その0
全ての始まりはその日の昼休みから始まる―
■一日前■
キーンコーンカーンコーンと退屈な授業の終了と、恐らくこの教室にいる学生達のほとんどが待ちに待っていたであろう昼休みの始まりを告げる鐘の音がいつものように学校中に響き渡る。
それと同時についほんの5秒前まで静かに授業を受けていた生徒達が一斉に席を立ち、皆思い思いにわいわいがやがやと行動を始めた。
いくつかの机を1つにまとめ、数人で一緒に食事を始めるグループ集団もいれば
サイフとケータイだけ持って1人で教室の外へ出て行く者や5分で食事を済ませ授業中はロッカーの中にしまっておいたサッカーボールを取り出し運動場へと駆け出す数人の男子達の姿もあった。
ごく普通の高校生達の教室の風景。
どこにでもある何の変哲の無い青春の1ページ。
しかしそのごく普通の風景の中に1つだけ、いや1人だけ。
ごく普通ではない少年がいた。
その少年は教室の窓際の席にピタリと座りただひたすらに窓の外に広がる景色を眺めていた。
ただ眺めているだけならば決して不思議でもなんでもないのだが周りの人間から見るとどう考えても普通とは言えない要素が1つ彼にはあった。
それは彼が本日学校に来て窓際にある自分の席に着いてから1度として動いていない事である
ただ椅子に座りながら窓の外を眺めるだけ
まるで魂の抜けた人形のようにピタリとも動かないのである。
しかしもちろんの事彼は人形などではない列記とした人間だ。
その証拠にただひたすら窓の外の景色を眺め続けるだけである彼の瞳にはただひたすら窓の外の景色を眺めているだけだと言うのにも関わらず異常なまでの生気を感じた。
まるで何かを待っているかのようにその瞳は期待に満ちていた。
■放課後■
「なあオマエ今日一日中何見てたんだ?」
その後何事も無く普段通り過ぎ去って行った昼休みと午後の授業。
結局彼はその間食事をとる事も誰かと会話をする事も無くただ窓の外に目線を向け続けるだけでただの1度も1ミリも動きを見せる事は無かった。
そして訪れた放課後
教室内にいる生徒達は昼休み同様思い思いに活動を始め教室の中にいる生徒達の数も時間が経つと共に段々と減り初めていた。
そんな中1人外の景色を眺め続けているだけの彼に話しかける少年がいた。
その少年の名は光魏健斗
茶色で耳元まで伸びた少しくせ毛気味な髪、ボタンを外しだらしなく着崩した学生服。
いかにもな最近の男子高校生である。
「・・・・・」
本日学校に来てから初めて誰かに話しかけられた彼だが決して返事をする訳でなく、ただ外の景色を眺めるだけだった。
「おいおいシカトかよお・・・なーに見てるんだよ?」
「・・・・・」
「なーあーよー」
「・・・・・」
「なあってばー」
「・・・・・」
「なーあー」
「・・・・・」
どれだけ健斗が話しかけようと少年が返事をする事は無かった。
「あーもーどうしたんだよー?お前ちゃんと息してるかー?大丈夫かー?・・・ホントに生きてるよな?」
一瞬ヒヤリと思いながら健斗は少年の樺尾を覗き込む。
少年は今もなお外を見続けている。
その瞳には確かに生気が宿っている事を健斗は確かに確認した。
「ま、死んではいないみたいだな。でも一日中動かないなんてちょっと不気味だぜアキ?とりあえず俺はもう帰るぜ、もう外も暗くなってきたしな!オマエもいつまでもボーッとしてないでそろそろ帰れよな?じゃな」
と、言って健斗は教室から出て行った。
その間も少年ー神池秋は一言も喋る事は無く
教室の中に誰もいなくなるまで彼はただひたすらに教室の外を眺めるだけだった。
■当日■
午前中に神池が学校に来る事は無く
健斗意外の生徒は誰もその事を気にする事を無かったが昼休みになって唐突と姿を現した神池の姿にすべての生徒は驚愕をした