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一期一会 第二部  作者: ヤルターフ
第三編 予兆
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英雄との邂逅 10

「W.D.L防衛支部へようこそ。ワオレンジャーの奮迅の働きはいかがだっただろうか。しかし、いかにワオレンジャーが強くとも彼らばかりに負担はかけられない。そこで我こそはという有志を募りたい。我がテラを守りたいという者全員にワオレンジャーの着けている、このT.S.Fバッジを授けよう。諸君等の入隊を期待する。以上」


 そこまで言うとモニターは総司令官の姿からTera.Security.Forcesのロゴに切り替わり、再びレイカが口を開いた。


「聞いての通りである。会場を出る際、一人一つずつ補給兵からバッジが支給されるので安心して欲しい。では諸君、何処の戦場にてまた会おう。さらばだ!」


 こうしてワオレンジャーショウの幕は降りた。会場の出口ではT.S.Fバッジを受け取ったオメガとユウとプティがキャーキャーと遊んでいる。ふと、アルバがシャノワに話しかけた。


「な、なんか……、凄かったね……」

「え、ええ……」


 そのあともオメガ達の強行軍は続き、アルバとシャノワは本当にへとへとになった。そうしてあっという間に夕焼けが西の空に映じてきて、アルバ達はデューイの手配した車に乗りこみ、帰路に着いた。


         *         *         *


 熱狂のW.D.Lから少しく時は過ぎ、八月がやってきた。白く輝いた灼熱の太陽がこれでもかと地面を焼いている。この強烈な日差しに対抗すべくプティが台所の流しにある桶に水を張り、蛇口から出る水に当たりつつ体を浸からせて涼をとっている。


 卓袱台をどかしたリビングに大家からもらった新聞紙を敷きつめ、その上にキャンバスを置き、向かい合う形で丸椅子に座ったアルバが油彩を描いていた。クーラーの無いこの部屋は蒸し暑く、寝室の窓はもちろん、間仕切りも玄関も開け放しているが、それでも焼け石に水といった具合である。あまりに暑いためか、アルバはボクサーパンツだけという格好だ。それにも関わらず、なぜに彼がここまで心血を注いで懸命に筆を取っているか。それはルクレール美術館にあった展覧会に応募するためである。シャノワに促され、ものは試しと描いてみようと思ったのだ。どうせやるなら自分の好きなものを描きたい。そうしていま一心不乱に絵を描いている。そんな中、隣の寝室でがさがさと音をさせて準備を済ましたオメガがアルバに声を掛けた。


「ニーニ、学校のプールに行ってくるお」

「ああ、気をつけて行くんだぞ」

「はいだお、プティ」


 呼ばれたプティが水桶からさぱっと飛びだして、しっかりと蛇口を閉めたのを確認して、それからオメガについていった。外は茹だるような酷暑である。先程まで水に浸かっていたプティの体は太陽の熱により、すぐさま乾いてしまった。にも関わらずオメガは平気な顔して歩いていく。凱旋通りにある百科書店に差し掛かろうという時、夏仕様の白を基調としたメイド服を着たシャノワに出会った。


「こんにちはだお」

「あら、オメガ君にプティちゃんじゃない。これからお出かけ?」

「そうだお、ユウちゃんと一緒にプールに行くんだお」

「そう、お兄さんは?」

「ニーニなら家で絵を描いてるお。そうだお、もしニーニに会うなら夕方まで帰らないからって伝えてお。じゃあね」


 そう言ってオメガが涼しい顔をしてさっさと百科書店に入っていく。そうしてあとには白の日傘を差したシャノワがぽつんと佇立ちょりつしていた。


――いまこそ絶好の(とき)


 彼女の中でレイカ=カツラギがそう言った。シャノワは走った。どこへ? 自身の住む屋敷の寮に。そうして夏ならではの、少し露出が多めの服に着替え、それとなく薄化粧を施して、会いにきた理由をつけるための食材を集め、ようやく準備万端整えて、意気揚々とアルバの居るアパートに歩を向けた。

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