真実の愛
私は伯爵令嬢。ごくごく平凡な令嬢である。少し違うとこがあるとすれば前世の記憶があるというところ。あとは目立たないモブである。
今夜は王太子殿下の誕生日のパーティーに参加している。壇上には王太子殿下と婚約者……違う、あれはあのピンク髪の女性は婚約者の妹のマリアだ。なんで?と言うかかもしかしたら前世で流行った真実の愛を見つけて婚約破棄?
ちょっとワクワクしながら王太子殿下の言葉を待つ。
「エリザベス、いるか?」
王太子殿下の呼びかけに応えるエリザベス様。今日も素敵な騎士服姿……夜会にまで騎士服はどうかと思いますが。彼女はれっきとした公爵家令嬢。あの豊かな胸に埋もれてみたい。いやそれより殿下は何をするのだろう。
「エリザベス、貴女との婚約を白紙に戻させていただく」
「御意」
「私は真実の愛を見つけてしまった」
キタ~、真実の愛。前世でも流行りましたよね、死亡フラグ立てるやつ。すると隣にいるマリア様、エリザベス様の義理の妹が次の婚約者ですか?
「マリア!」
「はい」
「貴女とエリザベスの婚姻を認める。末永く幸せになるがよい」
「「ありがとうございます」」
マリアはエリザベスのもとに駆け寄る。
「駄目ですよ、令嬢、いや貴族夫人になるのですからそんなに走っては」
「ごめんなさい、お姉様」
……
……
……
何を見せられているのでしょうか?
「ごほん、私の婚約者がいなくなってしまったので次の婚約者なのだが」
周りの令嬢達の圧がすごい。
「既に陛下とも相談の上決まっている」
あらあら手回しの良いことで。
「カイル、こちらへ」
「はい、殿下」
待て待て待て、カイル様は公爵家令息でエリザベス様達の弟君……
「カイルは訳あって令息として育てられていたが実は令嬢だ。先日、本来の姿で戻ってもらい私の妻になることを了承してもらえた」
はぁそうですか。
「私は真実の愛を見つけたのだ」
『この国大丈夫なのかな』
私は隣に立つ背の高い令嬢に囁く。
『大丈夫だよ、ちゃんと根回ししてるからね』
女性にしては低い声で囁く『彼』は私の婚約者で公爵家嫡男である。兄妹揃って変態なのはどうかと思いますけどね。
『何か変なこと考えてないかな、婚約者殿は』
まぁ女装以外は有能な方ですからね。
それにしても真実の愛ははた迷惑だなぁ。