守
私はとある男に恋をした。運命の出会いとはこの事なのだろう。彼は私に尽くしてくれた。とても幸せだった。結婚して、子供も産まれて。人生がどんどん良い方向に進んで行き、いつしかそれに慣れてしまっていた。
ある日の朝、夫が珍しく早起きして家族写真を眺めていた。「どうしたの?」と聞くと、「いや、何でも」と答えて笑った。見た事の無い笑顔だった。あの時はそんなに気に止めていなかった。
それから急に家事を手伝い出したり、子供の送り迎えに行くと言い出した。訳を聞くと、「ちょっと本を読んでね。気づかされたんだ」と少し悟ったような顔で言った。まるで中身が変わったみたいに。それから、いつの間にか夫とあまり話せなくなっていた。人間らしくない、と感じていたのだ。
そんなある日、夫が交通事故にあった。凄く悲しかったけど、心のどこかで少しホッとした。複雑な電話を受け取り終わったその時、不意に落とされるような感覚に陥った。
気がつくと小さい手足の子供になっていた。鏡を見た瞬間、驚いた。娘の身体になっていた。でも、心の奥底で娘の泣いている声が聞こえた。私はとりあえず娘を助ける為、動いてみた。ドアノブをガチャガチャやって、誰か人が通るまで待った。
何分かすると、警察がきてくれた。安心したのか、身体が娘に渡りまた泣き出した。警察と一緒に父と母が来てくれているようだった。
それから、娘が泣きそうになったり、落ち込んだりした時に私が守るようになった。娘は私の事を守と呼ぶようになり、文通のような事もしだした。娘はいつも頑張り過ぎてしまうため、日に日に私に頼る様になった。頼ってくれるのは嬉しかったけれど、中々立ち直れない娘を見るのは辛かった。
そんな時、私の遺体が見つかったという連絡が来た。隣人の部屋にあったらしい。何が何だか全然分からなかった。でもこれから隣人と話せるようになるらしい。娘と変わってしまう覚悟をしながら向かった。
「大きくなったね、お嬢さん」
その笑顔には見覚えがあった。ずっと愛し続けた笑顔だった。
私の身体を隣人に取られたというのはかなりショックだったけれど、あの人が生きていて、この子が生きていて、それを私が眺めている。それだけで満足だった。再び帰ってこれたのだ。この家族に。娘は私に変わる事無く夫の話を最後まで聞いていてくれた。
読んで頂きありがとうございました。我ながらなかなか凄い物語を考えていたんだなあと思ってしまいました笑
アフタースクールライフという小説を一話ずつ公開しているので、そちらも是非見て頂きたいです。




