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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
3話:悪者街と情報屋
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その2・A informationer

[クロノ]

ナギから手紙をもらって2日後。

ナギの手紙に書いてあったキキョウという女性に会いにリンカに向かった。


初めてリンカを見た感想は、着いた時間が夜ということもあるのだろうが、治安という物がどこかの幻想に置いてきたんじゃないかというものだった。

いや、喧嘩や暴動が起きていないという意味では治安は良い。

ただ、少し通りの方を見れば明らかにヤバイ職業だろうという見た目の男が歩き、向かいから来たまたもやヤバイ雰囲気の男を睨み、少し隅の方を見れば体を売る女が次の男を探している。

路地裏では惚けた表情で空を見上げるボロボロの服の男や女。

ちょうど今、何か粉のような物を吸った男が愉快そうな顔をしたまま空をずっと見つめ始めた。

クロノ「こういう荒れ具合ゲームでも見たことねぇな。」

ジュリ「思ったよりひどいですね…。」

クロノ「どうする、帰るか?俺なら1人でもいけるが。」

ジュリ「いえ!最後まで付き合います!」

クロノ「そうか。帰りたくなったらいつでも言え。ここはさすがに無理していていい場所じゃない。」

とりあえずどうやって情報を集めようか。

男「おい。」

クロノ「ん?」

突然目の前に男が3人現れ、道を邪魔してきた。

クロノ「何の用?」

男A「あんた他所の町から来たんだろ?ここではな、他所の町から来たやつは俺らに金を払うっつー決まりがあるんだよ。」

訂正。治安悪い。

分かりやすいくらいヤンキーみたいなやつ…

ジュリ「クロノさん…」

クロノ「いい歳してタカリなんかしてんじゃねぇよ。働け。」

男A「あぁ?」

クロノ「俺は別に用があんの。それじゃ…」

ジュリの手を掴み、男達を避けて進もうとするが、

男B「おっと待ちやがれ。このまま進めると思ってんのか?」

腕を掴まれる。

男C「嬢ちゃんはこっちだ。」

3人目の男がジュリの腕を掴み、引き離す。

ジュリ「ちょっ、いや!」

男C「へっへっへっ…かなり可愛いじゃねぇのかこいつ…売ればいくらになるだろうな…」

クロノ「おい、ジュリを離せ。」

男A「女より自分の心配をしたらどうだ?安心しろ、女は悪いようにはしねぇよ。」

さすがに自分の仲間を攫われるわけにはいかない。

男の腕を振りほどき、右手にソードを作る。

ソードを横に一薙ぎして、3人の男を貫通させる。

男A「なんだ?今のは…」

クロノ「俺が指を鳴らせばあんたらの体が相当痛い目にあうことになる。」

男A「指を鳴らせばだぁ?やってみろよ、ホラ。」

パチン。

男A「ぐあああああ‼︎」

男B「があああああ‼︎」

男C「いでえ‼︎イデぇええええ‼︎」

クロノ「だから言ったのに。ジュリ、大丈夫か?」

ジュリ「は、はい…」

クロノ「行こう。」

ジュリの手を取って男達から離れる。


宿を探して数時間経つが、空いてる宿がない。

クロノ「本当にひどいなこの町は。どうなってんだっての。」

ジュリ「予想以上ですよこれは…。いきなり絡まれるし、宿は全部埋まってるし…。」

クロノ「こんな町で野宿は馬鹿でもしねぇぞ…」

ジュリ「絶対に襲われますよね…」

いくらジュリでもさすがにそれは嫌らしい。

クロノ「よくもまぁ町として機能してるというか…」

ジュリ「こんな町の町長は一体どんな人なんでしょうね。」

クロノ「とにかく、キキョウの情報を…」

男「カミヅキ・クロノ様ですね?」

また絡まれた。

と思ったが、今度は優男という感じの男だった。

クロノ「あんたは?」

男「こちらへどうぞ。」

クロノ「用事ぐらい言ったらどうだよ。あと、あんたは誰だって聞いてんだ。」

男「シナノ・キキョウ様の元で働かせて頂いております。」

クロノ「キキョウ…?」

つまり、こいつについて行けばキキョウに会える…?

ジュリ「クロノさん、どうします…?」

何かの罠だとしたら…

クロノ「ジュリ、何かの罠だったとしたらお前だけでも逃げろ。」

ジュリ「クロノさんは⁉︎」

クロノ「ハゼット辺りに言えば助けてくれるさ。」

男「ご相談は終わりましたでしょうか?」

クロノ「あぁ。連れてってもらおうか。」

いざという時の為に魔力を溜める。

不意に襲われた時にカウンターを発動できるようにしておく。

路地裏の方へ入っていき、奥へ奥へと進んでいく。

やがて行き止まりに着く。

クロノ「行き止まり?」

男「いいえ。」

男が壁を2回ノックする。

クロノ「?」

少し間を空けて3回ノックする。

すると壁にドアが浮かんできた。

クロノ「へ〜。」

男「どうぞ、お入りください。」

男がドアを開け、中に招き入れる。


中はとても綺麗だった。

というか、なんかこうセンスが…

クロノ「遊郭って言うのか?和風っていうか…裏世界のボスのお屋敷っていうか…」

ジュリ「ゆうかくって?」

クロノ「こっちの話。」

赤い床に赤い手すりの廊下。

手すりの向こうはちょっとした池を模したように水が流れている。

実際の遊郭がこんなものかは知らない。

遊郭自体、そういう娯楽が大昔にあったってくらいしか知らない。

だがなんとなくこの建物の中の雰囲気はそんな感じだ。

いや、建物なのかここは?

クロノ「キキョウの趣味?」

男「はい。」

良い趣味してる。

廊下を進み、扉の前に立つ。

男が扉をノックする。

男「キキョウ様。お連れしました。」

女「入れ。」

中から女性の声がする。


男が扉を開ける。

部屋の中央奥に狐耳の女性が1人。

着物とはまた別の雰囲気の服だが、どことなく和服っぽい。

(やっぱ遊郭だろ。)

ナギの手紙に狐の亜人と書いてあった通り、頭には狐の耳が生え、大きな尻尾が暖かそうだ。

クロノ「あんたがシナノ・キキョウって人?」

キキョウ「その通り。ワシがシナノ・キキョウじゃ。お主がカミヅキ・クロノとジュリ・ロランじゃな?」

ジュリ「私たちの名前を⁉︎」

キキョウ「ワシは情報屋だぞ?ジュリ・ロランの方はともかくとして、カミヅキ・クロノの名前くらいは知ってて当たり前じゃ。」

クロノ「ってことは、俺のこと結構知られてんのか。」

キキョウ「あぁ。お主の活躍は裏の世界ではかなり知れておる。まぁレギオンを倒した貢献者ともなれば知れて当たり前じゃがな。」

クロノ「実際倒したのは俺じゃないんだがね。」

キキョウ「それも知っておる。お主は弱点を見つけたというだけじゃろう?トドメを刺したのはブラン・ロックウェルとジェスティー・ロックの2人。」

クロノ「どこから聞いたんだっての。」

キキョウ「それが聞きたいなら情報料を払ってもらわなければならんな。」

クロノ「そういうことね。」

キキョウ「この世界の通貨のことは知っておろう?そうじゃな…20万バレといったところかの?」

バレ、というのはこの世界の通貨だ。

2バレでおよそ100円。

つまり20万バレとはだいたい1000万円だ。

クロノ「そんな大金持ってな…ちょっと待て。」

キキョウ「どうした?」

こいつ、ニヤニヤしてやがる。

クロノ「この世界の通貨ってのはどういう意味だ?」

なんだわざわざ『この世界は』と言いやがったのか…

クロノ「俺は別に魔界から来たわけじゃねぇんだぞ?」

キキョウ「そんなことは知っておる。」

クロノ「じゃあどういう意味の…」

キキョウ「そうじゃな…ワシはカイズに贔屓にしてもらっていた、と言えば分かるんじゃないか?」

クロノ「カイズだと?」

俺がこの世界に来た原因となった男…。

クロノ「なるほど。つまり、そいつがあんたに俺のことを話したと。」

キキョウ「カイズは死んだわけじゃし、話してもよかろう。カイズは実験とやらをした後にワシのところまで来て、異世界から来た人がどこかに落とされたから探して伝えてほしいと言ってきてな。すぐに探して伝えた。お主が森の中でハゼットに戦い方を学んでいた時にはすでにカイズはお主のことを知っておったさ。もちろん、ワシもな。」

クロノ「結構前から知られてたのな…。ってことはその情報はもう裏世界の色んなところにばら撒かれてるのか?」

キキョウ「いいや、それはない。カイズが他の者に話していない限りじゃがな。少なくとも、ワシは他の者に話してなどいない。」

クロノ「本当だろうな。」

キキョウ「本当だ、と言いたいが証拠はない。信じてもらうしかないの。というか、広まっていないのはあのシーラとかいう娘のお陰じゃぞ?」

クロノ「シーラが?」

キキョウ「あの娘、お主がアリアンテでやったあの嘘の悪事を広めないように、うまいこと情報を外に出さないよう操作をしとる。若い人間の娘のくせに中々の腕を持っておる。ワシが事前にお主のことを知っておらなければワシですら苦労しただろうというほどだ。」

クロノ「あいつ…」

そんなすげぇめんどそうなことを俺のために…

キキョウ「どうしても信じられないというなら…ふむ……ワシの主義を1つ言うとすれば、ワシは情報に見合った対価を貰わない限り、絶対にそのことを話すつもりはない。それがワシの情報屋としての、プライドでもある。」

情報屋のプライドか…。

クロノ「ちなみに聞くが、いくらだったの?」

キキョウ「3億4000万バレ。今までの中で2番目に高額の値を叩き出した。」

ジュリ「3億⁉︎」

約300億円…。

キキョウ「これでも安いかとは思うがな。お主がレギオンを倒したという情報が広まった辺りからワシのところにカミヅキ・クロノに関する情報を詳しく教えろという話が何件も何件も来てのぉ。しかし、皆値段が高すぎると諦めていきおった。」

クロノ「そんなに俺のことを狙われてたの?」

キキョウ「それはまぁ、有名人じゃからのう。ワシがこの業界に足を踏み入れて300年経つが、ハゼットの時ですらこんなに殺到したことはなかった。良かったのう、ワシが頑固な女で。皆なぜそんなにも高いのかと言ったが、さっきも言った通り安いくらいじゃ。格安じゃよ。」

ジュリ「3億が格安って…」

キキョウ「では聞くが、情報という存在が、その者にとってどれだけ危険な物か分かっているのか?」

ジュリ「危険…?」

クロノ「情報ってのはただ単にそいつが何をしたかとか、そいつの容姿がどうだとかが詰まってるだけじゃない。そいつの弱点や表沙汰にすべきでない過去。その他その者にとって不利となる物が詰まっている。下手な凶器より何百倍と危険な凶器だ。」

キキョウ「その通り。しかもクロノに至っては異世界の人間というあまりにも特殊すぎる情報を持っている。ワシですら胸がときめいてしまったくらいにな。初めてその存在を知った時、これを皆に共有したいと思った。だがカイズのようにそれを悪事に使おうとする者がいるのが分かり、これを広めると世界は混乱に包まれるだろうと理解した。だから3億4000万バレという高額な値段にしたのじゃ。本当なら100兆でも足りんと言いたいくらいじゃがな。」

クロノ「そいつはありがたい。」

キキョウ「それで、ワシに用があってわざわざこのリンカにまで来たのじゃろう?言うてみぃ。」

クロノ「あぁ。あんたに、うちのギルドの専属の情報屋として働いてほしいんだ。」

キキョウ「ほう。情報が聞きたいのではなく、ワシのスカウトと…。」

クロノ「俺のギルドがリースにあるのは知ってるだろ?そこ。」

キキョウ「あぁ。別に構わん。裕福な暮らしだとかそういうのは一切気にしてはおらん。空腹になるのだけは勘弁じゃがな。そこよりも、ワシを仲間にしたいというのなら条件があるということはもちろん知っておろうな?」

クロノ「あぁ。すんげぇメンドクセェこと押し付けられるんだろ?龍の鱗とか。」

キキョウ「そんなこた頼んだ時期もあったな。ふふっ、あの男、まだ生きておるかのぅ。」

クロノ「で、俺らは何をすりゃいいんだ?」

キキョウ「そうじゃのう…お主らには……ふむ…」

キキョウがジュリの方をじっと見つめ、ぶつぶつと何かを呟いている。

ジュリ「なんなんでしょう…」

クロノ「さぁ…。なんて言ってるのか全く分からん…。」

キキョウ「よし。決めた。お主らにはこの町を仕切るマフィアの1つ、『カノディア』のボスの首を取ってきてほしい。生首をだ。」

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