真夏の夜の夢 9
「陛下、どうか頭を上げて頂きたい。陛下の願いはこのレウレトがしかと賜りました。どうかその御心を安らかになさって下さい」
「かたじけない……!」
レウレトは有言実行の男である。そして即断即決が彼のモットーだ。すぐさま彼はデューイに口授して桜華街郊外に待機しているわんわんお達を迎える準備をさせた。
「御屋形様、万端整いましてございます」
「わかった、リチャード王」
「うむ、では参ろうぞ」
こうしてリチャードを含むわんわんお達はレウレトが施行する法律の保護下に置かれ、W.D.Lの仕事に従事しつつ平和に暮らしている。そしてW.D.L内にわんわんお宮殿を造り、玉座にはリチャード王が鎮座していて、王は週に一度宮殿の門を開いて謁見を許可し、来客と共したわんわんおに市民権を与え、主君に仕える使命を教えている。
* * *
アルバとシャノワは庭園にある大きなけやきの木の下で昼食をとりながらピエトロの話を聞いていた。日差しは相変わらず強かったが、木陰とテーブルに備え付けられている天蓋のおかげで涼が取れるようになっている。周囲を見渡すと、この庭園の手入れをするためにわんわんお達が力を合わせて剪定をしたり、水まきをして虹を作っている。
「大変だったんだね」
アルバがおにぎりを持ちながら言うと、みかん色のピエトロが答えた。
「でもいまは幸せだお。王様とルクレール公のおかげだお」
「よかったわね」
シャノワが笑顔で言うと、ピエトロは宙返りした。
「王様にはいつ会えるんだい?」
「次の日曜日だお」
「今度は弟とプティを連れてくるよ」
「それは良いことだお、仲間は大歓迎だお」
そうピエトロが喜んでいると、首に巻いてあるドッグタグから電子音がした。
「おっと呼び出しだお、道に迷ったり、わからないことがあったら遠慮なく呼ぶんだお。では素敵なデートを」
言ってピエトロはひゅーっと空に飛んでいってしまった。それから二人は昼食を舌鼓しつつこれから行くアトラクションの相談をして、意気揚々とその場をあとにした。
この宏大なる敷地を有するW.D.Lには様々なアトラクションがある。それは定番の絶叫マシーンや知恵を駆使して宝探しをする冒険アトラクションであったり、巨大水族館に熱帯植物園、わんわんお達の妙技が光るわんわんサーカス、子供達に大人気のワオレンジャーショウ等、とても一日では廻りきれないほどである。まず二人はアルバの提案で水族館に行った。空を泳ぐマンタの優麗な姿に二人はため息をこぼし、ジンベエザメの圧倒的存在感に声を飲んだ。ここではアザラシとの記念撮影が人気で、もちろん二人は参加した。どうやって撮るのかはいたって単純である。ウェットスーツに身を包み、頭にガラス玉を装着したわんわんおが水中にいるアザラシを呼び寄せるのである。そして時機を見計らって撮影担当の係員がシャッターを押すのだ。シャノワはことのほかこの写真が気に入ったのか、しばし見つめては微笑んでいた。
記念撮影を済まし、水族館をあとにした二人が次に向かったのはシャノワが提案したホラーアトラクションである。その外観はというと、当時は白亜の美しい屋敷だったのだが、いまではすっかりとうらぶれた姿に成り果ててしまっている。この屋敷には今もなお冥府に逝かずして怨念を宿している貴族の霊が現れるというのだ。そこでこの貴族の霊を鎮めるためにやってきた二匹のわんわんおを見つけ、共に館内を探索するというものである。




