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一期一会 第二部  作者: ヤルターフ
第三編 予兆
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英雄との邂逅 7

 早速アルバ達はわんわんお宮殿に行くことにした。何故にわんわんおが自らの意思を持ち、自由自在に体を浮かせて動くようになったのか。二百年経った現在に至っても、その原因は明らかにされていない。聖霊の化身であるとも、皇国に伝承されている九十九神つくもがみの一種ではないかと様々な説があるが、どれも推測の域を出ていない。ともあれ、この不思議な生命体はレウレトの法律の保護下に置かれ、わんわん王リチャードの秩序の元に結束し、平和を謳歌している。


 宮殿内は三つの部屋に分かれており、名前と所有者の受付をする大広間、謁見の準備を待つ応接室、それから謁見をする王の間となっている。アルバ達は宮殿前の円庭で待つことにし、オメガとプティは宮殿の門をくぐった。大広間にある受付にて手続きを済ませると、侍従長じちゅうちょうであるわんわんおのクリスティンが応接室に案内した。一番乗りしたためか、応接室にはオメガ達の他にはおらず、近衛兵このえへいの帽子を被ったわんわんおしかいない。しばらく待っていると先程のクリスティンがやってきて、オメガ達を王の間に案内した。


 浅葱色あさぎで統一された王の間には金色の唐獅子からじし模様を刺繍した赤絨毯が敷かれていて、その両脇に高さ一メートル程の台座が五つ並べられ、その上に金銀モールの華やかな軍服を着用した近衛兵であるわんわんおが誇らしげに乗っかっている。オメガ達がクリスティンのあとについて赤絨毯の中央を歩いていくと、


「この椅子に座って待たれよ」


 とクリスティンに促され、オメガは緊張した面持ちで用意された丸椅子に座り、プティは傍らにある白の台座に乗った。少ししてクリスティンが、


「わんわん王リチャード陛下、御出座ごしゅつざ!」


 と言い、軽快なラッパの音とともに紫地のビロードを纏い、頭上に月桂樹の金冠を載せた、バスケットボール大のわんわんおがのっそりとやってきた。そして悠然と玉座に乗るや厳かに竜ひげを揺らして挨拶した。


「余がリチャードである。苦しゅうない、楽にしてよいぞ」

「オ、オメガです! 王様に会えて光栄です」

「うむ。して、そちの願いは何ぞ?」


「親友のプティが市民権を持てると聞き、ここにきました」

「あいわかった、その方等の願いを叶えようぞ。クリスティン」


 リチャードに呼ばれ、クリスティンがメモ帳を持って側に寄る。


「ふむふむ……、ではル・プティ・カポラールよ、この台座の上に乗りたまえ」


 クリスティンに促されてプティがリチャードの前にある台座にゆっくりと乗った。


「剣をこれへ」


 リチャードが言うと、二人の近衛兵が小さなバラーシュ(※洋式の直刀)を持ってプティの頭上に掲げた。


「ル・プティ・カポラールよ、汝は主君オメガに忠勤を果たすことを誓うか?」

「誓うお」

「よろしい、わんわん王リチャードの名の下に、汝をオメガの家来とする。もう戻って良いぞ。クリスティン、証をこれへ」


 言われてクリスティンが小さな盆にドッグタグの付いた首輪を乗せて持ってきた。


「これはわんわんおにシェイン族同等の権利を証明する物である。オメガ殿、プティに着けるのじゃ」


 オメガが首輪を着けてあげるのを確認してリチャードが続けた。


「市民プティよ、これでそちは正式に自治区の市民となった。これからも主君に良く仕えるのじゃぞ」

「はいだお!」

「王様、ありがとうございました」

「うむ、二人で力を合わせて仲良く暮らすのじゃぞ。では達者でな」


 オメガとプティは一礼して王の間をあとにした。

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