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一期一会 第二部  作者: ヤルターフ
第三編 予兆
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英雄との邂逅 5

 夕飯を終えた憩い時、アルバが言った。それは次のようなものだ。W.D.Lにいる王様に会えば、プティは晴れてシェイン自治領区の市民権を得ることができるようになると。そして今度の日曜日には王様に拝謁に伺うと。


――わんわんおの王様! 一体どのような姿をしているのだろう?


 オメガとプティの好奇心は大いに刺激された。


――よくテレビで見るあの子供達の憧れの的、ワオレッドに会える! さらに握手もできるかも知れない!


 オメガとプティの興奮たるや凄まじいものだった。


 入浴後、オメガはリビングにてアルバが持ち帰ったW.D.Lのパンフレットをばさっと広げて作戦会議を開いた。会議の内容はというと、どのようにお目当てのアトラクションに行くかという優先順位を決め、そのための最短経路を検討するものである。他にもお弁当はいつ、どこで食べるか。トイレの場所はどこか。当日の服装は何を着ていくか……。とにかく、ありとあらゆる想定をして三人で話し合い、綿密に計画を立てていた。当日に大雨が降らないようにと、オメガとプティは実に百個ものてるてる坊主を作っては部屋中に飾っていて、そうしてとうとう出発前夜になると、オメガの興奮は最高潮に達していて、それがためになかなか寝付けなかった。


 血湧き肉躍り胸高鳴る思いをしていた、この小さな少年の脳中では、いまやワオレンジャーと自分とプティが力を合わせて闘っていたのだ。舞台は荒涼たる大地が広がり、遠くの空には断雲がさつ々と流れ、吹きすさぶ風が砂塵を巻き起こしていく。相手は宇宙征服を企む悪の組織"パトロンネル"であり、その刺客である合成怪獣に立ち向かう勇姿がぐるぐると繰り広げられている。そんな妄想がこんこんと湧き出てきて、そのせいであまりにしっぽがうずうずして仕方がない。なので早く朝にならないかと、凱旋通りの福引きで当てたわんわんお目覚まし時計をきりきりと回してみる。そうして起きる時間まで回してみると案の定、


「わんわん!」


 と時計がけたたましく鳴る。それで、


「うるさい!」


 とアルバに怒られる始末であった。


 戦士にとって、休息もまた重要な仕事である。ふとした拍子に先のような古人の言葉が浮かび上がってきた。なのでようやくオメガは眠ることに専念した。


 翌早朝、兄弟の寝ている寝室の窓の外で、てんてんと二、三羽の雀が跳ねている。そこへ突然がらっという窓を開ける音がしたので、雀達はびっくりして草むらの中に飛び込んでしまった。窓を開けたのはオメガだった。目を覚まし、えいっと毛布を空に蹴り上げ飛び起きて、出発の日の天気を確認するためにひょこっと顔を出したのだ。それについでプティがオメガの肩に乗った。真っ白な朝日がオメガのおかっぱ頭を照らし、ために栗色の毛は金色に輝き、プティの古ぼけた木彫り風の体はてかてかと飴色あめいろに光っている。


「プティ、今日はいい天気だお」

「早く王様に会いたいお」

「フフッ……、そうだお! もうすぐワオレンジャーが始まる時間だお」

「ワオピンクがアルデバランの素顔を見てあんなにびっくりしていたのが気になるお。早くリビングにいくお」

「わかったお」


 言うやオメガとプティは窓を閉め、寝ているアルバを起こさぬよう忍び足でリビングに行き、テレビのスイッチを点ける。ちょうど画面にはワオレッドが、


「W.D.Lで僕と握手!」


 と言った後、"わんわん戦隊ワオレンジャー"のロゴが出て、勇壮な音楽とともにワオレッドが颯爽さっそうとバイクに乗って現れた。

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