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一期一会 第二部  作者: ヤルターフ
第二編 純情詩篇
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散雨月下 4

 会議を終えると、夕飯の買い物ついでにシャノワを招待すべく、午後の一時半にオメガはアパートを出立した。兄弟の住むアパートから凱旋通りを抜けて、市場までの道のりは子供の足で約十五分ほどである。まず、オメガは八百屋に行き、玉ねぎとじゃがいもを買った。人参は嫌いなので、わざと買わなかった。次に肉屋に行き、豚バラ肉を二百グラムと、わんわんおカレー甘口を一つ、それからコロッケを一個買った。肉屋を後にして傘をさしつつオメガがコロッケを食べ歩いてゆく。行きつけの本屋に向かう途中、シャノワの姿を肉眼にて確認した。そして右手首で口を拭い、指についた油を半ズボンに擦りつけると、


 前進!


 そう号令してシャノワめがけて突進した。


「シャノワお姉さん、こんにちわだお」

「あら、オメガ君こんにちは。お買い物かな?」

「そうだお」

「雨の中大変ね、オメガ君は偉いわ」

「おっお、お姉さんはどこかいくのかお?」

「うーん、絵を描いてもらおうと思ったけど、さすがにこの雨だとできないわよね」

「今日はお休みなのかお?」

「ええ、そうよ」

「なら家に来ないかお? 家なら雨は関係ないお」

「えっ……、いいの?」

「いいお、ニーニきっと喜ぶお」

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかしら」

「やったお!」

「お兄さん元気?」

「ずっとため息してたけど、お姉さんが来たら治ると思うお」


 つとシャノワがオメガの前に立ち、こう聞いた。


「どうして?」

「うーん……、どうしてもだお」

「お姉さんに教えて」

「おっおっお、行けばわかるお」


 さらさらと降りしきる雨の下、好奇心からくるシャノワの質問をのらりくらりとかわしながらオメガがてくてくと歩いていて、そのあとにシャノワがついていく。広場から十五分くらいで閑静な住宅街に入り、アルバの居るアパートの前に到着した。


「ついたお」

「ここがオメガ君とお兄さんのお家?」

「そうだお、ちょっと待つんだお」


 言ってオメガはズボンのポケットから鍵を取り出して、ドアを開ける。そうしてシャノワを中に招いた。


「ただいまーだお」

「おじゃまします」

「お茶作るから座布団に座ってるんだお」

「ありがとう」


 返事をしてシャノワがオメガについていく。短い廊下を渡り、リビング兼台所に出て彼女が部屋を見回した。リビングの奥に和室があって、風が入るように窓と襖は開けてある。リビングの床にはカーペットが敷かれていて、真ん中に卓袱台ちゃぶだいが置いてあって、その上にかすみ草を飾った一輪挿しの花瓶がある。少しく左に目線を移すとシャノワは思わず目を見張った。なぜならそこには橙色のソファにねそべっていて、ティーシャツがめくれたために肌を露わにした、口を開けて眠っているアルバが居たからだ。


 やにわにシャノワがオメガに近寄って、ひそひそと耳打ちする。


「ちょ、お、お兄さん、寝て……」

「起こすかお?」

「う、ううん、起こさなくていい!」


 言ってシャノワが猫のようにして移動する。そうして卓袱台を挟んでソファに真向かい、座布団に腰を降ろすと、そのまま固まってしまった。シャノワのつぶらな瞳には何が映っているのだろう。紙のように白い太腿からスラリと伸びた脚、ティーシャツがめくれた部分からは程よく引き締まった腹筋が見えている。口を開けたアルバの寝顔にはいつもの凛々しさは無く、子供らしいあどけなさが残っている。

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