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第2話 転生

「いや、もう一度言わなくていいから」

『あらそう?』


 女神さまは私の思考を読む。喋らなくても伝わるから隠し事はできない。


「それはともかく、転生特典が不老不死と賢者だけっていうのは無理ゲーではないでしょうか」

『無理ゲーね。なるほどなるほど、ゲームというものが無理な難易度なのね』


 女神さまは日本の事にも詳しい。私の頭の中を通して知識を得たのだ。私は覚えてないのに。ええ、そう。私、本はたくさん読むけれど、すぐ手の届くところに本があるし、どこに何を書いてあるか覚えていたから無理して記憶する必要ないって思ってるタイプだった。そしたらこの始末。異世界で現代知識無双を!――って思ったけれど、ド忘れして肝心な詳細を全く思い出せない。ハーバー・ボッシュ法みたいに。


 しかしそんな記憶でも女神さまは覗けるらしい。


「賢者の祝福って『鑑定』しか力が無いもの! 魔法が使えたりとか、何で無いの!?」

『魔法はがんばって覚えてもらうしかないわね。覚えた魔法はちゃんと()()覚えてられるから』


 魔法は主に、神さまたちから授けられる神性魔法と、魔術文字を読み上げて使う魔術の2種類がある。神性魔法はほぼ才能らしい。私にはその才能は無い。魔術については、魔術文字が翻訳されない。いや、そもそも文字は翻訳されないのだ。だから覚えるのが大変で、まだ挑戦していない。


 そして、面倒なのが記憶だ。


「ていうか、なんで毎回、転生すると記憶がほとんど無くなっちゃうの!? 生まれ変わりの利点が無くなっちゃうじゃない」

『それは仕方がないわ。だってあなた人間ですもの。人間は、記憶の過剰な蓄積に絶えられないの。あなたたちは身体の寿命だけで老衰してるつもりでしょうけれど、感情を伴う記憶を増やしすぎると頭も齢を取るのよ? 忘れることも大事なの』


 何度か聞いたけど、記憶を全部残して生まれ変わり続けると、脳が老化し、いずれ発狂するらしい。ともかく、それが理由で前世の記憶を有効活用できないでいる。どこかで会ったような気がする相手でも思い出せないのだ。デジャヴで片付けられない。


「なんだかこう……かゆい所に手が届かないんだよね、私の力ってどれも」

『でも、今回は魔王まで辿り着いたでしょう?』


「行きたくて行ったんじゃないんですけど!? 勇者とか見つけちゃって、成り行きで同行しちゃっただけで」

『魔王を倒して貰えて助かっちゃった』


「あ、倒せたんだ。よかった。あ、てかアレなに! ビーム出たよビーム!」

星界魔術師(アスター)が紛れ込んでるなんて思わなかったのよ。許してね(はあと)』


(アスターって個人の名前じゃなかったんだ……)


 この女神さまは、時々人知を超えた言葉をポロリと出してくる。星界の海(アストラル)だの時空の穴(ワームホール)だの、この世界の人間が知らない言葉――神々の知識を平気で出してくる。おかげで現地人と齟齬(そご)が生まれる。世界の真実を知っているようでちょっと嬉しくもなるけれど、証明できないならそんな知識など、狂人の戯言でしかないと知った……。本当、役に立たない……。


「もうちょっと、何というか平和な時代に生まれ変わりたいの!」

『あらそう? でも、話してる間に帝国が滅んじゃったから、しばらくは暗黒時代よ?』


「なんてことしてくれたの!」

『私のせいじゃないもん。じゃ、そろそろ生まれ変わってね(きらりん)』


「あっ! あーっ! ちょっと! もっと平和な時代に――」


 結局、私の願いは聞き遂げられず、再び地上へと戻り、人の子として生まれ変わったのだ。







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