祟りなどあるはずもない
十年ぶりに友人の墓を訪ねた。
十数年も前に自殺した友人の墓だ。
「久しぶり」
声をかけても返事はなし。
当然だ。
目の前にあるのはただの石。
その中にあるのはただの骨。
石や骨が会話できるはずもなし、仮に魂などというものがあったなら人はもっと死者と交流できるはずだ。
「ようやく出てこれたよ」
そう言って笑う。
相手もいない以上はこれもただの自己満足。
そう理解しているのに出所後これだけはしようと心に決めていた。
「な? 言ったとおりだったろ? 死者に生者は殺せないって」
友人は首を吊って死んだ。
虐めを苦に死んだのだ。
聞きたくもないけれどここまでならよく聞く話だ。
しかし、その後が珍しい。
なにせ、こいつときたら死ぬ前に言っていたのだ。
『呪い殺す』
と。
口癖のように。
歴史のあらゆる場所に非業の死を遂げた者が生者に復讐をする話は存在する。
無論、この国にも。
早い話、友人はそれをしようとしたのだ。
あるいはそれに縋るしかなかったのか。
いずれにせよ、友人を虐めた者達にとって友人の自殺はただの笑い話にしかならなかったけれど。
早い話がその程度のものなのだ。
虐めをするような人間にとって虐めた相手など。
「呪いなんて便利なものがありゃ良かったのにな……いや」
そう言って線香を一つあげる。
もし呪いなんてものがあったなら、自分ももう少し楽な生き方ができたのに。
なんて、思っても口にしない。
どうせ、この場所には誰もいないから。
「なくて良かったか。しがらみが消えるんだから」
そう呟いて自分に纏わりついてしまった目に見えぬ縁を想う。
情状酌量の余地はあり。
例え他人がそう思おうとも。
例え世間がそう認めようとも。
遺族ってのは永遠にそれを認めぬものだ。
「お前に任せてりゃ良かったな」
なんて。
心にもないことを呟きながら。
「それじゃ、また来るよ」
意味ない時間を一つ終えた。




