表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
兄に調教された舞神が私を抱く夜 〜囚われの皇女が箱庭を壊すまで〜  作者: はなたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/12

第12話 新たな命と続く呪縛

父上が隠居し、琉克が皇帝として即位してすぐ、琉克は私と白蓮の婚姻を推し進めた。



気付けば私と白蓮は夫婦になっていた。



与えられた新居は、宮廷の北端に位置する玄武殿。


琉克が白蓮を飼い慣らし、幾度となく絡み合わせた場所であり、私と白蓮がはじめて結ばれた場所でもある。



この殿の柱も、寝台の帳も、すべてが琉克の目が潜んでいるようだった。


それでも、玄武殿という私たちの箱庭で、私たちは静かに愛を育んでいった。



「おかえりなさいませ」



寝所に帰ってきた白蓮を迎える。



「愛漓、会いたかった」


「今朝も会ったばかりではないですか」


「なにを言う、もう半日以上経っている」



その腕に抱かれて気付く。


白蓮の瑞々しい睡蓮の香りの奥に、別の香りが混ざっていることに気付く。



――白檀の香り。



その香りを漂わせた夜は、必ず白蓮は激しく私を求めた。



「……っ、ああ、愛漓……!」



それが、朝でも昼でも、まして深夜であれば尚更。苛烈なまでに熱くなる白蓮。


深い秘部を執拗なほど攻め立てられて、私は何度も絶頂に達し、果てることを繰り返す。



「あっ、あぁ……白蓮、も、もう……」


「まだ、まだだっ……!」



私を腰が砕けるほど強く抱き寄せ、首筋に何度も熱い口づけを落とした。いや、それは口づけではない。



やがて、重なり合う肌の熱が少しずつ冷えてゆく。さっきまでとは別人のように、優しい腕の中。



「白蓮、私はどこにも行かないわ」



白蓮は苦しげに喉を鳴らして、私の胸元に顔を埋めた。



「愛してる。本当なんだ……」


「ええ、疑ったことなどないわ」


「あなたに溺れずにはいられない。たとえこれが、底なしの沼だと分かっていても」



白蓮の瞳に宿る、昏い執着。



「愛している、愛漓。前も今も、これからも――」



お兄様の監視は、まだ続いている。



「は、白蓮っ!」



再熱する身体。


舌が絡み合い、息が詰まるような深い口づけ。琉克への憎しみと、私への狂おしいほどの愛が混ざり合い、彼の身体を突き動かしている。



白檀の香りに溶ける思考。



だけど、真実を追求してしまえば、この穏やかな箱庭が内側から崩れてしまう気がしたから。




◆◆◆




それから三年の月日が流れた。



「ただいま」



地方巡業から帰った白蓮に飛び付いたのは、私たちの息子の黎克だ。



「ちちうえ!」



初夏の陽光が降り注ぐ玄武殿の庭。


白蓮は二歳の誕生日を迎えたばかりの愛息子を抱き上げた。



名前は黎克(レイク)、名付け親は皇帝の琉克だ。



白蓮は父親らしい柔和な笑みを浮かべ、私と息子を見つめている。



すくすくと育つ黎克の横顔。


あろうことか白蓮よりも、琉克に似てきていることに、私の心は乱れるばかりだった。



白蓮の腕に抱かれる黎克。



整いすぎた唇の端の歪め方は、白蓮のそれではなく、紛れもなくあの皇帝――琉克のものだった。



……この子は、白蓮の子なのに。



考えを振り払うように、私は白蓮の胸に顔を埋めた。



「愛漓、どうした?顔色が悪いようだが」


「いいえ、少し立ちくらみがしただけ。それより、白蓮、あなたに伝えたいことがあるのよ」



そう、いまは少しネガティブになっているだけよ。


白蓮が帰ってきたのだから、今夜こそ話さなきゃ。きっと喜んでくれるから。



「あのね、私――」


「ああ、すまない。皇帝に呼ばれているんだ」


「え、お兄様に?」



まさか、また……。



「黎克、お母様を困らせないようにな」


「はい、ちちうえ」



力強くうなずく仕草までもが、琉克の生き写しに見えて、私は目眩を覚えた。



一度も振り返らずに玄武殿を去る白蓮。



その背中を見送りながら、新たな命を宿すお腹に手を当て、ただ闇に飲み込まれていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ