真夏の夜の夢 5
開発当初、皇国と米帝を除く諸外国は失敗に終わるのではと、冷ややかな視線を送っていた。しかしいざ蓋を開けてみると、W.D.Lは大成功であった。それもそのはずである。彼はこの事業が成功すれば皇国の経済復興に大きく寄与すると、関係企業に協力を得るべく自ら精力的に説得していたのだから。また自身のコネクションを駆使して米帝から経済学者や土木工学の権威、それから経営コンサルタントを招集して、綿密に計画を練っていたのである。もって知るべし、彼の頭脳の明晰なるを。だがなによりも、彼の想像する夢の世界に万民が興味をそそられた。そうして期待を胸に携え来てみれば、レウレトの想像した夢の世界は子供のみならず、大人までも魅了してしまった。
さて、彼の話はこれくらいにして、そろそろあの初々しいカップルの様子を覗いてみよう。
わんバスはW.D.Lの正門前に着き、わんわんお広場に鎮座するわんわん像よりも巨大なわんわんおがアルバとシャノワを出迎えた頃、時計は正午を回っていた。二人が受付でチケットを渡し、一つ門をくぐる。するとそこには、摩訶不思議なる幻想世界が眼前に広がっていた。ぐるりと見渡せばプティのようなわんわんおがそこかしこに浮いていて、歌や音楽を奏でつつ来場者を温かく迎えている。さらに空を見上げれば、ひゅうっという音をさせて十匹ほどのわんわんおが陣を成して次々と曲芸飛行をしている。しばらく二人はこの夢のような光景に見とれていた。そうしていると、ふいにシャノワの肩をついついとつつくものがあった。
「あれ? いま、わたしの肩さわった?」
「いや、さわってないよ……、シ、シャノワ!」
そう言って色めき立つアルバが指差した方へシャノワが見ると、みかん色の毛をした一匹のわんわんおが目の前に浮いていた。
「やあ、驚かせてごめんだお」
「し、しゃべってる!」
そうシャノワが驚くと、慣れた様子でわんわんおが答えた。
「そりゃあしゃべるお」
「どうして言葉を話せるんだい?」
そうアルバが尋ねると、
「僕達の王様が教えてくれたんだお」
とみかん色をしたわんわんおが宙返りしつつ答える。
「王様って?」
首を傾げつつシャノワが尋ねると、わんわんおがまた言った。
「わんわんおの王様だお。王様はとても大きくて、すごく頭がいいんだ」
「へえ、そうなんだ」
とアルバ。
「今日は王様に会えるの?」
そうシャノワが質問すると、みかん色の犬耳を萎ませてわんわんおが答えた。
「残念だけど今日は居ないんだお。ぼく達の王様はやんごとなき御方だから、めったに外には現れないんだお。おっと、自己紹介が遅れたおね。ぼくはピエトロ、これから君達二人を案内するお」
「ぼくはアルバ、彼女はシャノワだ」
「よろしくね、ピエトロ」
シャノワが挨拶すると、ピエトロは嬉しそうに犬耳をパタパタさせていた。
「ピエトロ、ぼく達お腹空いたんだけど、どこかで食事できる場所はないかな?」
そうアルバが尋ねると、
「じゃあぼくの後ろに着いて来て、案内するお」
そう言ってピエトロはふわふわと進みだした。




