表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄に調教された舞神が私を抱く夜 〜囚われの皇女が箱庭を壊すまで〜  作者: はなたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/8

第3話 幼なじみ

今夜も玄武殿に来るなんて――。



震える指先を袖の中に隠して、琉克と白蓮の元へと向かった。



昨夜のことは、暗闇が見せた幻だと思えばいい。そう、自分に言い聞かせる。


私は重厚な扉を押し開いた。



「皇太子殿下、愛漓が参りました」


「――遅かったな、愛漓。今夜は私的な場だ。白蓮にも無礼講でと話したところだ。おい、全員下がれ」



琉克の短い命令で、侍女や家臣たちが音もなく退室する。



「さぁ、早く座れ」



琉克に促され、私は二人の正面に腰を下ろした。



琉克は上機嫌で、琥珀色の酒が入った杯をゆったりと揺らしている。そして、その隣。



「久しぶりですね、愛漓様」



鈴を転がすような、清らかで涼やかな声。切れ長の瞳が真っ直ぐに私を捉えている。



「おかえりなさいませ、舞神様」


「やめてください。いつものように、白蓮とお呼びください」


「では……、おかえりなさい。白蓮」


神々しいまでに整った微笑を浮かべる。


月光の下で見る華美な舞台衣装ではなく、今日は深い紫色の衣を纏っている。一輪の清らかな蓮の花そのものだ。



淫らに乱れていた男など微塵も感じさせない。



「しばらく見ないうちに、また美しくなりましたね」


「いえ、ご冗談を」


「いや、本当だよ。縁談もさぞ多いだろうに。琉克様がすべて断っているのかな?」



白蓮の言葉に、兄が低く笑って応える。



「愛漓には、極上の男でないとな。凡夫に触れさせるわけにはいかない」



琉克が杯を傾けると、白蓮は黙したまま酒を注いだ。


その横顔をそっと見つめる。少し尖った顎から、細い首筋へと視線を滑らせるが、そこに昨夜の痕跡などない。


悪い夢でもみていたのだろうか。



「僕の顔に、何か付いているかい?」



不意に白蓮に覗き込まれ、私は飛び上がらんばかりに驚いた。



「いえ、白蓮が綺麗だから、つい見とれてしまいました」


「愛漓様にそう言っていただけるなら、長旅の疲れも吹き飛びます」



白蓮は、少しだけ悪戯っぽく微笑んだ。


その笑顔は、幼い頃から優しく高潔な憧れの人の顔、そのもの。



「確かに白蓮の美しさは、この大陸で随一だからな。それに、愛漓は昔から白蓮を好いているからな」


「お兄様、余計なことを言わないでください!」


「今朝も、白蓮のことを案じて鼻血を出していたほどだ」


「もう!違うわ、白蓮!お兄様ったら、お酒が過ぎるのではなくて?」



私は顔を真っ赤にして睨んだけど、琉克は楽しそうに喉を鳴らすばかり。



「ああ、そうだな。少し酔ったようだ。どれ、少し外の風に当たってこよう」



そんなまさか。お酒には強いはずなのに。しかも、どれほど飲んでも顔色ひとつ変わらない。



「白蓮、愛漓の相手を頼んだよ」


「仰せのままに」



白蓮の長い睫が伏せる。



「そうだ、愛漓。あとで白蓮に茶をいれてやれ」


「え?あ、お兄様……」



琉克はそう言い残すと、優雅な足取りで席を外した。



静まり返った広間、大きな食卓。その片隅に、見覚えのある茶筒が置いてあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ