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第八章 銀の鍵(第二部)

 二人の男は、おもむろに男女に近づき、前に立ち塞がった。

「ちょっと顔貸してもらうぜ、兄ちゃん。そこの姉ちゃんも一緒によ」


 すると、言われた男は足を止めて目の前に立ち塞がった男達を見た。

「申し訳ありません。私、醜いものは嫌いなんですよ。消えていただきたいですね」


 栗色の髪を肩になびかせながら、シンフォニーは微笑んだ。

「誰が醜いだって……?」

「おや、自覚が無いんですか。哀れな」


 シンフォニーの言動に一番オロオロしているのは、隣にいるマリアだった。

「ほら、よぉくご覧なさい」


 シンフォニーは突然マリアを引き寄せて、その上で男達に至上の微笑みを見せた。

「私達は美しい。そうですね?」


「お……おう……」

 訳は分からないが説得力のある言葉だった。


「では、次はお互いの顔をご覧なさい」

 二人の男は、互いに顔を見合わせた。

「貴方達は醜い。そうでしょう」


「あ、ああ……」

「う、むぅ……」

 シンフォニーはマリアを離すと、解説者のように片手を掲げる。


「ここに揺るがぬ事実を再度提示しましょう。私達は美しい。貴方達は醜い。つまり、私達が貴方達の言葉に従う必要は無いということです」

「そ、そうか、なら仕方ないな……」


「では、私達は先を急ぎますので。そちらもお気をつけて」

「あ、ああ、ご丁寧にどうも……じゃねえよ! 何おかしな理屈に丸め込まれてんだ俺達は! おい待てお前!!」


マリアの肩に手を置いて、さりげなく男達の前から去ろうとしたシンフォニーは、面倒そうにため息をついた。


「やれやれ、惜しかったですねぇ……」

「悪いがごちゃごちゃ言ってる余裕はねえ! 力づくでも来てもらうぜ」


 一人の男が剣を抜き、二人に剣先を向けた。

(シンフォニー様!)

 前に立とうとしたマリアの動きを、シンフォニーは左手で遮った。


「下がっていなさい」

 さっきまでの笑みはすっかり消えている。

 瞳は前の二人を見据えたまま、逆らうことを許さぬ口調だった。


 マリアが今まで見てきたシンフォニーのどんな表情よりも厳しく、そして強さを秘めた眼差しだった。

「ほぅ、やるってのか。だが丸腰でどうやって勝つつもりだ?」


 そうなのだ。

 マリアは、シンフォニーがスウィングとは違って、剣術などの武術を習っていないことを知っている。

 加えて武器もない。


「マリア」

 マリアを安心させようとしたのか、振り向かないままシンフォニーは告げた。

「何とかなりますよ。多分ですけど」


(そ、そんな行き当たりばったりな気持ちで勝負を受けないでくださいぃぃぃっっ!!)

 逆効果のようだったが。


 だが、シンフォニーがどうしても戦うつもりならば、自分が傍にいるのは逆に危険だ。

 マリアはそう判断して、躊躇(ためら)いながらもシンフォニーから離れた。

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