な者として扱ってくれるからです。ですから私達も、キキョウ様を信頼し、愛しています。」

クロノ「大切な、か。」

部下「カノディアに連れ去られた部下がどれくらいの日が経ったかを正確に覚えていましたでしょう?それもその表れです。」

キキョウの方も余程信頼していたんだろうな。

クロノ「ジュリ、お前はどうする?」

ジュリ「どうするって、決まってますよ。カノディアを壊滅させるつもりで戦います。」

クロノ「無理はするなよ。」

ジュリ「…無理してでも戦います。私は、あの経験は不愉快じゃなかったって言いましたけど、だからって他の人がしていい体験じゃないです。被害者は私だけで十分です。今この瞬間だけは、私はマゾヒストを捨てて、カノディアを壊滅させることに全力を尽くそうと思います。」

ジュリが怒っているのが伝わってくる。

ジュリも俺と同じように、悪を見て怒り、それを滅ぼす為に殺しを平気でするタイプの人間なのだろうか。

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