親友との再会 2
二人は統領府内にある紅の間に案内され、そこで一時間ほどゲストのもてなしを受け、それからデューイに伴われて公務室に通された。赤絨毯が敷かれた執務室に入ると、人々が憩うわんわんお広場が一望できる大窓が二人の目に飛び込んできた。少しく左に視線を移すと、数々の功績を讃える勲章や盾が納められた細工戸棚、その隣に格子型の棚があって、たくさんの丸めた地図が納められている。反対側を見ると深紅のビロードが壁一面に掛けられていて、その中央には二つの塑像が置いてある。一つはナポレオンで、もう一つはランカスターだ。その隣に深紅の背広が掛けられていて、傍らには身長が一六十センチあるかわからない一人の小男が後ろ手に組んで鈍重銀色の雲を眺めていた。七対三に分けた赤髪、鏡面加工を施した偏光サングラス、白のワイシャツに赤いスカーフを巻き、深緑色のチョッキに深紅のスラックスを履いたレウレトだ。その彼が振り向いて右手を軽く掲げると、ソラリスが笑顔で敬礼した。
「大将! 久しぶり!」
「おまえは相変わらずだな、ソラリス」
「第三統領就任、おめでとうございます」
「ありがとう」
「しかし元々立派だったのに、さらに立派になっちゃったなあ」
「よせよせ、肩書きが増えてもオレは変わらん。塹壕を掘っていた頃からな」
「大将、統領になってどんな気分?」
「うむ、精神は剣よりも強いことを実感している」
「それって?」
「戦争で得たものは、どうしても壊れやすいものだ。だが平和における永久的事業で得たものは壊れにくい。なぜなら常に創り続けているからだ。我が輩はいま平和を創ろうとしている。平和は民衆の力無くして創り得ない。民衆の力こそが一番重要なのだ。彼はそのことを良く知悉している」
と、レウレトがナポレオンの塑像を指してそう言った。彼はよくこうしてナポレオンの名を口にして引き合いにすることが多かった。というのは多くの青年がナポレオン伝を読んで挑戦していったように、彼もまた若かりし頃に精読し、影響を受けた一人であったからだ。
「ところで、そちらのご婦人は?」
「へっへー、オレの奥様」
「ミーファです」
「結婚したのか」
「そうなんだよ! もう可愛くて仕方がないんだ……。奥様とこうして居れるのは大将が鍛えてくれたおかげだよ。本当にありがとう」
「いや、おまえの明るさと詩が兵とオレを慰めてくれた。英霊を代表して感謝する」
そう言ってレウレトは右手を左胸に当てた。
「プラシドはどうしてる?」
「兄さんはホテルで歌のレッスンをしてるよ」
「そうか、奴の歌にもずいぶんと励まされたものだ」
「兄さんが聞いたら喜ぶよ」
「うむ……。さて、そろそろ本題に入ろう。こう見えてなかなか忙しくてな」
ソラリスはジュストの手紙を渡すと、封を開けて読み終えたレウレトが大息した。
「アルフレッドか……」
「大将、なんかわかったことある?」
「依然、行方不明だ。軍は捜索を打ち切った。可能性があるとすれば、モスクワから国境を渡って欧州に行ったかも知れん。何かあればコンサル(※ジュストを差す)を通して報告しよう」
「ありがとうございます」




