ル・プティ・カポラール 7
「それで、どうなったの?」
「それは一瞬の出来事で、見えたかと思うと物体は遠くの空を映す大きな鏡のような物の中に入っていってしまったんだ。そして物体が全てが鏡の中に入ると、その鏡もパッと消えて無くなってしまった」
「すごいお!」
「もちろんそばにいる仲間にも言った。観測士にも伝えた。だけど信じてもらえなかったんだ。レーダーには映ってないと言われてね」
「そうなんだあ……」
「うん、でもこの本には僕の見たものと近いものが載っていた。詳しいことはこの本にあるから、家に帰って読むといいよ
「わかったお、ありがとうだお」
「それじゃ、そろそろ行かないと」
「どこへ行くんだお?」
「あれの自慢大会さ」
とフェデリコが盆栽に目を向けつつ続けた。
「そうそう、もう少ししたらユウが帰ってくるから、良かったら一緒にお昼を食べていきなさい。娘にはそう伝えておくよ」
「お世話になるお」
そう言ってオメガはフェデリコを勝手口まで見送った。
縁側に戻るとプティが鼻歌を奏でていた。それはベートーベン作、交響曲第九番の第四楽章で、一度聞いたら二度と忘れることの出来ない、あのメロディである。そのリズムは子供が新しいおもちゃを買ってもらい、これで友達と一緒になって遊べるという心持ちで足取り軽く、胸を張って肩を揺らしていくようなものだ。そういったプティの感情が流露して辺りに響いていく。それを聴いてオメガも自然と肩を揺らした。
「プティ、楽しそうだね」
「ベトベン大好きなんだお」
「おっお、いまから本読むから少し静かにするんだお」
「わかったお」
プティがふわと浮いてオメガの肩に乗り、そうして一緒に本を読み始めた。
× × ×
――至聖郷へ――
エルフ族の起源は神々がこの地上にいた時代にまで遡る。
――光あれ。
至聖神がそう唱えると、世界は光に満ちた。その次に生命の育まれる源として宇宙を創造し、星が生まれた。そして厳然たる真理と秩序を保って星は成長を果たす。数多煌めく星々の中で、青き水に包まれた、美しいのを至聖神は見つけた。興味を持った至聖神はこの星をテラと名付け、大地と生命を創るべく、一人娘の生命神ロゼッタを送りこんだ。生命神ロゼッタは大地に草原と森を創るため、エルフを生んだ。そうして緑と青に覆われた美しい星に成長していった。
百年に一度、天女が天界から舞い降りて、羽衣でふわと巌を一撫でして帰っていく。百年経つと天女はまた同じことを繰り返す。そうして巌が削られ、全て砂粒になるという時が経過すると、遥か遠方より方舟に乗って飛来した人間が移り住むようになった。人間は森を焼き、大地を切り拓いて村を作り、次第にそれは街となって独自の社会を形成していく。その様子を見ていたロゼッタは心を引き裂かれ、我が子を殺されたような悲しみにくれていた。落涙するロゼッタの悲しみを癒やそうと、運命神フォーチューンは至聖神の所有する秩序の羅針盤を持ちだした。かくして運命の歯車が動き出す。




