第十章 少女は求める(第四部)
屋敷の門から、赤いバンダナをした男が走り出てきた。
門の陰から現れ、その男の首にすかさずナイフを突きつけた美少女。
「聞きたいことがあります。答えてくれるかしら?」
「あっぶねえなぁ。とりあえずしまいなよそれ。こっちも聞きたい事あんだし」
「こちらが先ですわ。まず、貴方は誰?」
ナイフを手元に戻して、シャルローナ。
「それはこっちの台詞。さっきから俺をずっと見てたでしょ。あんた、俺の敵?」
「は?」
確かに様子を見ていたが。
シャルローナの後ろで、ニリウスとクィーゼルが“何だこいつ?”と言う顔をする。
道に転がっていた男から、人身売買の話を聞きだし、屋敷の場所を吐かせた。
その屋敷に着いた時、庭で何十人もの男達を相手に啖呵をきる人間が居れば、誰でも怪しがるだろう。
「あのさぁ……敵か敵じゃないか早く言ってくれないと困るんだよね、俺スウィング待たせてっから」
「「「スウィング!?」」」
三人が口を揃えて聞き返すので、男は目をぱちくりさせた。
「え、何々、知り合いに同じ名前の奴いんの?」
(第二皇子殿下の名前だっつーの!)
クィーゼルは心の中で突っ込んだ。
「スウィングを知っているの!?」とシャルローナ。
「この屋敷に居るはずなんだけどな」とニリウス。
「黒い髪で青い目の奴か!?」とクィーゼル。
「お、おう」
三人の気迫に圧されて、バンダナの男。
「シャルローナ! クィーゼル! ニリウス!」
屋敷からの声に四人が目を向けると、金の髪の少女が緑色のドレスを風に舞わせながら、玄関の前に立っていた。
「スウィングが……!!」
呼ばれていないバンダナ男までもが、この声に反応して屋敷の方に走り出した。




