アルバとオメガ 7
チューブと酸素マスクを外され、仄白い顔に布切れを被せたオメガがそこにいる。その傍に、アルバが涙を枯らしてじっと座っている。やがて、ほのぼのと空は明るくなってきて、陽光がオメガの栗色の髪と耳を照らした。ふと、プティが顔を上げた。そして体を浮かせては虚空を見つめている。しばらくそうしたあと、ほんとうに淋しそうに、プティが言った。
「アルバ、オメガがお空に昇っていったお」
「うん」
「アルバに似た女の人が一緒にいたお」
「うん」
「オメガは小さかったお」
「うん」
「くりくりとした、おかっぱ頭をしていたお」
「うん」
「にっこり、笑っていたお」
「うん」
「お空に……、昇っていったお……」
* * *
オメガの葬儀はイェオーシュアの時と同じ教会で行われた。参列者にはロイドの家族や仕事先の同僚、ユウの家族、それとシャノワが並び、イェオーシュアが作った、紺色のスーツを着たアルバがプティを肩に乗せて神父の別れの言葉を聞いている。やがて別れの言葉を終えて、母親の隣に位置するオメガの棺の上に土が被されていく。アルバは涙を流しながら、ただ見つめていた。葬儀が終わり、一人、また一人とアルバを励ましては帰っていく。オメガを慕っていたユウは泣きじゃくりながらアルバに言葉にならないことを言い、ロイドは黙してアルバの肩を叩いて帰っていく。
「アルバ、そろそろ行きましょう」
そうシャノワが促すが、アルバはそこから微動だにもせず、プティと一緒に墓碑を見つめている。
「アルバ」
シャノワの声は彼に届かない。十二月の寒空にはいつしか鈍重銀色の雲が覆い、気づけば雪が降っている。
「アルバ!」
シャノワが叫んでも、彼は返事もしなかった。それで彼女は決意をしたのか、その場を走っていってしまった。
――
イェオーシュア=アージェンティーク ここに眠る。
オメガ=アージェンティーク 幼き御霊は母の許に帰らん。
――
墓碑にはそう刻まれている。
アルバはある事を思い出していた。
それはイェオーシュアがオメガを背負い、手を繋いで歩いたあの道。そして共に歌ったあの歌。その歌はオメガを寝かしつける時に歌ったものだ。嬉しい時、楽しい時に歌ったものだ。その歌を教えてくれた母親が居なくなった時、それでも兄弟が歌ったものだ。しかし、共に歌った弟は、約束の地へと翔んでいってしまった。そうしてアルバは地上に置いてきぼりになってしまった。
「はーれーたーるー……、あーおーぞーらー……」
少年の歌が虚しく墓地にこだまする。肩に乗ったプティが、じっとしてその歌を聴いている。
雪だけが悲哀を埋めようと、しんしんと墓碑に積もっていく……。




