英雄との邂逅 6
――わんわん戦隊ワオレンジャー――
当時子供達の間で大流行し、大人をも巻き込むほどの社会現象にまでなった特撮ヒーロー番組である。主人公の変身や巨大ロボットの変形合体が放送されるや、瞬時に子供達のハートを鷲掴みして、さらにヒーローの爽やかな笑顔が世の奥様方のハートを蕩けさせ、そしてヒロインの健気に闘ういじらしい姿に男子のハートはことごとく焼き尽くされた。
赤、青、黄、緑、桃の戦闘服に身を包んだ、暁の五戦士が宇宙から来た悪の組織、パトロンネルの侵略からテラを守るべく闘う。一方は侵略者から星を守るために、一方は母星が滅び、安住の地を求めるがために闘うというこの物語は複雑な思惑と、交差する人間模様があいまって、視聴者に深い感銘を与えた。
そろそろオメガ達が見終わる頃なので話を進めるとしよう。テレビの画面には夕陽を背景にして佇むワオレッドの背中が映り、哀愁漂うギターの音が流れている。
「ふう、おもしろかったお」
そうオメガが満足気にうなずいている。しかるに深刻な面持ちをしてプティが返事した。
「まさかアルデバランが交通事故で死んだリョーコお姉さん(※ワオピンク)の婚約者だとは思わなかったお」
「でもシュウ(※ワオレッド)はリョーコお姉さんと付き合ってるお……、続きが気になるお」
「来週も見逃せないお」
二人は真剣な表情でうなずきあっていた。ちょうどその時、アルバが部屋の間仕切りを開けて寝室から出てきた。
「おはよう」
「おはよーだお」
「オメガ、朝ごはんとお弁当作るから布団と掃除を頼む」
「わかったお」
朝食を食べ終え、支度を済ませ、忘れ物はないかと確認して、それから兄弟はプティを伴って玄関を出た。途中で百科書店に寄り、ユウを拾ってわんわんお広場へと向かう。広場にはシャノワが先に待っていて、そこで合流してわんバスに乗るはずだった。確かに広場のわんわん像の前にシャノワはいた。しかしシャノワの隣には見慣れない一人の男が佇立していた。そして総髪白髪、長身痩躯を黒服で包んだ男がアルバ達を認めると、深々とお辞儀して言った。
「おはようございます。私、デューイと申します。本日は御屋形様の命により、W.D.Lの送迎を任されました。よろしくお願い致します」
突然のことに戸惑いながらもアルバが返事をし、オメガとユウも元気よく挨拶した時、なぜかシャノワはぎこちなかった。
「では皆様、車にご案内致します。こちらへ」
言ってデューイは統領府の門前にあるリムジンにアルバ達を招き入れる。デューイが助手席に座ると、リムジンはゆるゆると発進した。リムジンの中は運転席、助手席、客席となっており、間に間仕切りが設けられている。客席の前方にはプティを挟んでオメガとユウが窓の外を見ながらキャーキャーと叫んでいる。ふとシャノワが申し訳なさそうに口を開いた。
「アルバ、ごめんね」
「なにが?」
「急にこんな風になっちゃって。御屋形様に話したら子供達だけだと危ないだろうって……」
「ううん、気にしてないよ。むしろ感謝している。オメガ達もあんなにはしゃいでるからね」
「うん、ありがとう」
そうこうしているうちにアルバ達を乗せたリムジンはW.D.Lの地下駐車場に入り、デューイに伴われて進んでいく。そして従業員専用出入口を通り抜けてW.D.L管理センターのエントランスに到着した。
「夕刻の五時までにはこちらの管理センター前に集合して下さい。なにかありましたら近くの係員やガイドのわんわんおにお知らせ下さい。では皆様、ごゆるりとお楽しみ下さい」
「デューイさん、ありがとうございます!」
オメガが言うと、デューイは微笑しつつ一礼して一行を見送った。




